{作詞:林春生、作曲:ザ・ヴェンチャーズ、編曲:川口真}
前の東京オリンピックの開催された1964年は、アメリカでビートルズブームが巻き起こり、日本を始め世界中に飛び火したことは広く知られていますが、ほぼ同じ頃に日本では、ヴェンチャーズによるエレキギターブームも同時進行して、若者たち向けの音楽が主流となりました。 ビートルズの来日は1966年ですが、それによって日本ではGS(グループサウンズ)旋風が吹き荒れることになりますが、今日のテーマは「ヴェンチャーズ歌謡」。
つまり, ヴェンチャーズが日本人向けの曲を書いて、それを日本人歌手が歌ってヒットさせるという一連のエレキ歌謡がヒットしました。 最初のヒット曲は、和泉和子と山内賢のデュエット「二人の銀座」(1966年)ですが、奥村チヨ「北国の青い空」(1967年)と欧陽菲菲「雨の御堂筋」(1971年)の間に、渚ゆう子の「京都の恋」と「京都慕情」が大ヒットします。特に「京都慕情」は、元は「Reflections in A Palace Lake」というタイトルのインストルメンタル曲だったそうです。
歌詞は、林春生。東京のテレビ局のディレクターで、先輩だったすぎやまこういちに勧められて、歌詞を手掛けるようになったとのこと。筒美京平作曲の「サザエさん」(♪お魚くわえたどら猫・・)の作詞もこの方です。 さて渚ゆう子は元はハワイアン歌手だったそうですが、なぜか「京都の恋」の歌を歌うことになり、そのヒットに次いで「京都慕情」の連続ヒットで人気を博しました。 では、まずは渚ゆう子のレコード音源です。1970年といえば、昭和45年。♪こんにちわこんにちわ、の大阪万博が終わった年の12月に発売になりました。
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やはり歌謡曲のカヴァーは、テレビ番組かカヴァーアルバムに収録されたものくらいでしか、聴けませんね。これは前者、藤あや子の「京都慕情」です。(メドレーなので、この曲は2分30秒あたりからです)
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隠れた人気カヴァーは武田カオリの「京都慕情」。もう10年ほど前になるのでしょうか。NHK—BSの不定期放送のドラマで、京都を舞台にした『京都人の密かな愉しみ』の主題歌として、毎回淡々と流れていたのが印象的でした。番組のゆったりしたテンポにマッチしていたと思います。どういうシンガーなのか詳しいことは分かりませんが、とにかくヴェンチャーズのエレキギター感のない歌唱が素敵でした。YouTubeには、ドラマの紹介には相応しいオープニングからタイトルが流れる映像がありました。武田カオリの歌は2:30あたりから流れます。
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ちなみにこのドラマで教授役を演じた団次朗(次郎、時朗の名も)は、京都市の生まれ育ちで高校野球で有名な高校の卒だとか。ちょうどそのころに資生堂の大胆なCM展開が始まった(前田美波里を起用して人気を博していた)60年代の後半に、団次郎が男性化粧品MG5(デザインがチェック柄がスマートだった)の宣伝に起用され、左京区の銀閣寺近くにある京都大学の人文科学研究所の中庭で大型犬と一緒に撮影された写真で人気モデルとなりました。ポスターや広告がカッコ良かったですね。popfreakは同じ京都の生まれ育ちでありながら、どこまで違うねん(苦笑)と思っていました。
それとローカルネタですが、上京区に生まれ育ったボクには、このドラマには見覚えのある商家や町家がいろいろ登場します。まずは主人公役の常盤貴子は和菓子老舗の跡取り娘という役柄ですが、その和菓子店は室町上立売下がるの「俵屋吉富」(あんこのロールケーキみたいな「雲龍」が有名)に違いないとみていました。そこは細長い店で、烏丸通りと室町通りの両方に入り口があり、ドラマでは室町通り側が写っていました。それに中京区の新町通り六角付近が、団教授の住まいの町家でしょうか。
その他にも京都の密かな名所でさりげない演出があって、とても楽しみに見ておりました。 さて本家ヴェンチャーズのインスト盤「京都慕情(原題:Reflections in A Palace Lake)」です。
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これもギタリストCharによるインストヴァージョン。2011年のライブ『TRADROCK』での演奏で、味のあるギターはさすがです。
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やはりオリジナル歌唱者以外の歌ヴァージョンが少ないのが残念ですが、最後も渚ゆう子の2008年収録のTV番組での歌唱です。本人コメントもありますが、ご本人は当時アラカンくらいです。
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『京都人の密かな愉しみ』は放送開始から2年ほどで終わり、若手の俳優陣による『京都人の密かな愉しみ Blue修行中』という新シリーズも放送されていましたが、ボクはあまり見なくなってしまいました。もう終わったのでしょうか。
NHKは、BSが1チャンネル減ってもなお再放送ばかりしているのですから、この『京都人の密かな愉しみ』もぜひ再放送で観たいものです。