(1)「球団そのものを持ちたい」
2021年9月13日10:54 Asagei+
「勝負への執着心を抑える態度に、わが身を反省した」
インターネット検索サービス会社「ヤフー」を買収したものの、
巨大通信企業が行く手を阻む。効果的にブランド力を高めるための次の一手。
それが大好きな野球に関わる「プロ球団買収戦略」だった。
息詰まる買収劇の中で出会った「世界の王」から得たものは──。
2004年10月18日、孫正義ソフトバンク社長は、記者会見にのぞんだ。
プロ野球・福岡ダイエーホークスの買収に乗り出し、来季からの参入を目指す
考えを明らかにした。「地元福岡で絶大な支持を受けている球団であり、
引き続き、福岡に球団の本拠地を置きたい」
孫の会見によれば、ダイエーホークス買収は2年前からダイエー側と
水面下で交渉してきたという。 さらに、孫は語った。
「数十億円の球団赤字は、決して大きな数字ではない。
企業の認知度やイメージアップなど、総合的には経営面のプラスになる」
巨大なNTTグループなどに対抗してブロードバンド事業を進めていくには、
知名度とブランド力の向上が欠かせない。球団を買収できれば、グループの
知名度を飛躍的に向上でき、中核のブロードバンド事業の強化につながる。
球団保有のブランド効果で年間100億円以上のコストダウンにもつながる。
孫は、10年ほど前からプロ野球球団所有をぼんやりと思い描いていた。
それが方針としてはっきりとしたのは、03年3月のことであった。ソフトバンクは、神戸のオリックス・ブルーウェーブのホーム球場「グリーンスタジアム神戸」の
ネーミング・ライツ(命名権)を獲得した。「ヤフーBBスタジアム」と名付けた。
孫は、その時思った。
〈 スタジアムに名前をつけるのではなく、球団そのものを持ちたい 〉
さっそく業界関係者、ダイエー関係者を通じて、ダイエーには球団を売る意思が
あるかと非公式に打診した。だが、その意思はないとの答えが返ってきた。が、孫はあきらめなかった。買収できるタイミングを虎視眈々と待ち続けてきたのであった。ソフトバンクにとっては、またとない機会が訪れたのである。
本音をいえば、ソフトバンクとしては、せめてADSL事業が黒字となってから、
ダイエーホークスを買収したかった。だが、もしも産業再生機構にそのまま吸収されてしまっては、買収するのが難しくなる。急遽、買収の意思を伝えることになった。
幹部の笠井和彦は、さっそくソフトバンクを代表して産業再生機構へと出かけた。
孫が直接出かけていけば、いろいろと騒ぎになることは目に見えている。
笠井は、産業再生機構社長の斉藤惇に言った。
「もし球団を手放す場合には、我々は買収に興味を持っています、
とダイエー首脳にお伝えください。さらには、産業再生機構にも
バックアップしていただけるようにお願いします」
10月18日、孫は福岡入りする。ところがその朝、驚くべき記事が躍った。
「ソフトバンク、プロ野球のダイエーホークス買収に名乗り、来季参入目指す」
朝日新聞がすっぱ抜いたのである。
その午前中、福岡市に乗り込んだ孫は、記者会見を開いた。
福岡ダイエーホークスの買収に乗り出すことを発表した。
孫は語った。
「私は九州出身。会社の創業の地も福岡。球団を所有するなら福岡における
ホークス1本に絞り、強い関心を持っていた。2002年から水面下で打診していた」
新球団の設立にむけて躍起となっている楽天、ライブドアに触発されたわけでは
ないことを強調した。さらに、本拠は引き続き福岡に置き、監督や選手も継承した
形で、来季参入を目指すという。
しかも、「少年時代、3番を打ち、三塁を守っていた」と野球経験まで明かした。
(2)「ドリームホークス」も検討 2012年9月18日10:54 Asagei+
孫は、11月26日、監督の王貞治と会った。幼いころから野球好きだった孫は、
