【作品#0499】ALI アリ（2001）

【タイトル】

ALI アリ（原題:Ali）

【概要】

2001年のアメリカ映画
上映時間は157分

【あらすじ】

1964年のアメリカ。若き黒人ボクサーのカシアス・クレイは、世界ヘビー級チャンピオンマッチで勝利しチャンプの座に就く。さらにブラック・ムスリムに回収していたカシアス・クレイはモハメド・アリの名前を与えられる。

【スタッフ】

監督はマイケル・マン
音楽はピーター・バーク/リサ・ジェラルド
撮影はエマニュエル・ルベツキ

【キャスト】

ウィル・スミス（カシアス・クレイ/モハメド・アリ）
ジェイミー・フォックス（バンディーニ）
ジョン・ヴォイト（ハワード・コーセル）
マリオ・ヴァン・ピープルズ（マルコムX）
ロン・シルヴァー（アンジェロ）
ジェフリー・ライド（ハワード・ビンガム）
ミケルティ・ウィリアムソン（ドン・キング）
ジェイダ・ピンケット＝スミス（ソンジ）
ジョー・モートン（エスクリッジ）
ジャンカルロ・エスピジート（カシアス・クレイの父）

【感想】

企画自体は10年以上前から存在し、オリヴァー・ストーン、スパイク・リー、ノーマン・ジュイソンらが監督しようとしたがうまくいかず、マイケル・マンが監督することで製作にこぎつけた。また、当初はモハメド・アリ役を断っていたウィル・スミスだったが、モハメド・アリ直々の電話による説得で演じることになった。なお、アカデミー賞ではウィル・スミスが主演男優賞、ジョン・ヴォイトが助演男優賞にノミネートされた。

モハメド・アリの伝記映画ではあるが、1964年に世界ヘビー級チャンピオンになってから、後に「キンシャサの奇跡」と呼ばれる1974年にザイール（現コンゴ共和国）で開催されたタイトルマッチまでの約10年間を描いている。

カシアス・クレイとして生を受けた男が、マルコムXを交流してその影響でイスラム教に改宗し、教祖からモハメド・アリの名前を貰う。モハメド・アリとマルコムXの交流は大変有名な話ではあるが、モハメド・アリという人間を形成していく上でかなり重要な人物なので、序盤の展開は少し描写不足を感じる。

モハメド・アリはなりたい自分の姿を常に描き、その障壁となるものとは真正面から戦ってきた。遠く離れたベトナムにいる何の恨みもないベトナム人を殺したくないとして兵役拒否をして、裁判に発展。ボクシング・ライセンスは支給されず、裁判のためにパスポートを没収され、世界ヘビー級チャンピオンのタイトルは剥奪された。これによりモハメド・アリはボクサーとしての全盛期と重なる3年半をボクシングなしで過ごすことになってしまう。この3年半という彼にとって長い長い時間は映画的には割とあっという間に過ぎ去ったように見えてしまうのはやや惜しいところ。ただ、世論の後押しもあり、最高裁判決でモハメド・アリは徴兵拒否によって懲役刑を受けずに済み、ボクシングの世界に戻ってくる。

そして、3年半ぶりの復帰後に王座奪還を果たすが、ジョー・フレイジャーに初の敗北を喫し、ラストのキンシャサの奇跡でジョー・フレイジャーを打ち負かし、再び王座奪還を果たすことになる。映画でも描かれるように、モハメド・アリは屈指のハードパンチャーとして知られたジョー・フレイジャーのパンチをロープを背負いながら受けまくる。そしてジョー・フレイジャーが疲弊してきた頃合いでモハメド・アリは攻勢に出て勝利を得ることになる。これこそ、心無い人によって様々な言葉を浴びせられてきたモハメド・アリであり、それに耐えて最後に攻勢に出るところにドラマがある。ボクシングシーンと彼の歩んできた人生が重なるところこそ映画的である。

モハメド・アリは自分に正直に生きたからこそ、多くの敵を作ったが、それを遥かに上回る味方を手に入れた。女遊びもやめられず、結婚と離婚を繰り返したのもそんな正直な性格ゆえだろう（この点について美化するつもりはないが）。彼を演じたウィル・スミスは悪くはないが、画面内に惹きつける魅力までは表現できていなかったように思う。その点、彼の友人にもなったハワード・コーセルを演じたジョン・ヴォイトは見事な化けっぷりで言われなければ気付かないほどの好演であった。モハメド・アリのたった10年でも157分という上映時間では全く足らないのだろう。

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