【作品#0384】アンストッパブル(2010) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

アンストッパブル(原題:Unstoppable)


【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

2010年のアメリカ映画
上映時間は99分

【あらすじ】

ペンシルベニア州で作業員のミスにより貨物列車が無人で暴走を始めた。一方、コルソンとバーンズは乗車する機関車をその貨物列車に向けて発車させることになる。

【スタッフ】

監督はトニー・スコット
音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影はベン・セレシン

【キャスト】

デンゼル・ワシントン(フランク・バーンズ)
クリス・パイン(ウィル・コルソン)
ロザリオ・ドーソン(コニー・フーパー)
ケヴィン・ダン(ガルビン)
イーサン・サプリー(デューイ)
ケヴィン・コリガン(スコット・ワーナー)

【感想】


本作は2012年に自殺したトニー・スコット監督の遺作であり、生涯5度のタッグを組んだデンゼル・ワシントンとの最後のタッグ作品になった。また、本作は2001年5月に発生した「CSX8888号暴走事故」を元に映画化したものである。

行って帰って来るという物語の定番で、同じ機関車を取り上げたサイレント期の名作「キートンの大列車追跡(1926)」を思わせる作品。とにかくテンポが良くて、トニー・スコット監督のキャリアの中ではデビュー作「ハンガー(1983)」の上映時間96分に次ぐ短い作品である。冒頭からのキャラクター紹介も手短で、機関車が暴走を始めるという本題に入るのも映画が始まって10分程度である。ちなみに冒頭でウィルが会えない家族を車のサイドミラー越しで眺める場面は、後に機関車のミラー越しに見る場面に重ね合わせられており、短い描写の中にもディテールへの拘りが感じられる。

タイトルにの通り、機関車が止まらずに暴走していく。それを表現する映像はとにかく動きまくる。カメラが縦横無尽に動き回り、動く機関車、車、ヘリからの映像、あるいは逆にそれらを周囲から捉える映像には躍動感がある。また、登場人物を映す場面でもただ定点で捉えるのではなく、周囲をぐるっと回りながら捉えるショットが何度登場したことか。ややくどい演出ではあるが、この上映時間なら問題ないだろう。

そして、暴走した機関車をいかにして止めることができるか。ヘリから機関車に人を入れようとしたり、暴走する機関車の前に別の機関車を走らせて止めようとしたり、非常停止スイッチを銃で撃とうとしたり、脱線装置を使って脱線させようとしたり…。あらゆる対策を講じる場面も主人公らがその場にいるわけではないので、失敗することは分かりきっている。なので、この辺りの描写も非常に簡潔である。最終的には主人公らの乗車する機関車で暴走する機関車を追いかけ、後方から連結してブレーキをかけるというものである。本作中のテレビ報道番組内でアニメーションを使ってどのように止めるかまでを手短に説明するのも、誰が見ても分かる娯楽作の基本を押さえていると言える。連結のやり方、各車両ごとに設置されている手動ブレーキなど、他の電車ものの映画でもなかなかお目にかかれないシーンがあるのは本作ならではであると感じる。

それに至るまでにもお約束とも言える、間一髪ですれ違う、線路内に侵入した何かにぶつかるという展開も映画を盛り上げる要素になっているし、そこに子供や動物がいることでより緊張感を煽る演出になっている。そして、アクション映画には欠かせない大爆発もしっかり用意されている。

また、人間側の主演と言えるフランクとウィルの背景も徐々に語られ始める。ウィルが家族への接近禁止命令を出される経緯(ボタンの掛け違え)が、本作における機関車が暴走してしまう経緯になぞらえられている。本作の事実上の主演は暴走する機関車なので、人間側の主演2人のドラマは描くのはここまでが限界だろう。長々と自分語りするのはリアリティに欠けるだろうし、映画のテンポを落としかねないものにもなるだろう。

フランクとウィルは暴走する機関車に連結して策を講じるもスピードはなかなか落ちず、冒頭に主人公の機関車が出発した時にちらっと映った急カーブにさしかかる。ここが本作の映像的な一番の見せ場とも言える場面である。当然機関車の出せるスピードには限界があるので、撮影手法としては向かってくる機関車にカメラを乗せたヘリが向かっていくことでスピード感を演出している。そして、ウィルが併走する車に飛び乗って先頭車両に向かって再び飛び乗るところもスピード感に溢れていてクライマックスに相応しい場面になっている。

ラストはこの一件に関わった人物たちが勢揃いとなる。フランクとウィルとは無線でしか話していなかったコニーが現れる場面は、「ダイ・ハード(1988)」のラストでジョン・マクレーンの前に現れるパウエル捜査官を思い出す。

エンドクレジット前に、俳優と演じたキャラクターのその後が記される。トニー・スコット監督のブレイク作「トップガン(1986)」を思わせる終わらせ方だし、本作では悪役として描かれたガルビン部長は解雇され、事故の発端になったデューイはファーストフード業界に進出ということでオチも付けられている。

認知されてからしばらくは「大味な娯楽作の監督」というイメージであり、兄のリドリー・スコットよりかは下に見られていた印象のあるトニー・スコット監督だが、やはり娯楽作の作り手としては代表監督の1人と言えるだろう。そう考えると、彼が本作の2年後に自殺してこの世を去ったのは残念だし、年を重ねても本作のようなエネルギッシュな作品を作ったわけなので、もっと彼の作品を見たかったのが正直なところだ。

本作を見直すと、4DX向きの題材と言える。機関車の揺れは座席の揺れで表現できるし、すれ違う時のスピード感は風で演出することができる。その意味でアトラクション型パニックアクションとも言える。また、本作は動き出したら止まらない機関車が中心に据えられており、パニックアクションにおける基準とも言えるスピード感のある作品であった。

【音声解説】

参加者

├トニー・スコット(監督)


本作の監督トニー・スコットによる単独の音声解説。取材に基づくモデルの設定(ウィルが家族に接近禁止命令を出されていたことや、フランクにフーターズで働く娘がいる設定など)の話、監督の実体験の基づくアイデア、機関車の音に動物の鳴き声を取り入れた話、キャスティングやスタッフについての話、撮影時の苦労、「暴走機関車(1986)」へのオマージュなど饒舌に語ってくれる。本作が好きなら間違いなく聞くべき音声解説。

 

 

 

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【予告編】

 

 

【配信関連】

 

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言語

├オリジナル(英語)

 

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

音声特典

├トニー・スコット(監督)による音声解説

映像特典
├『アンストッパブル』制作の軌跡
├脱線シーンの舞台裏
├リアルな超絶スタント
├監督・出演者が語る『アンストッパブル』
├オリジナル劇場予告編