当然、世界のホームラン王である王貞治に憧れを抱いていた。
買収した後も、王に監督を続けてほしいと要請した。
王も、それまで孫とは面識はなかったが、孫正義という凄い経営者が
いるということは認識していた。
笠井から見ると、生きている世界は異なっていても、
互いに同じ勝負師としての嗅覚が、相手の匂いを嗅ぎ取ったに違いない。
二人は、はじめのうちから息が合った。
その年、プロ野球パシフィック・リーグでは、球団の再編成が行われた。
オリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズが合併し、オリックス・バファローズとなった。その一方で、オリックスの球団枠に入らなかったオリックスと
近鉄の選手を中心として、東北楽天イーグルスが結成された。
そのこともあって、ダイエーホークスを買収したソフトバンクとしても、必ずしも
南海ホークス時代からの「ホークス」の球団名を継承しない選択肢もあった。
しかし、孫としては、まったく名前を変えてしまうことで、「ホークス」の名に
愛着を持つプロ野球ファンを敵に回したくはなかった。同じ「ホークス」でも
「ドリームホークス」のように変更を加えたほうが、ファンに夢を与えられるのではないか、といった意見も出た。結論は、ぎりぎりまで先送りになった。
球団名は、発表予定日の1週間前になっても決まらなかった。
最終的には、やはり「ホークス」がもっとも適切だろうとの結論に達した。
孫は、記者会見で、事業の見通しについての質問に、強気にこう答えた。
「現在の球団売上高は年間170億円で年間10億円程度の赤字だが、売り上げを
1割上げれば、収支は均衡する。ただ、そのレベルには終わらせず、経費を増やして
世界一を目指すチームにしたい。インターネットを活用することによって、
2割、3割の売り上げ増を目指すのは、そんなに無茶なターゲットではない。
10億、20億、あるいは30億という程度の差(赤字)は十分まかなえる」
新球団名は、福岡ソフトバンクホークス、球団のロゴマークは、黄色い二本線と
黒字のSoftBankを合わせたソフトバンクの新しいロゴマークに、
従来のキャラクター、ハリーホークに一部手を加えて組み合わせた。
新球団の初代監督として会見に臨んだ王貞治は、孫社長とがっちり握手を交わした。
「今日という日を、本当に首を長くして待っていた。
うれしいというより正直、ほっとした」と安堵の表情を見せた。
ダイエー球団では身売り話が繰り返されてきただけに、
「これで胸を張って歩ける」と野球に専念できることを素直に喜び、
「来年は必ず日本一という目標を達成したい」と誓った。
「敵を作る雰囲気がない…」
孫によると、王貞治は、まさに人格者というにふさわしい。
王は、勝負に徹してきた勝負師である。しかし、前向きに勝負をして敗れても、
「王さんなら仕方ない」と敗者に思わせる。
それだけの包容力と、相手への気配りがある。
孫が小学生だった頃、王は、よく敬遠されていた。
孫は、子供心に敬遠したバッテリーを憎んだ。
〈 あのピッチャーやキャッチャーは、堂々と勝負せずに卑怯だ 〉
ホームラン王や三冠王のタイトルがかかっている終盤戦となると、一打席一打席の
重みが違ってくる。内心では、「記録のかかった打席をどうしてくれるんだ」と
言いたいこともあったに違いない。それでも王は、何事もなかったかのように
黙々と一塁に向かった。
日々ビジネスで勝負を賭けている孫は、勝負への執着心が前面に出すぎることも
ある。そのあまり、「あいつだけは許せない」と孫を敵視する相手も作ってしまう。敬遠されても淡々としていた王の凄さが、今になってわかる。
だからこそ、孫自身、王と会った夜は、自分のこれまでの姿勢を振り返り、
反省させられることがあるという。
04年11月26日、王貞治は、オーナーであるソフトバンク社長の孫正義と
