【タイトル】
アイ・アム・サム(原題:I am Sam)
【概要】
2001年のアメリカ映画
上映時間は133分
【あらすじ】
知的障害により7歳児と同等の知能しかないサムは、娘のルーシーを育てる能力がないとして娘を施設に保護されてしまう。娘を取り戻すべくサムはエリート弁護士のリタに弁護を依頼する。
【スタッフ】
監督はジェシー・ネルソン
音楽はジョン・パウエル
撮影はエリオット・デイヴィス
【キャスト】
ショーン・ペン(サム・ドーソン)
ダコタ・ファニング(ルーシー・ダイヤモンド・ドーソン)
ミシェル・ファイファー(リタ・ハリソン・ウィリアムズ)
ダイアン・ウィースト(アニー)
ローラ・ダーン(ランディ・カーペンター)
【感想】
日本でもヒットした作品。取材先の障がい者施設にビートルズファンが多く、楽曲を本作でも使おうとしたが、使用料の高さから多くのアーティストによってカバーされたことも話題になった。
まず、映画全体のルックとしては、主人公の不安定さを示すために、カメラがぐらぐら動き回る。ドキュメンタリーの如く、遠目から捉えた登場人物をカメラが追いかけて素早くパンしたかと思うと、緊張感が高まる場面ではかなり細かいカット割りをするなどしており、この演出で133分は結構しんどいと思う。「普通ではない」撮り方なので、意図は十分に伝わるが、その演出は主人公のサムが理性を失う時だけにするなど部分的に使った方が効果的だったと思う。それからサムがマイナスの状況に置かれると急にブルーがかった映像になる。これもサムの見た世界を演出しているのだろうが、不自然に見えるだけだった。
それから、そもそもの設定にまず大きな疑問が生じる。ルーシーが7歳になるタイミングで施設も動き出して裁判になるという流れである。7歳の子供を育てることよりも、生まれたての赤ちゃんを育てることのほうが難しいはず。言葉も発せず、自身の危険を泣く以外の手段で伝えることが極めて難しい赤ちゃんを7歳ほどの知能の人間が育てることはまず持って無理である。子育てだけでなく、手続き、家事や病院など気を使わなければならないことは山積みなのに、周囲の協力を得ながらでもそれを乗り越えているのなら、仮にルーシーが父親のサムの知能年齢を上回ることに一体何の問題があるのか。結局、良くも悪くも子役ダコタ・ファニングの魅力に頼った形となっている。せめて、奥さんに先立たれたとかの疑問を抱かれない設定にすべきだった。冒頭に母親を映したことで後に登場するのかと思わせる要素にもなっているので、この母親は登場させるべきではなかったかもしれない。
また、裁判ではルーシーから父親のサムを引き離すように進んでいくが、「0」か「100」かみたいな極端な話ばかりで、彼らを引き離そうとする登場人物がまるで悪人のごとく扱われていることにも疑問を感じる。例えば里親に出すにしても、本作でもサムがしているように、里親の家の近くに住んでいつでも会えるように取り計らおうとか、理解のある里親を探そうとかそういう柔軟な措置が最初から考えられないものか。こんな事態にならないために、ソーシャルワーカーたちが動くのではないか。
それから、サム1人でルーシーを中学、高校、あるいは大学までやるだけの養育力はどう考えてもない。もちろん環境が環境なので、彼らを支援する仕組みはいくらだってあるだろう。例えば法廷の場面で、「子供の勉強についてはYMCAの無料塾を利用する」と言った場面があった。親子の愛情だけではどうにもならないことがあり、支援する仕組みを主人公が利用するとか、その仕組があることを主人公に教えるとか、同じような境遇で苦しむ人に対して「All you need is love」と言ったところで、それは確かにそうなんだが、それだけじゃないと思う。親子の愛情だけで乗り越えさせようとするのは厳しい。
そして、サムを弁護することになるリタ。彼女は大手弁護士事務所で働いているが、その身勝手な性格から職場内でも嫌われているらしい。そんな彼女がメンツを気にしてサムからの弁護の依頼を無償で受け入れることになる。そんな彼女もサムと同じように子供がいて…というのも悪くないが、どこか映画的に優等生すぎる設定にも感じる。
映画を見終えて、やはりこの演出で133分はちょっとしんどい。キャストの好演も光るが、そもそもの設定、割と色分けされた登場人物、一口に愛と言っても他の形もあるんじゃないかと思え、やや青臭い映画であると言う印象を覚える。
【音声解説】
参加者
├ジェシー・ネルソン(監督)
監督のジェリー・ネルソン単独による音声解説。音楽、撮影、キャストとの話し合いやアイデア、小道具、参考にした障がい者に関する話など、本作にまつわる話を満遍なく話してくれる。
【関連作品】
「クレイマー、クレイマー(1979)」…本作中でこの映画での弁護料やセリフについて話す場面がある。
「トロピック・サンダー/史上最悪の作戦(2008)」…障害を持つ主人公を演じるとアカデミー賞を取れるという話題の中で本作のショーン・ペンについて言及される。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ジェシー・ネルソン(監督)による音声解説
映像特典
├オリジナル・ドキュメンタリー "Becoming Sam"
├削除/変更シーン
【音楽関連】
<CD(サウンドトラック)>
収録内容
├19曲/41分