『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ。』
隣のはげたおっさんが、
朝っぱらから携帯でエロ動画サイトを見ている。
その行動が果たして社会的に良いのか悪いのか
頭の悪いわたしには判断できないけれど
とりあえずその勇気と度胸に乾杯。
そしてこのはげの家族に激しく同情。
でもさ。
ひとつ間違いないのは、
彼が本能の赴くままに
欲望に貪欲に生きているということだね。
それってそんなに悪いことなのかな。
だれかを傷つける欲って
罪なのかな。
人生、
いろんなことを間違えて、
踏みにじって、読み誤って
それでも生きていかなければならないじゃない。
ゆらゆらと。
ふわふわと。
いろいろなことを考えて
意味のない場所を踏み潰して
わたしはここまで歩いてきたけれど
踏み潰した花も
蹴散らした芝生も
鳴らした鼻唄もすべて。
すべてを抱いて
わたしは歩いてく。
きっとみんな
ぜんぶをだいじには
できないから。
満月の夜に
雲に隠れてなお 光を放つ
月に照らされて
おでんを頬張りながら心に決めたのは
わたしはわたしに 正直に生きる
ということ。
わたしはわたしの大切な人たちが
今日も幸せであってほしい
だけど。
わたしがこの胸に
いつも思い描くしあわせは
今も昔も
ただひとつなの。
あ。エロ動画を見ている事実をわたしに知られたおっさんが
わざとこっちに見えるように
ニュースが映し出された画面を向けてくる。
いーって。いーって。