初めて会った日のことをこう述懐する。
王は、それまでも、ことあるごとに話題となる孫のことは知っていた。
王は孫から、アメリカ企業との買収交渉について話を聞いていたという。
交渉の場では、最初はどちらも、自分の欲しいものを「100%もらいたい」と
主張することから始まる。それを譲り合い、50対50、55対45と詰めていく。
孫によると、日本人は、交渉力がないという。相手が少しでも強く押していくと、「もう30でいいや」と最初から譲ってしまうという。
その話に、王は納得した。
それとともに、小柄な体を張って海外の厳しいビジネス世界の修羅場を
生き抜いてきた孫をすばらしいと思った。その一方で、意外な思いも抱いた。
〈 ずいぶん得な人だな。敵を作る雰囲気が全くない 〉
若い時から起業して厳しい世界で揉まれてきた経営者には、癖があったり、
人間関係でも反りが合わない人物もいたりする。敵を作りやすい大物もいる。
しかし、孫は、にこやかで、王がこれまで受けたことのないような細やかな心配りもしてくれる。食事の時でも、「お好きなものをご自由に」と勧めてくれる。それは、王が年輩者なのでそうしてくれているのかなと思っていたが、そうではない。
誰に対しても、同じように心を配る。
ビジネスで成功している、していないにかかわらず、人間的な魅力に溢れていた。
(3)「思い切りやってください」2021年9月19日10:54 Asagei+
王は、半世紀におよぶ野球人生で、さまざまな日本のオーナーを見てきた。
いくらオーナーになったといっても、野球経験がないばかりでなく、
英語で言うところの「ラブ・ベースボール」の「ラブ」がない。
そもそも、野球にはまったく興味のないオーナーがほとんどである。
そのような中で、野球経験もあり、それだけ野球に興味を持っている孫に
チームを引き受けてもらえるのは、王にとって喜ばしいことであった。
自分の故郷でもある九州への思いも強く、福岡の財界、青年会議所、ファンなどの声も十分に汲み取ってくれた。「ホークス」の球団名を残し、応援歌も「ダイエー
ホークス」の歌詞を「ソフトバンクホークス」に変えるといったことで継承した。
おそらく孫ほどの資金力があれば、球団名から何から、自分の思うように
したいに違いない。しかし、孫は周りの声を受け入れる寛大さも持ち合わせていた。
その上、現場に関することは、すべて王に一任してくれた。
「とにかく、野球のことはお任せしますから、思い切ってやってください」
そうは言っても、なかなか現実にはそうはいかないこともある。
金も出すが口も出す、口は出してもお金は出さないという経営者は数多い。
ところが、孫は、有言実行で、すべて王に任せてくれた。
その意味では、ダイエーホークスのオーナーであった中内功も同じであった。
フィリピン戦線の死線を生き残り、敗戦直後の神戸の闇市から一代で巨大流通
グループを築いた中内と、貧しさと差別の苦境からのし上がった孫は、
そのあたりの感覚は似ていたのかもしれない。
孫が、王に言ったのはただひとつ。「世界一の球団にしてください」
その言葉は、王が現役時代にオーナーだった正力松太郎が、「強くあれ、
紳士であれ」の言葉とともに繰り返し話していたものと同じであった。
「いずれ、アメリカと決戦できるチームになれ」正力はそう言っていた。
しかし王は、どうしても日本一のことばかり考えがちであった。
孫に「世界一」と言われた時には、改めて感じた。
〈 我々はまだまだ、小さいことを言っていたな。
もう一度、強い思いを抱いて戦っていかないといけない 〉
孫は、球団を買収したことで、のちに携帯電話会社を持った時、
より宣伝効果を発揮することになる。
「ホークス」が最高益 13年2月期、ドーム買収が寄与
プロ野球球団「福岡ソフトバンクホークス」の2013年2月期の営業利益が、前の期比
