「マイ・ポリスマン」
久しぶりにイッキ読みした小説です。
ハリー・スタイルズ主演の映画「僕の巡査」(原題My Policeman)の原作小説。
映画は2022年11月4日からアマゾンプライムビデオで配信です。
美青年警察官を愛した一人の女と一人の男。
1950年代、同性愛が違法だったイギリスを舞台にした苦しい三角関係のお話です。
原作小説は500ページ超え、ボリュームある文庫本です。
長編の海外小説、かったるそう。
と思いきや…
これ、翻訳がとっても読みやすいです。
ストーリー運びもめちゃくちゃ上手い。
ノンストップで読んでしまった。それくらい面白い。
ただし。
この小説にBLを期待するのは危険!
はっきり言います。
これ、誰も幸せになりません。
救いのないラブストーリー。
不毛な恋愛模様に神経がすり減らされる。
ヘビーな感情描写にも疲労感。
なのにグイグイ読ませるストーリー。
ページをめくる手が止まらない。
読後はどうにもならないやるせなさで、心臓のあたりがモヤモヤ。
気持ちの持って行き場がない。
助けて!
警察官のトム。
美しく魅力的な青年です。
赤毛のマリオンはトムと初めて出会った中学生の時から彼に夢中です。
大人になってからの再会で、なんとかトムに近づこうとするマリオン。
トムの反応は悪くはないけれど、距離は縮まるように見えてなかなか進展しません。
そんな時マリオンはトムに友人を紹介されます。
美術館勤務のパトリック。端正な顔立ちの知的な大人の男性です。
トムと2人きりのデートを望むマリオンだったけれど、会う時はいつも3人。
トムはマリオンと2人きりの親密なムードになるとぎこちなく緊張感を漂わせます。
ところがそんなトムがマリオンに突然プロポーズ。結婚が2人の関係を変えるはず、とマリオンも希望を見出します。
しかし、結婚後もパトリックの影は2人に付きまとう。
小説はマリオン視点とパトリック視点が交互に展開されます。
マリオンが進展しないトムとの関係に悩んでいる時、トムはパトリックと出会っていました。
トムの美しさに心を奪われたパトリック。
また、トムもインテリなパトリックに惹かれていきました。
やがて2人は恋人関係となります。
しかし当時のイギリスでは同性愛は違法。警察官のトムにとってもあまりに危険でした。
トムは悩みながらもマリオンとの結婚を決めますが、パトリックとの関係も断ち切れない。
やがて2人の関係に疑いを抱き始めたマリオンは怒りと悲しみの感情に苦しむようになる…
偽りの生活、偽りの愛。
同性愛が違法であり、独身者への目も厳しかった時代とはいえ、トムがマリオンと結婚するくだりはつらい。
「僕を分け合える?」
パトリックへの問いかけもあまりに残酷。
パトリックはトムを熱烈に愛していた。
そしてマリオンも激しくトムに恋していた。
妻のマリオンにはパトリックを友人と偽り続け、その裏で彼と肉体関係を持つという裏切り行為。
しだいに2人の関係に気付いていくマリオンが真実から目を背けようとする様が痛々しい。
そして、精神的に追い詰められていく彼女がとった行動が物語の中で衝撃的な展開となっていきます。
時代に苦しめられ、自分を偽って生きるしかなかったマイノリティたちの物語でもあります。
映像化はとても楽しみ。
物語の舞台となるイギリスのブライトン、そしてトムとパトリックが旅したベネツィアの風景にも期待したいと思います。