韓国クィア映画「ピーターパンの夢」 | 風と木の主婦日記

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韓国映画「ピーターパンの夢」


原題は「피터팬의 꿈」、英語タイトルは
「Journey to the shore」です。


2020年韓国クィア映画祭で上映された30分の短編映画。



▼公式トレーラー



トレーラーを見てもわかるように感傷的で切なく胸がギュッと痛くなるような、いわゆるクィアフィルムの伝統を継承した作品です。


同性愛者であることに悩み、差別に怯え、生きることに絶望し、愛する相手との幸せな未来はあまりに遠い。


LGBT先進国の作品に比べると韓国はまだこの段階で足踏みしてるの?と言われそうなオールドファッションぶりです。


20年前ならいざ知らず、現代にこのような悲劇的なゲイ映画を作る意味って?


でもこれこそが韓国クィアフィルムなのです。


そして私が求めているのが、まさにこの「痛み」なのです。




【ストーリー】
ミンハとサンボムは同じ高校に通うカップル。
2人は海への旅行を計画していた。初めての2人きりの旅。けれど、お互いの心にはまだ伝えていない気持ちがあって…




コンパクトに30分でまとめた映画にエモーショナルな要素を盛り込んだ心を揺さぶる佳作です。


LGBT理解も進み、多様性を認める世の中になってきても、やはり多感な思春期の少年にとって自分の性的指向を受け入れること、同性の恋人との幸せな未来を思い描くことは容易ではないはず。


学校という閉鎖的なコミュニティがマイノリティに対していかに残酷かもまざまざと見せつけられます。


保守的な韓国で同性愛者として生きるには、さまざまな困難が人生を終えるまで続くように思えてきます。


つまり韓国はまだこのような典型的なサッドエンディングなクィア映画を、リアルとして必要としているのです。


近ごろ量産されるようになった韓国のウェブ配信BLドラマがいかにファンタジーであるかを思い知らされるかのような作風です。




役者さんの自然な演技、海辺でのカメラワーク、感傷的なメロディーの音楽など、90年代の北野武監督作品のような情緒があります。


2人が並んで海を眺める後ろ姿などは「あの夏、一番静かな海。」を思い起こさせるし、少年2人の洋服の赤と青のコントラストは「キッズ・リターン」を彷彿させます。


「ピーターパンの夢」のオム・ハヌル監督について、映画を見終わった後にプロフィールを読むと影響を受けた作品に北野武監督作品とあったので、なるほど、と納得しました。


若い監督さんのようですが、不思議と懐かしい感じがします。


日本未公開の映画で配信もされていませんが、こちらから本編が視聴できます。(オム・ハヌル監督の公式チャンネルのようです)




英語字幕もシンプルで分かりやすいので無理なく見ることができます。


ぜひご覧ください。


韓国BLの甘い夢世界も良いけれど、心の痛点をズキズキ刺激する韓国クィア映画がやっぱり私は好きなのです。