【作品#0241】ザ・ダイバー(2000) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ザ・ダイバー(原題:Men of Honor)

 

【概要】

 

2000年のアメリカ映画

上映時間は129分

 

【あらすじ】

 

1940年代後半。海軍に入隊したカールは、泳ぎの能力を買われて甲板兵になる。そんなある日、ヘリコプターが海上に墜落する事故が発生し、潜水士のビリーらが救助に向かうも無茶な潜水をしたことでビリーは肺にダメージを受けて二度と海に潜れなくなる。ビリーの勇敢な救助活動を見たカールは白人しか認められていなかった潜水士を目指そうとする。

 

【スタッフ】

 

監督はジョージ・ティルマン・Jr

音楽はマーク・アイシャム

撮影はアンソニー・B・リッチモンド

 

【キャスト】

 

キューバ・グッディング・Jr(カール・ブラシア)

ロバート・デ・ニーロ(ビリー・サンデー)

シャーリーズ・セロン(グウェン・サンデー)

アーンジャニュー・エリス(ジョー・ブラシア)

ハル・ホルブルック(ミスター・パピー)

マイケル・ラパポート(スノーヒル)

パワーズ・ブース(プルマン)

 

【感想】

 

アメリカ海軍史上、アフリカ系黒人としては初の「マスターダイバー」の称号を得た実在の人物「カール・ブラシア」の伝記映画。彼が負傷するのは「パロマレス米軍機墜落事故」で水中に落下した核弾頭を引き上げる作業中に起こった事実であるが、委員会で防水スーツを着て歩行テストをしたという事実はないようだ。また、同じ時代にメジャーリーガーとしてアフリカ系黒人の道を切り開いたジャッキー・ロビンソンについて、本作で彼のラジオから三振したという実況が流れてくる。

 

感想を一言で言うなら無難。2時間程度にまとめたためか、かなり駆け足になっている箇所、明らかに説明や描写が不足している箇所がある。まず、序盤の少年時代と成人後の別れの場面までがたったの10分程度というのはちょっと急ぎすぎ。そこで伝えたいことは理解こそできるが、後の彼を動かす力としてはやや弱い。

 

そして海軍に入隊後も急ぎ足で映画は進み、あっという間に2年後になって潜水士養成学校の場面になる。ここでようやく腰を据えたように落ち着き始め、この養成学校の場面が割かれた時間から見てここがメインと言えるだろう。黒人への差別描写は数か所あるにはあるが、それが強烈に印象深いわけではなく、一番描きたいことではなかったのだろうと思う。主人公はどんな困難にも神が彼に与えた「忍耐力」でもって次々にクリアしていくので、「カール・ブラシア」という人がどんなにすごくても映画的には平凡なキャラクターと言え、やはりデ・ニーロが演じたビリーの方がキャラクターとしては立っていた。ビリーは主人公ではないので描写として物足らないものは若干あるが、根本にある思想と、カールを理解できる境遇の間で葛藤する様はデ・ニーロの好演あって見どころであると言える。

 

この訓練の間にジョーと結婚までするのだが、あまりにも淡泊で、キャラクター的にも優等生過ぎる気がする。その一方でシャーリーズ・セロン演じたビリーの妻はさすがの存在感。ただ、こちらも明らかに描写をカットしたと思われるくらいに登場の仕方が色々と不自然で、この程度だったらいなくても良いのではと思ってしまえるほどだった。

 

その後、カールが潜水士として活躍する場面に移行するのだが、ここでは彼の活躍とその後の事故を同場面にまとめている。これでは潜水士になってすぐ負傷したようにも見えてしまうので活躍と事故は別々にすべきだった。しかもその活躍の場面もソ連の潜水艦にロープが引っ掛かるというトラブルに見舞われるが何とか助かるという描写である。次の事故の場面を際立たせるために一度観客をホッとさせようという意図は分かるが、この描き方だと運良く助かった方に描写が引っ張られて、活躍した事実はほとんど印象に残らないものになってしまう。せめてモンタージュでも彼の活躍を別に描くべきだったと感じる。

 

そしてその事故以降もカールは不屈の精神で立ち上がり、再び潜水士として活躍できるようにリハビリしていく。そこからビリーとの協力も描かれていき、ラストのビリーによる鼓舞も感動的である。ただ、上述のように歩行テストをさせられるという事実はなかったため、このハンクス大佐が悪役のように描かれているのも違和感がある。ハンクス大佐はカールが復帰しようとすることの一体何が気に食わなかったのか。別に黒人差別をしている描写もないし、彼が復帰することで生じる不都合も描かれない。結局カールが乗り越えるためだけに用意された障壁でしかない。悪役を安易に作りすぎてしまったために、結末も安易に見えてしまったのだと思う。これだったら別の形でいくらでも表現できただろうと思う。

 

【音声解説】

 

参加者

├キューバ・グッディング・Jr(カール・ブラシア役)

├ジョージ・ティルマン・Jr(監督)

├スコット・マーシャル・スミス(脚本)

├ロバート・テイテル(製作)

 

上記4名による対話形式の音声解説。4人の関係の良さも伝わって来る雰囲気の良い音声解説。彼らの話を聞いていると、上映時間を短くするためにかなりカットした場面があることは伝わって来る。やはりこの題材を映画化するのに2時間ちょっとでは描き切れないのだろうなと感じた。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├キューバ・グッディング・Jr(カール・ブラシア役)、ジョージ・ティルマン・Jr(監督)、スコット・マーシャル・スミス(脚本)、ロバート・テイテル(製作)による)

映像特典

├メイキング・オブ『ザ・ダイバー』
├ミニ・ドキュメンタリー『真実のマスターダイバー』
├未公開シーン集
├ストーリーボード&CG
├ミュージック・ビデオ
├オリジナル劇場予告編&TVスポット集