【作品#0553】ナイブズ・アウト:グラスオニオン(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ナイブズ・アウト:グラスオニオン(原題:Glass Onion: A Knives Out Mystery)


【概要】

2022年のアメリカ映画
上映時間は140分

【あらすじ】

実業家のマイルズは、ギリシャのプライベート島に友人たちを招待していたが、その中に探偵のブランや来ないと思われていたマイルズのかつてのビジネスパートナーだったアンディも含まれていた。マイルズとアンディの微妙な関係により時に緊張感が張り詰めていたが、夜に最初の被害者が出てしまう。

【スタッフ】

監督/脚本/製作はライアン・ジョンソン
音楽はネイサン・ジョンソン
撮影はスティーヴ・イェドリン

【キャスト】

ダニエル・クレイグ(ブノワ・ブラン)
エドワード・ノートン(マイルズ・ブロン)
ジャネール・モネイ(アンディ)
キャスリン・ハーン(クレア)
ケイト・ハドソン(バーディ)
デイヴ・バウティスタ(デューク)
ヒュー・グラント(フィリップ)

【感想】※ネタバレ注意

大ヒットした「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019)」の続編。Netflix配信前に、アメリカでは1週間で限定された劇場のみの上映だったにもかかわらずその週末で3番目の売り上げを記録した。また、待望の続編の始まりは、2020年の5月とあり、アメリカも新型コロナウイルスの蔓延によりロックダウンされていた時期である。ブランがZoomで話している相手の中にいるスティーヴン・ソンドハイムとアンジェラ・ランズベリーは本作が遺作になっている。

実業家のマイルズ・ブロンは、自動車や宇宙開発を手掛けると説明が入るので、どう考えてもイーロン・マスク氏を想起させる。そんな男が、かつてのビジネスパートナーを切り、自身の嘘がバレないようにするために人殺しを働き、次世代エネルギーのお披露目1週間前に頓挫するというオチになっている。監督であり脚本を執筆したライアン・ジョンソンはイーロン・マスク氏に何か恨みでもあるのだろうかと勘繰ってしまうほどである。ちなみに、演じたエドワード・ノートンは資本主義を否定する「ファイトクラブ(1999)」に出演していたことを思い出す。

ただ、お金にまつわる話は前作と同じであり、ただ金儲けをしようとしている連中がこぞってお金を失う結果となっている。なので、基本的にはイーロン・マスクやドナルド・トランプ、また本作のマイルズ・ブロンのような共和党とは反対の考えの持ち主なのであろう。また、クレジットでは「and」の後にクレジットされるキャラクターで、「悪役っぽいな」というキャラクターが悪役であることも前作と同じである。

そんなマイルズ・ブロンと戦う形になるのが死んだアンディの妹ヘレンである。このヘレンを演じたジャネール・モネイはLGBTQコミュニティへの支持を表明するなど、どう考えても民主党的な考えの人物である(基本的にハリウッドは民主党支持者ばっかりだが…)。こういった構造は比較的定番である。

また、中盤である程度のネタ晴らしをして、その後再び物語を展開させていくと言う形も前作と基本的に同じである。ただ、本作は前作よりもかなり無理のある物語になっている印象は否めない。いくら双子だとはいえ、お姉さんに成りすますのはそれこそ荒唐無稽な話である。アンディが毎日日記をつけていたという設定にすることでヘレンがアンディのことをすべて知っていることが不自然にならないようにしているが、どう考えても後付けにしか見えない。また、ヘレンがアンディの死をあまり悲しんでいるように見えないのももったいない。それから、デュークの銃を奪ったマイルズによってヘレンは撃たれてしまうが、胸ポケットにしまっていたアンディの日記がヘレンを守ってくれるのも少々バカバカしい(このバカバカしさも本作の楽しみのうちであることは理解しているが…)。頭やお腹を撃たれていたらどうしようもなかった話である。それから、デュークがスマホのニュースでアンディの死を知りマイルズに知らせる場面では、マイルズの番組に出られることを喜んでいたがそれも違和感があるし、デュークのパイナップルアレルギーも取って付けたような何のひねりもないトリックである(いくらブランにこの下らなさを喋らせたところでこれはちょっと酷いぞ…)。

それから、登場人物の背後で何かが動いているというような演出も前作から踏襲している。ただ、幾度と鳴る時報やスマホの通知音に反応してモナリザの防犯ガラスが出てくる音はちょっとしつこい。

ラストは、破壊者を名乗る連中が集うマイルズの豪邸をヘレンが文字通り破壊することである程度の爽快感は得られる。モナリザが焼失したことでマイルズは自身の開発した次世代エネルギーの話もおじゃんになるだろうし、その発電所に許可を与え選挙資金を支援してもらっていたクレアも、エネルギー開発に携わった科学者のライオネルも、ブラック工場の一件のあるバーディも全員この先落ちぶれることになるだろう。前作では遺産を受け継いだヒロインがダメな金づる一家を見下ろすと言う構造が見事だったが、本作はその点ラストが少し弱い気もする。せめて、マイルズや裁判で嘘の証言をした連中は命こそ助かるが、画的にも残念な形になっても良かったんじゃないか(悪いことした奴みんなが煤まみれになるとか…)。

すでに3作目も契約済みなので、おそらくライアン・ジョンソン監督、ダニエル・クレイグ主演でもう1作品は確実に見られることだろう。前作と今作で共通した世界観を作り上げることには成功した。次回作は、前作と今作で見せた様な中盤である程度ネタをばらす手法を取るのか、それとも全くアプローチを取るのか、どういったキャストが出演してくれるのかなど楽しみは尽きない。

【関連作品】


ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019)」…シリーズ1作目
「ナイブズ・アウト:グラスオニオン(2022)」…シリーズ2作目

 

 

 

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【予告編】

 

 

【配信関連】

 

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