【タイトル】
アイ、ロボット(原題:I, Robot)
【概要】
2004年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は115分
【あらすじ】
ロボットが人間社会に普及した2035年のアメリカ。USロボティクス社は新たなロボットを開発し出荷しようとしていた。そんなある日、ロボット工学の第一人者であるラニング博士がロボティクス社のビル内で自殺し、刑事のスプーナーに連絡が入る。
【スタッフ】
監督はアレックス・プロヤス
音楽はマルコ・ベルトラミ
撮影はサイモン・ダガン
【キャスト】
ウィル・スミス(デル・スプーナー)
ブリジット・モイナハン(スーザン・カルヴィン)
ジェームズ・クロムウェル(アルフレッド・ラニング)
ブルース・グリーンウッド(ローレンス・ロバートソン)
【感想】
アイザック・アシモフの短編集「われはロボット」を原案にした作品。全世界で3億4千万ドルを売り上げ、日本でも37億円のヒットを記録した。
結論から言うと、ウィル・スミス主演になったことでエンタメ色が強くなり、本作のメッセージがやや薄れてしまったのではないかと感じる。
まず、主人公のスプーナーはロボットを信用していない。序盤にバッグを持って走るロボットを捕まえる場面がある。スプーナーが捕まえたそのロボットは、家に忘れたバッグを忘れた女性にそのバッグを届けるために走っていたのだと分かる。そもそも女性がバッグを持たずに家を出るかね。それにロボットが同伴ならそのロボットが家を出る前に気付くべきなんじゃないのか。この描写だけでもとてもロボットがいて便利という感じではなく、ただのパシリみたいになっている。それにバッグを持ったロボットが走っているというだけでひったくりをしたと判断して捕まえるスプーナーもただの間抜けにしか見えない。本来は有能な刑事だが、ロボットに関すると神経過敏で間違った判断をしてしまうという感じにはなっていない(できればこの場面の前に彼が有能である描写は1つくらい入れておくべきだったと感じる)。この短いシークエンスだけでも、ロボットが便利には見えないし、この主人公のスプーナーも有能に見えないという意味であまりうまい描写とは言えない。
そもそもだが、本作におけるロボットの便利さって実はあまり映画内に登場しない。忘れたバッグを取ってくるとか、荷物を届けてくれるとか、犬の散歩を代わりにやってくれるとか、倒れていたら「手を貸しましょうか」と言ってくるとか…。何なら冒頭の夢の場面に出てくる水中に沈んだ車の中まで助けに来る場面が一番役に立っているんだよな。そうなると、スプーナーがロボット嫌いである描写が生きてこない。
また、ロバートソンのオフィスに招かれたスプーナーはコーヒーに砂糖をスプーンに何杯も入れている。天才とか異端といったキャラ設定でコーヒーに何杯も砂糖をぶち込むという描写は日本・海外問わずよく見かけるが、却ってそれが普通になってしまっているのは残念である。それに、肉体を鍛えているスプーナーがこんなに砂糖を大量摂取しているのも現実的ではない(仮に甘い物好きの鍛えている刑事が現実にいたとしてもだ)。
そのスプーナーのロボット嫌いの理由が明かされるのは中盤である。冒頭に描かれた夢の場面の説明が入る。水に沈んだ車の中に取り残されたスプーナーはロボットに救出されるが、スプーナーは隣の車に閉じ込められていた少女をロボットに優先してほしかった。後にスプーナーの方が生存確率が高かったためロボットは少女よりもスプーナーを優先したと説明される。ロボットが少女よりも成人した自分を優先して助けたからロボット嫌いであるというのはいささか無理があるし、それによって観客がスプーナーに感情移入できるでもない。そもそもロボットが助けに来なければスプーナーは助かってすらいなかったわけである。しかもその確率が15%と45%じゃねぇ。まだ僅差だったとかなら理解できる余地はあるんだが。
それに、スプーナーがロボットが普及する社会に対して抱く不安や疑問があまりにもボヤっとしているのも気にかかる。いずれ人間が支配されるとか、ロボットに勝てなくなるとかそういった具体的な危機感を抱いていたのなら、本作の迎える展開とその結末にある程度の納得をすることができる。このボヤっとしたスプーナーの意識も全く理解できなくもないが、どうも演出として中途半端な印象は拭えない。
結局、スプーナーの言った通りの展開になっていくのだが、黒幕といえるVIKIの言い分も説明はしているが、どう考えても説明不足だし理解しがたいものでもある。このスプーナーの抱く何となくの危機感と、VIKIの考える何となくの理屈が本作全体をボヤっとしたものにしてしまっているのだと感じる。
ラストは、一応映画なりの理屈でナノロボットをVIKIの中枢にぶっ刺すことで解決する。その辺りの戦いがクライマックスにはなっている。あれだけのロボット相手に人間2人が銃をぶっ放したところでやられるのがオチだが、このロボットたちはせいぜい生身の人間2人相手に全く歯が立っていない。CGを使って画面を上下左右に行ったり来たりする映像で工夫しているが、これならもっと地味でも現実的なアプローチで終結させるべきではないだろうか。それは中盤のトンネル内でのアクションシーにも同様のことが言える。
