【作品#0178】34丁目の奇跡(1994) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

34丁目の奇跡(原題:Miracle on 34th Street)

 

【概要】

1994年のアメリカ映画
上映時間は114分

【あらすじ】

デパートのコールズで働くドリーは、感謝祭のパレードで雇ったサンタ役の男が使い物にならず、その場に居合わせた老人クリスをサンタ役に雇うことになる。

【スタッフ】

監督はレス・メイフィールド
製作/脚本はジョン・ヒューズ
音楽はブルース・ブロートン
撮影はジュリオ・マカット

【キャスト】

リチャード・アッテンボロー(クリス・クリングル)
エリザベス・パーキンス(ドリー・ウォーカー)
ディラン・マクダーモット(ブライアン)
マーラ・ウィルソン(スーザン)
J・T・ウォルシュ(エド・コリンズ)
ロバート・プロスキー(ハーパー判事)

 

【感想】

「三十四丁目の奇蹟(1947)」のリメイク。リメイク元でアルフレッドを演じたアルヴィン・グリーンマンがドアマン役で出演している。また、オリジナルでは百貨店のメイシーズが映画内での名称使用許可を出していたが、本作ではそれが認められずオリジナルの百貨店名となっている。

結論から言うと、オリジナルの方が良かった。(1994年当時の)現代的な設定への変更など見られるが、一部設定の変更は改悪レベル。

まず本作のリチャード・アッテンボローが演じたクリス・クリングルはリメイク元に比べると、どう見ても「正常な人間」であるように描かれており、そんな彼を「狂った人間だ」と周囲が騒ぎ立てる意味が分からなくなっている。

それから裁判になるにつれてどんどんおかしくなっていく。冒頭のパレードでクビになった男をライバル会社が金で雇ってクリスに挑発的な言葉を浴びせ杖で叩かせて逮捕させることになる。相手に先に攻撃させるが勝ちというのはアメリカ的だ。映画はこの件について彼の無実を描くのではなく、警察がその件はすでに知っているとブライアンが説明する。しかも、これによってコールズの売り上げが落ちるなどの描写もない。だったらこの件は解決しているじゃないか。

その後、クリスを病院に入院させるかで審問するということになるのだが、やはりなぜ裁判になったのかがピンとこない。サンタが実在するかをなぜ証明しなければならないのかという疑問がモヤモヤ残ったまま進んでいく。あと、ブライアンが弁護士なのはオリジナルと同じなので伏せておく必要もなかっただろう。

また、あれだけ否定的な考えだったドリーが彼の逮捕を受けて動き出すのも動機としてはかなり不十分。彼女はなぜライバル会社の行った妨害工作に対して何も言わないのか。まるで彼女の一声で町全体が彼を応援しようとする流れになるのも不自然。こんな酷い仕打ちをしておいて、彼らが罰を受けないというのは映画的にどうかと。終盤に彼らが「サンタを信じる」のステッカーを持っているところが映るが、それは何の配慮でもない。この件で検事が躍起になるのもよく分からん。

オリジナルの裁判の決着は、郵便局が宛先をサンタにしても郵便物が届き、国の認める組織が認めているのだから裁判所でもサンタの実在を認めるという形だった。郵便局員が法廷に何人も入って来るという映像的なインパクトもあった。本作は紙幣に「神を信じる」という言葉が書いてあり、国の認める財務省が発行する紙幣に存在を証明できない神について記載があるから本法廷でもサンタの実在を認めるという判決を下している。オリジナルの方がよっぽど説得力があったし、判事の心変わりもピンとこない。

そして本作には「お金」にまつわる話が出てきたが、オリジナルの方がよりリアルだった。判事に組合をちらつかせて、「もしサンタの存在を否定すればおもちゃ会社や百貨店はどう思うだろうか」と半ば脅迫じみたことを言う場面があった。クリスマス商戦はおもちゃ会社にとっても百貨店にとっても、ひいては、それを運ぶ運送業界も関連会社にとっても経済的に非常に重要な位置づけがされていることだろう。本作の「お金」にまつわる話はその点を加味してもあまりにも上辺をなぞった薄い話だった。

また本作は裁判後からがやや長い。裁判ものの映画では裁判の判決がクライマックスに捉えられがちなので、本作はそこからのクリスの起こす奇跡の展開がやや長い。ドリーとブライアンがあのまま結婚するところも不自然だし、奇跡には見えなくなっている。ドリーの過去を中途半端に説明したり、クリスに指輪を預けたりするくだりも中途半端な改変だ。

設定の変更や追加があることで、リメイク元では感じなかった(あるいは見えなかった)違和感がある。子供向け、家族向けには良いかもしれないが、リメイクとして見ればリメイク元の圧勝だった。

キャストではスーザン演じたマーラ・ウィルソンの笑顔が素敵だった。オリジナルでは若き日のナタリー・ウッドがこちらも印象を残したが、マーラ・ウィルソンがリチャード・アッテンボローの髭を引っ張って驚く顔は最高。

余談だが、エンドクレジットでキャストの表記が流れるのが最後の方だった。これは珍しい。

 

【関連作品】

 

三十四丁目の奇蹟(1947)」…本作のオリジナル

「34丁目の奇跡(1994)」…上記作品のリメイク

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/アメリカ手話/オランダ語/イタリア語/ロシア語/スワヒリ語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語/アメリカ手話/オランダ語/イタリア語/ロシア語/スワヒリ語)

├日本語吹き替え

 

<BD>

収録内容
├上記DVDと同様