【作品#0154】ターミネーター3(2003) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ターミネーター3(原題:Terminator 3: Rise of the Machines)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

2003年のアメリカ/ドイツ/イギリス映画

上映時間は109分

 

【あらすじ】

 

「審判の日」とされた1997年8月29日は過ぎ去った後、ジョン・コナーは母を亡くし、あてもない生活を続けていた。ジョンはバイクの横転事故の治療を夜間に閉まった動物病院で行っていると、獣医のケイトが急患のためにやってきた。そこへ2032年から送り込まれた新型ターミネーターT-Xがやって来る。

 

【スタッフ】

 

監督はジョナサン・モストゥ

音楽はマルコ・ベルトラミ

撮影はドン・バージェス

 

【キャスト】

 

アーノルド・シュワルツェネッガー(T-850)

ニック・スタール(ジョン・コナー)

クレア・デインズ(ケイト・ブリュースター)

クリスタナ・ローケン(T-X)

デヴィッド・アンドリュース(ロバート・ブリュースター)

 

【感想】

 

前作「ターミネーター2(1991)」から12年の時を経て製作されたシリーズ3作目。度々続編の話は出ていたが、ジェームズ・キャメロンもアーノルド・シュワルツェネッガーも続編製作をしないことを公言していた。ところが、アーノルド・シュワルツェネッガーは90年代後半からキャリアに陰りが見え始め、結局ギャラを値引いてまでして本作に出演することになった。それでも2億ドルと言う大型予算が組まれ、4億3千万ドルを全世界で売り上げたが、酷評もされた作品である。

 

あまりにも偉大な2作目に比べると、映画の世界観がややこじんまりした印象もあるが、目指した方向は間違っていなかったように思える。

 

まず2作目から本作までに何が起こったかが重要である。「審判の日」は回避され、サラ・コナーは白血病で死んでしまった。そして本作の主人公であるジョン・コナーはスカイネットと人間の戦争で人間側のリーダーになる予定の人間だった。しかし、前作でそのスカイネットの誕生を阻止したものだから、ジョン・コナーが人間側のリーダーになることもなくなってしまったのだ。前作で「運命はない。未来は自ら築くものだ」と言った通り、審判の日を回避するという新たな未来を切り開いたからこそ、ジョン・コナーは将来自分があるべき人間にならないことも知ってしまう。そんな10歳だったジョンが成長するにつれてこの現実を知り落ちこぼれたジャンキーになっているのは納得がいく。当初、ジョン・コナー役を演じるエドワード・ファーロングがそれと同じような人生を歩んでしまい本作に出演できなかったのは奇しくも皮肉な話だ。

 

ただ、映画的にはこの部分の説明はほとんどしていない。なぜジョン・コナーがこんな状態になっているのかを理解できなかった観客が多かったのだろう。とはいえ、前作は世界中で大ヒットを記録した作品だ。作品を見た人同士で、「あの後どうなっただろうね」なんて話をしているはずだし、本作の序盤で描かれる展開だって全くの想定外ではない。製作者側としてはそれくらい補完してほしいというのが正直なところだろう。

 

そして本作は「審判の日」は回避されておらず先延ばしされていたに過ぎなかったことが分かる。「運命はない」と言った前作を全否定するような展開。そして、それは同時にジョン・コナーが将来人間側のリーダーになることも意味しているのだ。ジョン・コナー本人にすればもともと教え込まれた人間側のリーダーになるという将来が実現するという希望があるのだが、一方でスカイネットと人間側が核戦争をすることになり数十億人もの人間の命が失われるという絶望もある。終始受け身だったジョン・コナーが結局、スカイネットと人間側が戦争を起こし、自分がその人間側のリーダーになることに気付いて映画が終わるのである。ジョン・コナーが落ちこぼれであったり、前作を否定したりしている部分などが酷評されたポイントだとは思うが、ある程度納得のいく展開であったようには思う。

 

そんな作品だから、ジョン・コナーは基本的に受け身のキャラクターである。ちょっと何か行動でも起こそうとすると邪魔が入ってしまう。昔を思い出してT-850に命令しても、「ケイトからの指示しか受け付けない」と言われ、銃を自らの頭に向けても、心理学を学んでいるT-850から本当に撃つ確率まで言われて銃を降ろしてしまう。

 

本作に登場するターミネーターは前作登場したT-800の改良版であるT-850である。中盤に語られるが、このT-850は将来、ジョン・コナーを殺すことになるのであるが、その後捕まって改良され、ケイトの手によって過去に送り込まれたという設定だ。また、詳細は不明だが、T-800時代の記憶も残っており、車の日除けからキーを見つけるところは前作「ターミネーター2(1991)」で描かれたものである。

 

