【作品#0294】抱きしめたい(1978) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

抱きしめたい(原題:I Wanna Hold Your Hand)


【概要】

1978年のアメリカ映画
上映時間は100分

【あらすじ】

1964年にビートルズがニューヨークへやって来ることになった。ビートルズファンのパムらはビートルズが宿泊するホテルへ潜入すべく、ニュージャージーから車でやって来る。

【スタッフ】

監督はロバート・ゼメキス
脚本はロバート・ゼメキス/ボブ・ゲイル
製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ
撮影はドナルド・M・モーガン

【キャスト】

ナンシー・アレン(パム)
ウェンディ・ジョー・スパーバー(ロージー)
マーク・マクルアー(ラリー)

【感想】

スティーヴン・スピルバーグが製作会社アンブリン・プロダクションズで初めて製作した作品で、後に多くの作品でタッグを組むことになるロバート・ゼメキスの監督デビュー作。270万ドルと言う低予算で製作されたが、190万ドルの売り上げにとどまった。ちなみに、タイトルの「抱きしめたい」はビートルズの代表曲「I Wanna Hold Your Hand」の発売当時の日本語タイトル(歌詞では「君の手を握りたい」と訳される)であり、この楽曲はビートルズの楽曲がアメリカで初めてチャート1位を記録した楽曲でもある。

本作はビートルズの追っかけがメインの話であり、基本的にビートルズは出て来ず、アーカイブ映像が映るか、演じた役者の後ろ姿や足だけが映る程度である。楽曲使用許可が下りるのにも9か月を要し、タイトルにビートルズの名を使うこともできずに楽曲名がタイトルになったようだ。ラストのコンサートシーンでは、モニターにアーカイブ映像を映し、その後ろで役者が同じ振付を演じるという手法もしっかりシンクロしていて、違和感もない。モニターを使ってリアルを演出する手法はロバート・ゼメキス監督作では後に「コンタクト(1997)」でも使用している。

女4、男2(後に男3に増えるが)という組み合わせはなかなか珍しい青春ドタバタコメディ。有名どころも当時ブライアン・デ・パルマと婚約していたナンシー・アレンくらいである。しかも、撮影当時27歳のナンシー・アレンが17歳の高校生役を演じている(2年前の「キャリー(1976)」でも高校生役だったな)。

そんな中でも印象を残したのはロージーを演じたウェンディ・ジョー・スパーバーだろう(ちなみに彼女は撮影当時17歳)。有り余るエネルギーをすべてビートルズに捧げようとパワフルに動き回る様子はそれだけで面白い。エレベーターを乗っ取ったり、公衆電話に大量の小銭を投げ入れたり(これはスピルバーグのアイデアらしい)、走行中の車から飛び降りたりと、「次は何をやってくれるのか」とこちらが期待するほどの大活躍だった。しかも、ようやくビートルズのコンサートを目の前で見られるようになったのに、ビートルズが目の前に現れた瞬間に失神してしまい、すべて見損ねてしまうというおいしいオチまでついた。

不法侵入、暴行、器物破損、無免許運転、警官買収、詐欺など挙げればきりがないほど主人公たちは犯罪行為を繰り返していく。熱中できる何かに一生懸命になる様子からは純粋さも感じられ、その熱意が常軌を逸した行動に繋がり、それをコメディとしてうまく表現できていた。女の子たちが、自分たちや自国の歌手ではなく、他国の力強そうには見えない男の子たちに熱を上げる様子に男たちは嫉妬している。そんな彼らでさえも彼女たちの熱意に押されて途中から当たり前のように協力していくところも面白い(リチャードだけは違ったが)。

音声解説でも本作が興行的に当たらなかった理由の1つを説明していたが、それが不思議に思えるほどの出来である。ロバート・ゼメキスは後にヒット作も連発するが、そんな彼の出発点としても、それから青春コメディとしても見るべき一本。同じ1970年代の青春ものとして、「アメリカン・グラフィティ(1973)」と合わせて押さえておきたい。

【音声解説】


参加者

├ロバート・ゼメキス(監督)

├ボブ・ゲイル(脚本)


上記2名による対話形式の音声解説。DVD発売に伴い収録されたものと思われる。2人が当時を振り返りながら、「今だったらこんな撮り方はしないね」とか、「初作品にしてはよく出来ている」と感慨深げに話してくれる。また、当時の映画の宣伝、床屋の役者が来ずに名助監督ニュート・アーノルドが急遽演じた話、ビートルズの権利関係でユニバーサルの法務部と色々話し合ったことなど興味深い話も多い。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語)

音声特典

├ロバート・ゼメキス(監督/脚本)、ボブ・ゲイル(脚本)による音声解説

 

<BD>

収録内容
├上記DVDと同様