2倍超の58億円だったことが17日分かった。ソフトバンクが球団運営を始めた06年2月期以降で最高額。昨年3月に本拠地の福岡ヤフージャパンドーム(現・福岡ヤフオクドーム)を買収し、年間約50億円のドーム使用料の支出がなくなったのが寄与した。
ソフトバンク子会社で球団を保有する福岡ソフトバンクホークス(福岡市、笠井和彦社長)と、ドーム運営などを手掛ける福岡ソフトバンクホークスマーケティング(同、同)の業績を合算した。
ドームはシンガポール政府投資公社(GIC)傘下の特別目的会社(SPC)が
保有していたが、球団との一体運営による集客力向上を目的にソフトバンク側が
870億円で買収した。年間約30億円のコスト削減につながったとみられる。
売上高も約1%増の270億円だった。主催した72試合で観客動員数が
約244万人と前の期より7%増えたほか、ソフトバンク本体からを除く
広告収入も前年を上回ったという。
ソフトバンクホークス「やってよかった」--孫氏が明かす、球団参入のメリット 坂本純子 (編集部)2016年03月11日 12時43分
予定では、12月6日にNPBによるソフトバンクに対するヒアリングを実施。
ソフトバンクとジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグは
3月10日、ソフトバンクが「B.LEAGUE(Bリーグ)トップパートナー」に
決定したと発表した。
今回の契約により、ソフトバンクは独占的に「有料放送」と「インターネット
放送」を権利を獲得。今後、3つのリーグのうち、B1とB2はスマートフォンを
通じて開幕の試合からすべての試合をライブ配信する方針だ。
なぜソフトバンクはメインスポンサーになることを決めたのか。ソフトバンクの
企業理念である「情報革命で人々を幸せに」を軸に、ITの力で一人でも多くの人に
スポーツの喜びや感動を伝えていきたいと説明する。スポーツと企業の関係とは
どんなものか。2004年に発表したプロ野球参入から約12年、今の思いを語った。
プロ野球参入の2つのメリット
ソフトバンクが、当時の福岡ダイエーホークスを買収してプロ野球に参入を表明
したのは2004年のことだ。球団の運営は年間数十億円の赤字が出ると言われていた。ソフトバンクは、Yahoo! BBの新規顧客獲得費に年間1000億円をかけており、
球団を保有することで認知度が上がれば「十分まかなえる範囲」として、
孫氏が生まれ育った九州、ソフトバンクを創業した地にある
福岡ダイエーホークスの保有にこだわった。
孫氏は当時を振り返り、「取締役会はほぼ全員反対だった。
強引に押し切る形で突入したが、やってよかった」と明かした。
結果としてどんなメリットがあったのか。1つはソフトバンクのマーケットシェア
向上につながったこと。2つ目は過去の歴史から一転し、球団運営の黒字化と、それによる選手の育成強化といったポジティブスパイラルにもって行けたことだという。
ソフトバンクは2006年にボーダフォン日本法人を買収後、東京ではそれなりの
マーケットシェアを取り始めたが、地方におけるシェアは低いままだったという。
ところが、球団に参入し、福岡ソフトバンクホークスとしてスタートした後に
全国でシェアが上がりはじめ、とりわけ本拠地である福岡は向上したと語る。
「九州だけで、利益に換算すると毎年200億から300億円。特に福岡を中心にシェアを押し上げた。これはホークス効果。テレビの放送によるブランドの認知度は、
露出度を数字に換算したら年間400~500億円ぐらいの効果がある」(孫氏)
孫氏によれば、パ・リーグが始まって以来70年あまり、球団は全チーム
毎年すべて赤字で、年間で黒字だった時代はなかったという。
「ソフトバンクホークスは、最初の数年間こそ赤字だったが、毎年数十億円の利益を出している。(通常は赤字分を)所有企業の広告代として補填するが、ソフトバンク本体からの広告による補填金なしで、球団そのものの運営で黒字が出ている」と
