【作品#0299】ブラインド・デート(1987) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ブラインド・デート(原題:Blind Date)


【概要】

1987年のアメリカ映画
上映時間は95分

【あらすじ】

ウォルターは会社での得意先との食事会に出席することになったが、女性と同伴する必要があった。妻や恋人のいないウォルターは、兄嫁の従妹ナディアを紹介してもらうことになった。ナディアは美人だが、酒癖が悪いため兄から酒を飲まさないようにと忠告されていたが…。

【スタッフ】

監督はブレイク・エドワーズ
音楽はヘンリー・マンシーニ
撮影はハリー・ストラドリング・ジュニア

【キャスト】

ブルース・ウィリス(ウォルター)
キム・ベイシンガー(ナディア)
ジョン・ラロケット(デイヴィッド)

【感想】

本作の翌年に「ダイ・ハード(1988)」で大ブレイクするブルース・ウィリスの映画初クレジット、初主演作品。また、デイヴィッドのオフィスの窓から、その「ダイ・ハード(1988)」の舞台となるナカトミビル(20世紀ボックスビル)の完成前の姿を少し見ることができる。

当初はマドンナ主演が決まっており、そのマドンナが当時の夫ショーン・ペンを相手役に望んだが、監督が見つからずにマドンナ主演の話は消え去った。その後、ブレイク・エドワーズが脚本の変更を条件に監督を引き受けたことで製作にこぎつけることになった。

本作はブルース・ウィリス初主演作という触れ込みだが、クレジットはキム・ベイシンガーの方が先である。何といってもそのキム・ベイシンガーの暴れっぷりが本作の一番の見どころであると感じる。酒を飲ませると乱れると忠告を受けたウォルターは、淫乱になると勘違いしてナディアに酒を飲ませてしまう。そして、あのレストランでの暴れっぷり。なぜか胸ポケットを見ると破りたくなる衝動に駆られ、男の愚行を許せずに次々にカップルを破壊していく様は気持ちいい。キム・ベイシンガーがブルース・ウィリスよりも2つ年上なんて信じられないキュートさがあり、このキャラクターは本作の翌年「花嫁はエイリアン(1988)」なんかにも通じるところがあると感じる。

そして、翌年「ダイ・ハード(1988)」で世界一不運な男ジョン・マクレーンを演じたブルース・ウィリスは、本作でも史上最悪クラスの不運に巻き込まれる。ナディアが酒を飲んだために、大事な食事会をぶち壊され、会社をクビになり、車もパーツが盗まれてしまったウォルターがついに吹っ切れてしまう。ウォルターまで胸ポケットを破くところはなかなか笑える。ブルース・ウィリスの代表的キャラクターの原型が初主演作にすでにあったようだ。

ところが、ナディアが酔いから醒めると映画の興奮も醒めてしまい、話もどんどんつまらなくなっていく。ナディアを追いかけまわすデイヴィッドが弁護士で、ナディアとの結婚を条件にウォルターの弁護を引き受け、しかもその裁判の判事がデイヴィッドの父であることは、はっきり言ってストーリーを進める上での都合でしかない。さらに、ナディアがウォルターのために1万ドルもの保釈金を支払う理由も、嫌いなデイヴィッドと結婚することを約束してまでウォルターの弁護を依頼する理由も映画的には観客に全く伝わってこない。ナディアとウォルターがシラフの状態で会話したのは映画的にはせいぜい5分程度である。彼らの人となり(特にナディア)と関係性はもっと描かなければ、こんな出来事が起これば「もう二度と会わない」と思えるような関係だろう。

そして、終盤のデイヴィッドの家での一連のくだりは映画的にさっぱりの展開である。ブランデー入りのチョコを届けた時点でウォルターがこの家に朝まで留まろうとする必要はないし、かくれんぼごっこでの笑いは全くと言っていいほどない。結局、翌日の結婚式をぶち壊してエンディングを迎えたところでなんのカタルシスもない。

 

また、「ヤカモト」という名前の日本人夫婦も登場するのだが、当時のハリウッド映画によく見られた「変な日本人」描写が散見される。「日本人の妻は夫より先に座ったり飲んだりしてはいけない」とか、「日本人の夫は多くの愛人がいてそれを妻が公認している」というのが日本の文化だと言われる。さらにこのヤカモト夫人は、レストランに着物に白塗りの顔で現れる。舞妓でもないのに白塗りにする必要がないし、しかもそのメイクが雑で悪意すら感じる。日米貿易摩擦により関係がこじれていた日米関係というのも背景にあるかもしれないが、さすがに酷いね。ちなみに、日本の名字で見かけない「ヤカモト」の元ネタはネットで調べると面白く、「マイノリティ・リポート(2002)」にも同名のキャラクターが登場する。

 

映画としては、序盤のナディアの暴れっぷりがピークで、以降はグダグダ。「花嫁はエイリアン(1988)」のキム・ベイシンガーに魅力を感じた人なら一見の価値はあるかな。
 

 

 

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