【タイトル】
あの日の指輪を待つきみへ(原題:Closing the Ring)
【概要】
2007年のイギリス/アメリカ/カナダ合作映画
上映時間は118分
【あらすじ】
1991年のベルファスト。イギリスとアイルランドの領土問題の中心地で、ジミーはかつて墜落した戦闘機の乗組員がつけていた指輪を発見すると、そこには「エセル・アンド・テディ」と刻まれており…。
【スタッフ】
監督はリチャード・アッテンボロー
音楽はジェフ・ダナ
撮影はロジャー・プラット
【キャスト】
シャーリー・マクレーン(エセル・アン)
クリストファー・プラマー(ジャック)
ピート・ポスルスウェイト(マイケル・クィンラン)
ミーシャ・バートン(若き日のエセル・アン)
ネーヴ・キャンベル(マリー)
ブレンダ・フリッカー(エレノア)
【感想】
2014年8月に90歳で亡くなるリチャード・アッテンボロー監督の遺作。劇中、エセルがテレビで見ている映画は、本作と同じく夫が戦場で亡くなるという、ジェームズ・スチュアートが主演した「グレン・ミラー物語(1953)」である。
本作で圧倒的に足りていないのは1941年時代の描写だろう。エセルとテディがすでに両思いで、チャックとジャックがエセルを想っていたのもすべてありきで描かれている。彼らの関係をゼロから描けば上映時間は長くなってしまうが、50年の時を経てもなおエセルの心に傷を負わせることになった事実を考えると、もっともっと丁寧に描くべきだっただろう。あと、現代パートの名優3人と、ヌードまで披露したミーシャ・バートンに対して、テディを演じた俳優があまりにも弱い(他の2人も同様)。
そして、ケネス・ブラナーが監督した「ベルファスト(2021)」でも描かれた北アイルランドのベルファストが本作の舞台でもある。イギリスとアイルランドの領土問題の中心地でもある土地であり、アイルランド独立を目指す武装組織「IRA」も登場する。ちなみに、そのベルファストで暮らすクィンランを演じたピート・ポスルスウェイトは、IRAが起こしたテロを描いた「父の祈りを(1993)」にも出演していた。この現代に起こっている戦争(紛争)とかつてエセルの心に傷を残した第二次世界大戦を交錯させる必要はあまり感じず、エセルのドラマを描くために無理やりくっつけたような印象さえある。だから、ジミーがわざわざアメリカまでやって来る理由付けもかなり強引である。まるで「ゴッドファーザー(1972)」で初めて殺人を犯したマイケル(アル・パチーノ)が「しばらく身を隠せ」と言われてシチリアに来るかの如く描かれるが、ジミーは殺人を犯したわけでもない。電話でたった数回話しただけのエセルを頼ってアメリカまで来るわけがない。
また、戦争で受けた傷をどう対処するかは人それぞれである。可哀そうではあるが、エセルの娘マリーがあまりにも無理解なキャラクターとして描かれている。あの壁の中の想い出を作ったのも、壁を作って封印したのも彼らの判断だが、その判断に至る描写がこちらも弱い。
とはいえ、名優シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ピート・ポスルスウェイトが登場すると画面内は引き締まり、映画内の興味を保つ十分な要素になっていた。一方で、俳優が弱い過去パートをミステリー仕立てで興味を引っ張ろうとしていたのだと思うがこれは失敗だった。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├インタビュー(リチャード・アッテンボロー/シャーリー・マクレーン/クリストファー・プラマー/ミーシャ・バートン)
├オリジナル予告編