ここからの続きです
 
アユは私に抱きついたまま
泣きながら静かに話し出しました
 
 
職場に
 
アユたちの関係を知っている
職員がいるそうです
 
 
え?ちょっと…
職場の人に言ったの?
 
私の心は少しざわつきました
 
 
まさか職場にバレてるなんて
思っていなかったから
 
それも自分から言ったなんて…
 
 
 
 
ん?ちょっと待って
 
アユが信頼している人に
話したってこと?
 
 
アユは頷きました
 
 
 
それ聞いて
その人はなんて言った?
 
 
 
 
アユちゃんと爺さんが一緒になるって
失うものの方が大きいと思う
 
アユちゃんが後悔することに
なるような気がするって言われた
 
 
 
 
 
アユのことを好きな人は
アユを心配していました
 
 
それを聞いて本当に嬉しかった
 
 
 
それなのになぜ
その人の言葉に耳を貸さないのか
 
 
 
恋は盲目とはよくいったもの
 
いま何を言っても無駄なのです
 
今は恋に落ちているから
 
 
 
私の言葉も仲間の言葉も
今のアユには届かないのです
 
 
 
 
でも!!失うものがあっても
得るものもあるもん‼
 
諦められないんだもん‼
離れるなんて絶対嫌ぁー!!
 
 
 
 
 
得るものなんて
ひとつもない!!
 
 
寝言は寝てから言えぇ‼
 
 
 
それでもアユは絶対に曲げなかったです
 
 
諦められない
人にどう思われてもいい
 
 
この気持ちは
ママに何を言われても変わらない
 
 
だけどママにはわかって欲しい
 
 
ギュッと抱きついたままそう言いました
 
 
 
わかんねえよ
 
わかるわけねえだろ
 
 
 
 
 
アユに…
 
ママの話、したことなかったよね
 
小娘のパパの話
まだアユにはしてなかったね
 
 
 
私は過去に不倫されて傷ついたことを
アユに話すことにしました
 
 
不倫は心の殺人
 
何度も何度も殺された
 
 
黙って聞いていたアユが顔をあげました
 
 
 
 
誰かを好きになる気持ちは
理解できるけど
 
今の状態はダメだよね?
 
ママね、爺さんが63歳だからダメだって
言ってるわけじゃないんだよ
 
 
アユと爺さんのやっていることは
 
どんなにキレイな言葉を並べて取り繕っても
やってることは不倫なんだよ
 
 
それがダメなの
 
 
このことで誰かが傷つくって
それはわかるよね?
 
 
傷つくのは奥さんだけじゃないよ
 
アユの周りや爺さんの周り
 
ママも傷つく
 
もちろんアユ自身も傷つくんだよ
 
 
 
今だって不倫だからこうやって悩んで
傷ついてるんじゃん?
 
 
 
アユが一瞬ハッとした顔をしました
 
 
 
 
もうこれ以上傷ついてほしくないし
アユが苦労するとわかっている以上
 
ママはアホ美のようには
応援できない
 
 
 
アユが好きだから
 
 
 
きっとアユだってわかってるんだよね
 
 
 
苦労することになることも全部
 
それでも爺さんと一緒に居たいんだよね
 
 
 
でも私はアユが好きだから
 
どうしてもやめてほしい
 
 
 
 
 
だから今のアユに何を言っても
聞かないってわかるけど
 
ママ勝手に言うね
 
 
 
爺さんはやめた方がいい
 
いま一時の感情で
全てを失うのはもったいない
 
 
今なら戻れるよ
 
 
 
 
アユはまた私に顔を埋めると
抱きついたまま離れませんでした
 
 
 
この時点で
まだ奥さんにはバレていない
 
戻るなら今なのです
 
 
 
もう起きてしまった過去は
変えられないけど
 
未来なら変えられる
 
 
 
アユにはちゃんと
幸せになってほしい
 
幸せな未来になってほしいの
 
 
  
 
 
 
そして爺さんが目を覚ましました
 
 
 
アユが私に抱き着いたまま
泣いているのを見て
 
動揺を隠せない様子でした
 
 
 
え?え?なに?どしたの?と
右往左往していました
 
 
 
 
何が起きたのかわからねえか!?
 
わかるわけねえよなぁ!?
 
おいジジイ
呑気に寝てる
場合じゃねえよ
 
 
 
 
私には何も言う権利ないけど
だけど言わせてもらいます
 
 
コイツは
あなたのせいで泣いてます
 
このままではきっと
奥さんも泣きます
 
 
 
あなたのその
浅はかな行動のせいで
 
この子の傷は
どんどん深くなるんです
 
 
 
アユはまだ若干25歳で
これからだってのに
 
 
アユの親が承諾してくれた⁉
だからこれでいいと⁉
 
世間にどう見られても平気⁉
 
本当にそうですか⁉
 
あなた施設長なんですよね⁉
 
そんな立場の人が
常識を逸脱していることに
 
気が付かないんですか⁉
 
いつまでこんないい加減なこと
してるつもりなんですか⁉
 
 
 
 
to be continued