ここからの続きです
アユと爺さんに物申してから
１ヶ月が経ちましたが
一切音沙汰無し
いや、わかってる、そうなるよね
なんだかんだ言っちゃったし
涙なのか鼻水なのかわからないくらい
顔ぐちゃぐちゃになるまで
泣かしちゃったし
こうなることはわかっていました
だけどこの時
私の知らないところで
とんでもねえことに
なっているとは…
アユのことが
気にならないわけではないけど
だからといって
私から連絡することもありませんでした
それどころか
憑き物が落ちたように
気が楽になったとさえ感じていました
渦中のふたりは愛だ恋だと盛り上がり
まともな判断力を失っていて
正気の沙汰ではありません
そこに私がザ・正論をぶつけても
愛や恋に取り憑かれているふたりに
火に油を注ぐようなもの
さらに盛大に
燃え上がらせてしまったかもしれない
そう思っていました
火事だよ火事 
逃げ遅れるなよー‼
しかし
自分がされ妻のときには
見えなかったものが見えてきました
アユを見ていて思うけど
妻という存在は本当に邪魔なんですね
面識もないのに嫌うって
すごくないですか？
障害を乗り越えて
幸せを手に入れてみせる
昼ドラみたいな恥ずかしいセリフを
ひょいと言ってのけるけど
障害って…
私のことだったのね
私はね
障害って世間体とかそういうのを
言うんだと思っていました
しかーし
主役のふたりは火事に包まれていて
誰かの反対に遭えば
それは火災旋風と化し
火を更に大きくさせる
周りからどう思われようが
そんなの関係ねえ
妻さえ身を引いてくれれば
全てはうまくいく
みたいな世界観
クソの不倫相手に
離婚を迫られたことを思い出して
ものすごく嫌な気分になったわ
これは早いうちに…
火消しをしないといけませんね
消防役は誰なんでしょうか
私のような
全くの赤の他人なのでしょうか
それとも
友人と呼ばれる人たちなのでしょうか
しかし
そのアユ自身に
私や友人たちの言葉が届かないんです
誰が火消しの救世主になるのか
全く想像がつきませんでした
ただ
妻ではないことは確かです
障害だから
妻が火消しにかかったら
それこそ消えません
それどころかたちまちその火は
空高く燃え上がり
全てを焼き尽くす勢いとなるでしょう
そして
決して鎮火することはない
どれだけの水をかけようと
表面上鎮火したように見せかけて
火種は残す
障害の妻の目をくらませ
やっとの思いで再会し
火種は再び大火となるのです
今さら遅いけど
妻がギャーギャー騒ぐのは
逆効果だったのだと気付きました
私が不倫をやめてくれと
泣いて訴えている時は煙たがられ
嘘を並べ、守れない約束をし、また裏切る。
しかし私はサレラリ期
夫大好き人間になっていますから
裏切られても追いかける
夫にはウザがられ
不倫女にはみじめだと言われ
散々でしたね
幸い私はあっさり
そのサレラリ期を脱します
何かの拍子で
この夫にしがみつくメリットがない
ということに気がつきました
そこからは早かったです
愛想をつかした私は
思い切って家を出たのですが
クソはなぜか
私に執着するようになりました
不倫こそ続けてはいましたが
間違いなく私に関心が向いたのです
不倫はやめないけど家庭も大事
そう言い放ったクソ
調子のいいこと言ってんな
バカヤローと
殴り倒したいくらい馬鹿げた話ですが
本当にその言葉の通りだったんです
私が火消しに走り回っている間は
振り向きもしなかった人が
消防車を乗り捨て
どうぞご自由にと反旗を翻した途端
私に振り向いて呼び止める
意味が分からないけれど
これが不倫男の思考なんです
ですが
いざ自分の夫が不倫をしていると知ると
大抵の妻たちは
私のように騒ぐと思うんです
女というプライドが深く傷つくから
どうしても許せないのです
だから絶対に
爺さんの妻に知られてはいけない
知られてしまうその前に
消火活動を終わらせたいと
切に願っていました
爺さんの妻にバレたら
いったいどうなるのだろうか
不倫という事実だけでも
ショックなのに
63の夫が25の女とデキてますって…
不倫相手の女が
自分の子供より年下って
衝撃が想像できない
奥さんにバレないうちに
どうか静かに終わってほしい
と
思っていた矢先
アユから電話がきました
1ヶ月ぶりでドキドキする
次はなんて言い出すのか
ドキドキするんですよ
もしもし？
あ、ママ？久しぶり‼
思ったより元気そう
というか
まるっきり元気じゃねえか
爺さんと別れたとかはなさそうだな
ママ、あのね、、今日から
爺さんと暮らすことになった
は？
アユの言葉に耳を疑いました
ちょっ、なんでそうなるの？
奥さんにバレたの
え？
バレたって言うか
爺さんが自分でバラした
はあぁぁあ⁉
それで
奥さんに追い出されたの
荷物も外に出されてて
うちに来ることになったんだ
はあ⁉
爺さんね
ママにこの間言われたじゃん
ママの話聞いて
ちゃんとするって決めたんだって
はあぁぁあ⁉
私のせいなの⁉
衝撃のあまり言葉を失う
は？しか言えてない
to be continued