そして、このT-850の大きな特徴は「嘘をつくことができる」ことだろう。「I lied(嘘だ)」というセリフまであるし、このセリフはT-850を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーの決め台詞の1つである。彼の任務は「ケイトとジョンに生き延びてもらうこと」である。そのためであれば、嘘もついてクリスタルピークまで連れて行くことになる。T-Xとの格闘の末、T-Xによってプログラムを書き換えらえたT-850は、ジョンを殺そうとする。ところが彼は「抹殺」か「中止」で悩むことになる。上記のように過去の記憶を有しているのなら、前作のように「ジョンを守ること」が任務だし、また本作で語られるようにここに送り込まれる前には「ジョンを殺すこと」が任務だった。「僕の運命を知っているはずだ」とジョンに言われたことで、この矛盾に気付いたT-850が、自らに嘘をつき、プログラミングを自ら書き換えることになる。ここまで来ると、何でもありになってしまうが、何とか理解はできる話になっていると思う。

 

そのT-850と戦うのが、T-Xというターミネーターである。T-850とは比べ物にならない強さを持っている。そんなT-Xを殴ったり蹴ったりする描写はいかにもな根性比べみたいであまり好ましく思わなかった。CGによってスタントマンのできないアクションを表現できるようになったが、それゆえ「そんなんじゃ死なないよ」という説明のつかない描写まで出てくる。トイレの格闘やT-Xが墓石に衝突する場面などはCGの安っぽさも手伝って残念な仕上がりになっている。

 

そんな出来事を本作はほぼ1日で描いている。登場人物も最小限にしていることから、どこか小さな世界観になっていると言わざるを得ない。本作もどこかジョナサン・モストゥ監督のデビュー作「ブレーキ・ダウン(1998)」っぽさも感じ、彼も後のキャリアがうまくいっていないところを見るに、小規模のB級アクションが主戦場の監督なんだと思う。

 

ただ、語られないが故に想像のし甲斐のあるT-850の設定など語り甲斐は十二分にある作品であると思う。様々な要素が酷評されるポイントになるのは分かるが、セリフや設定から考えられうるところまでよく考えると全否定することもできない作品であるとは思う。

 

【音声解説1】

 

参加者

├ジョナサン・モストゥ(監督)

├アーノルド・シュワルツェネッガー(出演)

├ニック・スタール(出演)

├クレア・デインズ(出演)

├クリスタナ・ローケン(出演)

 

上記5名による音声解説。ジョナサン・モストゥとクレア・デインズは一緒にいるが、それ以外は別撮りの音源を当てはめた音声解説。クレア・デインズは音声解説というもの自体にあまり慣れていない感じがありそれをジョナサン・モストゥがフォローしている感じ。それ以外のキャスト3人は何を作り上げたかったのか、どう準備したのか、何で苦労したのかなどを聞くことができる。ただ、1つの音声解説としてはまとまりに欠け、これだったら別々のインタビューなりを聞く形式で良かったのではないかと思う。

 

【音声解説2】

 

参加者

├ジョナサン・モストゥ(監督)

 

監督のジョナサン・モストゥ単独による音声解説。上記の音声解説よりかはよっぽど音声解説らしいことが聞ける。撮影時の苦労、映画の構成とシーンのつなぎ、役者の演技指導などについて聞くことができる。もし本作の音声解説を聞くならこちらをお勧めしたい。

 

【関連作品】

 

ターミネーター(1984)」…シリーズ1作目
ターミネーター2(1991)」…シリーズ2作目

「ターミネーター3(2003)」…シリーズ3作目
「ターミネーター4(2009)」…シリーズ4作目
「ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015)」…シリーズ5作目だが、前作の続きではない
「ターミネーター:ニュー・フェイト(2019)」…シリーズ6作目だが、「ターミネーター2(1991)」の続編として製作された
「ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ(2008-2009)…サラ・コナーを主人公にしたテレビシリーズ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>
 

言語
├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

<DVD(2枚組/プレミアム・エディション)>

言語
├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ジョナサン・モストゥ(監督)、アーノルド・シュワルツェネッガー(出演)、ニック・スタール(出演)、クレア・デインズ(出演)、クリスタナ・ローケン(出演)による音声解説

├ジョナサン・モストゥ(監督)による音声解説

映像特典(Disc2)

├シュワルツェネッガーによるイントロダクション
├視覚効果に関するメイキング「T3ビジュアル・エフェクト・ラボ」
├スカイネット・データベース ~歴代主要登場マシーン&人物データ~
├“ターミネーター”シリーズ年表(静止画)
├メイキング映像「インサイドT3」
├ストーリー・ボードと実際の映像との比較
├未公開シーン
├NG集
├衣装デザイン
├ターミネーター・フィギュアの世界
├ゲーム版T3メイキング

 

<BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様

 

【音楽関連】

 

<CD(サウンドトラック)>

 

収録内容

├21曲/52分