やはりウィル・スミス主演にしたことで娯楽色が相当強まったのだろう。終盤にスプーナーがバイクに乗り、バイクごとジャンプして二丁拳銃でロボットをやっつけ、さらにそのバイクでロボットを轢き殺すのはどう見ても滑稽である(ジョン・ウー的なアクションがやりたかったのか!?)。こういう作風自体を全否定するつもりはないが、本作の持つメッセージを考えると、もっと地味で理詰めした映画にしてほしかった。
【音声解説1】
参加者
├アレックス・プロヤス(監督)
├アキヴァ・ゴールズマン(脚本)
上記2名による対話形式の音声解説。夜間撮影時に住人から苦情が入った話、ロバートソンのオフィスの背景として準備されたものの出来が今一つで急遽差し替えた話、カルヴィン役候補があまりおらずブリジット・モイナハンが第一候補だった話などしてくれる。また、製作時にゴタゴタがあったことでも知られるため、言葉こそ濁しているがアレックス・プロヤス監督は何か言いたげな箇所がいくつもある。
【音声解説2】
参加者
├パトリック・タトボロス(美術)
├リチャード・リーロイド(編集)
├ジョン・キルケニー(共同製作)
├エリック・サンドン(CG監修)
├エリック・ウィンクィスト(合成監修)
├ジョン・ネルソン(視覚効果監修)
├アンドリュー・ジョーンズ(視覚効果監修)
├ブライアン・ヴァン・ハル(視覚効果監修)
├ジョー・レテッリ、エリック(視覚効果監修)
├ナッシュ、デール・フェイ(視覚効果監修)
上記11人による音声解説だが、別撮りの音源を繋ぎ合わせた音声解説である。ただ、それぞれが映像に合わせて話しているので違和感はない。監督から撮影前に強調されていたこと、特に映像化が困難だったシーン(サニーの取り調べシーン)、警察署やカルヴィンの部屋、大掛かりなCGシーンの苦労、当初のエンディングとの違いなどについて話してくれる。2004年当時のCG技術をどう映像化したかを聞きたい人にはお勧めできる。
【音声解説3】
参加者
├マルコ・ベルトラミ(音楽)
音楽を担当したマルコ・ベルトラミによる単独の音声解説。作曲家による音声解説に良くある通り、セリフや音響は一切流れず、彼の音楽と解説のみのトラックとなっている。音楽制作に与えられた期間、監督から聞かされた構想、作曲が困難だった場面、それから出自やジェリー・ゴールドスミスに師事した話などしてくれる。中盤くらいまではそこそこ話してくれるが、中盤以降は話すことがなくなったのかかなり静かになっていく。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
<Amazon Prime Video>
言語
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典(3種)
├アレックス・プロヤス(監督)、アキヴァ・ゴールズマン(脚本)による音声解説
├パトリック・タトボロス(美術)、リチャード・リーロイド(編集)、ジョン・キルケニー(共同製作)、エリック・サンドン(CG監修)、エリック・ウィンクィスト(合成監修)、ジョン・ネルソン、アンドリュー・ジョーンズ、ブライアン・ヴァン・ハル、ジョー・レテッリ、エリック・ナッシュ、デール・フェイ(視覚効果監修)による音声解説
├マルコ・ベルトラミ(音楽)による音声解説
映像特典
├メイキング・オブ 「アイ、ロボット」
├スティル・ギャラリー
├FOX最新情報
<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典(3種)
├アレックス・プロヤス(監督)、アキヴァ・ゴールズマン(脚本)による音声解説
├パトリック・タトボロス(美術)、リチャード・リーロイド(編集)、ジョン・キルケニー(共同製作)、エリック・サンドン(CG監修)、エリック・ウィンクィスト(合成監修)、ジョン・ネルソン、アンドリュー・ジョーンズ、ブライアン・ヴァン・ハル、ジョー・レテッリ、エリック・ナッシュ、デール・フェイ(視覚効果監修)による音声解説
├マルコ・ベルトラミ(音楽)による音声解説
映像特典(Disc1)
├メイキング・オブ 「アイ、ロボット」
├スティル・ギャラリー
├FOX最新情報
映像特典(Disc2)
├「アイ、ロボット」プロダクション・ダイアリー
├スプーナービル:2035年のシカゴ
├USR社
├パン屑を追って
├トンネルでのカーチェイス
├1対1
├サニーと他のロボットたち
├人間対ロボット
├ウィル・スミスのワイルド・ライド
├エピローグ
├CGIとデザイン
├知覚力を持った機械:ロボットの行動
├ロボット3原則:SFとロボットについて
├フィルムメーカー・ツールボックス
├VFX解析:工房別アプローチ(デジタル・ドメイン/WETAデジタル/レインメーカー)
├未公開シーン集
├隠しコマンド
<BD>
収録内容
├上記DVD(2枚組/アルティメット・エディション)と同様
<3DBD+2DBD>
本編
├3D
├2D