【作品#0278】犬と私の10の約束(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

犬と私の10の約束

 

【概要】

 

2008年の日本映画

上映時間は117分

 

【あらすじ】

 

北海道の函館で暮らすあかりは、家の庭に迷い込んできた犬を見て飼いたいと思っていると、母親が倒れて入院することになることを父親から電話で知らされる。その後、再び家の庭にやってきた犬を「ソックス」と名付けて飼うことにする。

 

【スタッフ】

 

監督は本木克英

音楽は趙成禹

撮影は藤澤順一

 

【キャスト】

 

田中麗奈(斎藤あかり)

福田麻由子(少女時代の斎藤あかり)

加瀬亮(星進)

豊川悦司(斎藤祐市)

高島礼子(斎藤茉美子)

池脇千鶴(井上ゆうこ)

布施明(星真一)

 

【感想】

 

「犬」の映画って定期的に作られる定番だが、その中に埋もれる一本。本編中にも説明が入る「犬の十戒」がモチーフになっている。

 

いぬのえいが(2005)」でも感じたが、タイトルに「犬」が入っている割にはあまり「犬」が関係していない物語だった。脚本も練り込み不足なのか、話の運び方があまりにも不格好だし、「なんじゃそりゃ」っていう展開が多すぎる。

 

せっかく観客向けにわざわざ「犬の十戒」をポップな字幕まで付けて説明したのに、それを主人公が思い出す場面は基本的にない。しかも、その「犬の十戒」はソックスの死に際に主人公が自分で思い出すのではなく、父親が思い出させてくれるだけである。ドラマ的には何かを契機に主人公が「犬の十戒」を思い出して、命とか愛情とか大切な何かに気付いたり、行動したりする必要があったと強く感じる。

 

一方で、あかりがソックスに冷たく当たるシーンは何度かある。晴れ着姿のあかりにソックスが抱き着いたことで着物が汚れてソックスを叱る場面は、こうなることを想定していないあかりのミス(ただ単にあかりがどんくさいだけ)。また、普段会えないソックスに再会しても窓を閉めて抱きしめてもあげない。自分が飼いたいと言って飼ったソックスに対して、思春期のあかりが他に興味(友達や恋人、趣味など)が湧いてきて、ソックスを疎かにしてしまうという描写ならまだわかる。ただ、主人公は獣医を目指して学校に入り、卒業と同時に動物園で働くという夢を叶えている。他の人よりも動物の気持ちが理解できるであろう職に就いたのなら、それでもソックスには冷たく当たってしまう理由が必要だろう。ラストの感動ありきで無理やり冷たくしているようにすら感じる。

 

脚本として雑な箇所は他にも山ほどある。ソックスが主人公一家に引き取られる経緯の描写もいい加減だ。岸部一徳演じるコンビニ店員から引き取ったらしいが、なぜか父親はその事実を知らない。また、父親は助教のポジションを用意されたのにペット可のマンションすら探せないのは違和感がある。そして、大学病院を辞めるのが織り込み済みかの如く上司は悪役として描かれる。しかもあんな形で大学病院を辞めたら開業するのもえらく苦労すると思うが、すんなりうまくいっている。また、まるで「大学病院=多忙」、「開業医=多忙ではない」という描き方だったが決してそうとも限らないだろう。そして、ソックスを預けた星君はソックスを大切にしている割にはパリに行くことになってからえらくソックスを雑に扱っている。最低限出来ることをやった上で、仕方なくできなかったとかそういう描写なら分かるが。

 

また、驚きなのは、母親を亡くしたあかりが2日間ベッドにこもりっきりだったせいで、首を痛めてしまう一連の場面。医者の父親曰く精神的な要因だそうだが、ソックスと「あっちむいてほい」をしたら首の痛みは治ってしまう。ここは母親を亡くした寂しさをソックスが癒してくれるという王道で話を進めるべきだと思うのだが、この変化球には悪い意味で驚かされた。この展開は大人になった星君の場面で引き継がれている。事故で思うように演奏できなくなった星君のところへあかりはソックスを預けるというのだ。わざわざセラピードッグという言葉を説明する展開まである。そしてソックスのおかげで星君は再び演奏できるようになるのだが、階下の星君の母親は「あの子、歌い出したわよ」と言って喜ぶ。演奏できないことが問題だったのなら歌は関係ないと思うのだが、どう理解すればよかったんだろうか。というか、この前後にあかりがソックスに冷たく当たるシーンがあるため、相手をするのが面倒なソックスを星君に預けているようにすら見えてしまう。挙げたらキリがないが、話の運び方が絶望的とも言えるくらいに下手だ。

 

ソックスの死に際と、あかりと父親が感謝し合う場面はこれでもかと感動を煽る演出がなされる。こんな場面は、仮にこの場面だけ見せられても泣ける人は泣けるよ。こういう泣ける場面があると、ついつい良い映画を見た気分になりがちだが、残念ながら本作のマイナスをカバーするには到底及ばず、むしろ印象を悪くしかねない描写になっている。

 

最後はあかりと星進の結婚式の場面で映画が終わる。映画を終わらせる場所はここではないと思う。あかりに風が吹きつけて母親を思い出すのだが、ソックスの話はどこへやら?これだったらいっそのこと「母と私の約束」にして親子の話にすれば良かったんじゃないか。

 

あかりと父親の物語としてはまずまずだが、あかりとソックスの物語としても、あかりと星君の恋物語としても出来は杜撰と言える。動物ものって安易に手を出すべきではないと思うし、やっぱりその中心(あるいは中心付近)に動物がいないとダメだわ。

 

 

 

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