【作品#0643】17歳のカルテ(1999) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

17歳のカルテ(Girl, Interrupted)

【概要】

1999年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は127分

【あらすじ】

自殺未遂を図ったスザンナは精神病院への入院を決断する。そこには病棟を仕切る存在のリサがいて、当初スザンナはリサを避けていたが…。

【スタッフ】

監督はジェームズ・マンゴールド
音楽はマイケル・ダナ
撮影はジャック・グリーン

【キャスト】

ウィノナ・ライダー(スザンナ・ケイセン)
アンジェリーナ・ジョリー(リサ・ロウ)
クレア・デュヴァル(ジョージーナ)
ブリタニー・マーフィ(デイジー)
エリザベス・モス(ポリー)
ウーピー・ゴールドバーグ(ヴァレリー)
ヴァネッサ・レッドグレーヴ(ソニア)
ジャレット・レト(トビー)

【感想】

1994年にスザンナ・ケイセンが発行した自伝の映画化。ウィノナ・ライダーが映画化権を取得してから7年越しに映画化が実現した。アカデミー賞とゴールデングローブ両方で、アンジェリーナ・ジョリーが助演女優賞を受賞した。

本作は「精神病院もの」であり、かの名作「カッコーの巣の上で(1975)」を思い出さないことはない。下記の音声解説でジェームズ・マンゴールド監督は同じ括りにされるのを望んでいないようだが、その精神病院の中でリーダー的存在なる人物が周囲を巻き込み、最終的にそのキャラクターは治療によって抑制されるところは似ているといえば似ている。ただ、本作の主人公はリーダー的存在ではなく、そのキャラクターに徐々に魅了されていくことになる、自分のことを「異常ではない」と考えるウィノナ・ライダーが演じるスザンナである。

人間誰しも自分のことを「異常ではない」と思っているだろう。それでも他人が「異常だ」と見なせばその通りになってしまうこともあるし、「もしかしたら異常なのかもしれない」と思ってしまうことにもなるだろう。また、同時に人間誰しも「異常な」ところもあるだろう。異常とまでも言わないまでも他の人が考えないようなことを考えたり、しそうにないことしたりすることはある。大きな枠を逸脱しなければ社会全体が拒絶することはない。

ただ、そのほんの小さな異常性を徹底的に攻撃してくる人はどこにでもいる。それは赤の他人かもしれないし、同じ家に住む家族かもしれない。まさにこの精神病院こそ社会であり、ユダヤ人というだけで差別被害に苦しんだ過去のあるウィノナ・ライダーにその姿を重ねることもできるだろう。

この精神病院は決められた時間に薬を飲み、決められた時間に寝るなどの規則だらけである。その規則を破ると罰(電気ショックなど)がある。これも社会そのものである。さらに、その職員は決して全員が優しくて話を聞いてくれる存在でもない。時に機械的であり、暴力的でもある。これも社会そのものだろう。困っている人に親身になって助けてくれる人なんてごく僅かである。この精神病院に入院する患者が自分のことで精一杯なのと同じように、ほとんどの人間が自分の事を考えて生きているのだ。

そんな中で少しずつスーザンは自分という人間を理解し始め、社会(ヴァレリー)に対して自分という人間を知ってもらおうと動き始める。他人から自分に寄って来て何かを勝手に解決してくれることなんてない。自分の力で何かを解決しようと動き出したからこそ、他人に対して自己を解放し、そして仲間ができるのだろう。もちろん、その社会全体と仲良くする必要もなく、時に距離を保つことがうまくいく秘訣だし、だからこそ退院後に会わなかった人もいたのだろう。

とにかくキャストの演技も魅力的であり、輪を乱す存在のアンジェリーナ・ジョリーと、それに巻き込まれるウィノナ・ライダーは見事だった。若き日のエリザベス・モスも顔面の火傷をトラウマに持つ少女を好演。

【音声解説】

 

参加者
├ジェームズ・マンゴールド(監督/共同脚本)

ウィノナ・ライダーがジェームズ・マンゴールド監督の「君に逢いたくて(1995)」を見て、脚本が行き詰まる中、早々の映画化を望んで声を掛けてきた話、同じ精神病院ものの「カッコーの巣の上で(1975)」と安易に比較対象になることへの懸念、演者の魅力、撮影時の工夫(長回しなど)などについて話してくれる。

【関連作品】


「オズの魔法使(1939)」…テレビで鑑賞する場面がある。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

2023年6月現在、日本ではBDは発売されていない(海外では発売されている)。

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

音声特典

├ジェームズ・マンゴールド(監督)による音声解説

映像特典
├メイキング・ドキュメンタリー:「スザンナの世界」
├未公開シーン(音声解説付)
├ミュージック・スコア
├タレント・ファイル
├オリジナル劇場予告編集