「帰り道」
光村図書の国語教科書に書き下ろされた
森絵都さんの短編小説です。
単行本「あしたのことば」にも収録されています。
森絵都さんは「カラフル」「DIVE!!」などが有名な芥川賞作家さん。
児童向けの作品など、優しい文体で読みやすいものが多いです。
「帰り道」は教科書数ページのボリュームで、5分もあれば読めてしまう超短編。そして王道のブロマンス小説です。
小学生の教科書用なので登場人物たちの年齢設定は低め。
でも小学高学年男子という年齢だからこそ物語はサッパリとすがすがしく、読後感も爽やかです。
律と周也。
二人のある日の帰り道での出来事をそれぞれの視点から描きます。
その日の昼休み、ちょっとした事で気まずいムードになってしまった二人。
律は思ったことをうまく伝えられない繊細なタイプ。
周也は活発で言葉がポンポン口から出るタイプです。
昼休みの会話では「どっちが好き?」という話題で周也たち数人が盛り上がる中、テンポについていけなかった律。
あいまいな答えで周也を苛立たせてしまいました。
「どっちも好きってのは、どっちも好きじゃないのと、いっしょじゃないの」
周也の言葉がみぞおちに重く響いてしまった律。
帰り道でも、昼休みのことを引きずって沈黙してしまいます。
前を歩く自分よりグッと背の高くなった周也の背中を見つめる…
そんな空気を変えるのが突然の雨。
この後二人の心に変化が訪れる。
後半からは周也の視点で同じ出来事が語られます。
帰り道の沈黙に耐えきれず、やたら饒舌になる周也の律に対する気持ちも描かれます。
この構成がすごく効いています。
お互いこんなふうに思ってたんだね、というのが読者に伝わる仕組み。
5分で読めるブロマンス。
おススメです。
▼こちらに「帰り道」が収録されています