TIME/タイム | サイショモンドダスト★の嗚呼、素晴らしきダメ映画

サイショモンドダスト★の嗚呼、素晴らしきダメ映画

映画の魅力は、傑作映画だけでは語れない!?

華々しい映画史には絶対に残らないトホホなダメ映画こそ、真の映画好きにとっては珠玉の嗜好品。

そんなダメ映画の数々を、映画のソムリエ、サイショモンドダスト★が愛をこめて紹介!

映画のソムリエ、サイショモンドダスト★の紹介するダメ映画の第二弾はコチラ!

「TIME/タイム」です。


$サイショモンドダスト★の嗚呼、素晴らしきダメ映画

監督は、僕が生涯好きな映画ベスト3に必ず入っている映画「ガタカ」の監督アンドリュー・ニコル。

結構最近の映画なので、覚えている人も多いと思いますが、この映画のダメポイントは、「面白そうではある」ことです。

あらすじはこんな感じです。

「科学技術が進歩したことにより老化現象を解決した近未来、25歳で生体の成長が止まると余命はあと1年という社会が構築されていた。富裕層は寿命を気にしなくていい一方、貧しい人々は寿命を延ばすためにあくせく働き続けなければならなかった。貧しい青年のウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、時間と引き換えに裕福な男性を殺した容疑を掛けられ、追われる身となってしまい……。」

どうでしょう。
この設定、わりとSF好きには「おっ」と引っかかるものがあります。

それだけにめちゃくちゃ期待していったのですが、見事に裏切られたのを覚えていますね。



ここからちょっとネタバレになってしまいます。

まず、主人公にお母さんがいるんですね。
母子家庭の、貧乏母子という設定です。
お母さんと言っても、25歳で成長が止まっているので見た目は25歳です。
かなりホットなお母さんです。

$サイショモンドダスト★の嗚呼、素晴らしきダメ映画

ちょっとホット過ぎやしませんかね。
まぁ、この世界の異質な面を表現しようとしていると思うのですが、着ている服は明らかに貧乏人の服ではない。
僕らへのサービスのつもりなんでしょう。

このお母さん、主人公が大量の時間(大金)を手にした直後、時間切れで死ぬんです。
値上げしたバス料金を払えず、歩いて(走って)帰った結果、時間切れで死にます。

ちょっとウッカリさんなんです。

バス料金の値上げくらい、どうせ一ヶ月前くらいから告知されてたんだろ~?
そうじゃなきゃ訴えて勝てるぜ主人公!


こういうSFというのは、いかに現実に即するか、つまり「あー、こういう未来、有り得るんじゃないか」と思わせられるかどうか、というのが重要だと思うのです。

「ガタカ」はそこが上手かった。
ほんと、みんなに見て欲しい、「ガタカ」!!

一緒に見に行ってくれたカワイコちゃんに、散々「この映画は監督が良いから絶対面白いって!」と豪語した結果、観終わった後ビミョーな空気になってしまったのは僕だけではないはずだ。


話を元に戻そう。


この映画、全体的に、なーんか設定に現実感が足りないんです。
さっきのお母さんの死ぬところもしかり。
主人公が膨大な寿命(金)を手にして、行き当たりばったりにポーカーやって勝って、捕まりそうになったらそこにいた美人人質にして逃げて、美人といい感じになって、二人で銀行襲って、義賊みたいになって…。

わぁ、ご都合主義にも程があるぜ。

主人公がポーカーが得意だって描写も全くない。
たぶん、貧乏人だから、やるのすら初めてなんじゃねーか?
ハリウッド映画の主人公だからポーカーが上手くて当たり前、みたいなストーリーで騙せるのはアホなアメリカ人だけだろ。


で、当然警察に追われるわけなんですが、この宿敵の警察が最後死ぬ原因も、時間のチャージを忘れていたがための時間切れです。

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「あれ?俺チャージ忘れてね??」

$サイショモンドダスト★の嗚呼、素晴らしきダメ映画
「うわぁっ死んだーっ!!」


ここにもウッカリさんいたー!!

ある意味、PASMOの残高不足で改札引っかかる感じに近いから、現実っぽいっちゃ現実っぽいですが。
命かけすぎでしょ。


伏線も、いろいろ張ってはいるのですが、どれも投げっぱなしになっていて、「ガタカ」好きからすると、「ほんとどうしちゃったんだ、アンドリュー!?」といった感じです。

いつか会う機会があったら小一時間問い詰めたいですね。


まぁたぶん、ブランデーのグラス持った映画会社の重役か誰かに、
「アンドリュー君さぁ、最近ヒットしてないじゃない?ちょっと一本生きのいいやつ頼むよぉ。ほら、『ガタカ』みたいなさぁ…。あれ、何年前だっけ?15年?」
とか言われて、
「俺だってその気になったら『ガタカ』みたいなのもう一本作れらぁ!」と焼酎片手に書いた脚本なんでしょう。


何度も言うようですが、大好きな監督なだけに、非常に残念な映画でした。

この映画観て失望した人は、ほんと「ガタカ」観て欲しいですね。
あと、彼が脚本を書いたジム・キャリー主演の「トゥルーマン・ショー」も良い映画だからオススメです。