前回のコラート国際パラ陸上では義足アスリートはタイ・日本のみでしたが、今回はタイ・日本にラオス・カンボジアが加わり、今後もアジアの義足アスリートが増えたらと思っている沖野です。
そこで、備忘録的に沖野の独断と偏見で諸外国のスポーツ義足に関して思った事を書き綴ってみようかと思います。
まず、ラオスのスポーツ用片下腿義足(膝下義足)です。
左から沖野、池田樹生選手、Loza(ローサ)選手、ラオス監督のカムラさん、視覚障害のKen(ケン)選手、写真を撮ってくれたコーチの羽根(ハネ)さん。
ローサ選手は21歳のデザイナーで、日本のXiborg社Genesisを履いています。
池田選手はXiborg社ν(ニュー)を履いています。
ローサ選手は断端(足の切断部)に断端袋(綿製のくつ下)を履き、その上からウレタン製のソフトインサート(筒状)を履き(写真左)、義足のソケットの中へ入れます。
このままでは義足が脱げてしまうので、ベルトを膝の上で締めます。
この方法は昔からある義足の履き方なのですが、現在の日本ではあまり見かけません。
特にスポーツをする際は断端に加わる衝撃が大きいため、ソフトインサートの代わりにシリコンライナー(シリコン製)を履く選手が多数です。
また、ローサのソケットはアクリル樹脂製ではなく、プラスチック製です。
ソケット後面にプラスチックを張り合わせて削った跡が見てとれます。
この方法は日本では見たことがないですが、後述するカンボジアの選手もソケットはプラスチック製でした。
プラスチックの厚みは5mm程あり、意外と強固ですが、重量があります。
タイや日本の選手はアクリル樹脂製で、プラスチック製よりも強度があり軽量ですが、作業手順が少し多いのとコストもかかりますが、パラリンピックに出場する選手だけでなく、日本の一般ユーザーも殆どアクリル樹脂製のソケットを使用しています。
ローサ選手は昨年末から練習を開始して今回が初のレースでした。
走行の動きを見てもまだまだブレードを撓ませる(使いこなす)ことができていませんが、これは本人の技術的な未熟さもありますが、ソケットとブレードの位置関係にも大きく影響します。
アライメント調整(角度調整)は非常に重要で、どのような走り方をするのか、どのタイミングでブレードのどの辺りに体重をのせるのかなどを選手や監督・コーチと話をしながら調整を行っていきます。
今までの経緯を知らない沖野が深く介入するのもいかがなものかと思いましたが、コーチの羽根さんとは付き合いが古く(羽根さんがパラ陸上の選手時代は上肢装具を製作)、ローサ選手も走りづらいそうにしていたので、選手・コーチ・監督の了承を得てアライメント調整をさせていただきました。
義肢装具士がいなくてもスタッフや選手自身でアライメント調整を行えるよう、調整の方法・原理も一緒にお伝えしました。
ちなみに、赤いシャツが羽根さんです。
このタイプのコネクタはアライメント調整ができるので、スポーツ義足製作後も調整ができて個人的には好きな製作方法です。
大会前日ではありましたが何度か調節させていただき、本人の主観だけでなくコーチ陣が客観的に見ても走行の動きが良くなったので、これで大会に挑みました。
100mの結果は16秒08(−0.2m)でした。
沖野としては、フライングがなく、転倒もなく走り切れて安堵しました。
スパイクはFBTという日本では殆ど馴染みがないメーカー製で、プレートはフニャフニャでした。
ローサの今後の大会出場は未定ですが、また来年のコラート国際でお会いできればと思います。
次回のランニング教室は埼玉県戸田市の「戸田市スポーツセンター」にて2月18日(日)13時00分から開催します。
https://www.toda-spc.or.jp/access/index.html
特に施設の受付は必要なく、駐車場や利用料も無料となっています。
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(有)アイムス 東京営業所
義肢装具士 沖野敦郎
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