説明した。
「ホークスは3軍まであり、ドラフトから漏れたところまで、自ら選手を育成して
いる。多額のスカウト料ばかりで成り立っているわけではない。出た黒字は、選手や監督、皆さんに還元しようとしている」と例を挙げ、「企業とスポーツの在り方は、単に広告効果だけではない。プロ球団が自らの運営の在り方をレベルアップすることで、ポジティブスパイラルにできるとホークスを運営した結果感じた」と語った。
売られて幸せな企業ソフトバンクホークス、年収1.5倍も
By 広田 望 日経ビジネス
M&A(合併・買収)と聞くとネガティブなイメージがつきまとう。日経ビジネス
5月13日号「売られた社員 20の運命 シャープ、東芝、タカタにいた人の今」では、
M&Aの後に社員を待ち受ける運命を研究した。
企業買収によって苦労する社員もいるが、中には買収を機に社員が幸せになれる
こともある。その象徴的な事例が、ソフトバンクによる球団買収ではないだろうか。福岡ソフトバンクホークスの吉武隆取締役は「まあ、そうですね」と答える。
実感として球団が強くなり、球団経営や関連事業の企画・営業がしやすくなった。
会社がよくなり、社員のやりがいも増したと断言できるという。
ホークスが福岡を拠点としてから今年で30年目。
球場周辺はファンや買い物客でにぎわう
ソフトバンクが球団を買収に名乗りを上げたのは2004年。「オーナー企業の
業績悪化などで先行きが不透明になっていた時に買収の発表を聞いた。
社員にとっては待望の知らせだった」。総務部長の深町俊宏氏もこう話す。
2人はダイエー資本時代から球団・球場に関連する企画・営業に関わってきた。
当時、球団オーナーだった小売り大手のダイエーは業績が悪化し、
産業再生機構からの支援を受ける状態だった。球団関係者の間では
「チーム名は産業再生機構ホークスになるのか?」といった冗談が半ば真剣味を
帯びて噂されるほど、社員は不安がっていたという。
球団経営と並んで、球場・ホテル・商業施設の通称「3点セット」は
ダイエー資本の別企業が運営していた。こちらでも03年に業績悪化のため
投資会社の米コロニー・キャピタルに施設を売却。
当時、吉武氏と深町氏は、コロニーの関連会社で球場関連の仕事を続けていた。
球団がソフトバンクに買収された後の05年2月、後に球団と合併する
企画・営業会社の福岡ソフトバンクホークスマーケティングが設立。
2人は出向社員として働き、同年12月には正式に移籍した。
投資を惜しまぬ孫正義オーナー
オーナー企業が “中内ダイエー” から “孫ソフトバンク” に変わって、球団経営は
何が変わったのか。「やっぱり資金の使い方が全然違う」と吉武氏は話す。
例えば、ホークスは「鷹の祭典」というファンにユニフォームを配布するイベントを続けているが、過去には「ユニフォーム代を出してくれるスポンサーを見つけ
なければ企画が通らなかった」(吉武氏)。それがソフトバンク傘下に入ると、
「何も言われずにイベント開催が続けられた」(同)
自費興行も増えた。球場をお化け屋敷にする「お鷹の呪い」や音楽フェスティバル「MUSIC CIRCUS」などを開催。赤字になってしまうイベントもあったが、
ソフトバンクは挑戦したこと自体を評価してくれた。こうして地域が活気づくと、
球場を借りる企業も増え、球場利用料などの収入も増えていった。
法人顧客の幅も広がった。例えば球場に出す広告スポンサーは、親会社のつながりが影響しやすい。ダイエー時代にはスーパーに商品を出すような食品や日用品業界の関連会社が中心だったが、ソフトバンク傘下になってからは、通信機器などの
ハイテク産業、通信を使ったサービス業など幅広い業界が広告主に加わった。
06年にソフトバンクが英ボーダフォン・グループの日本法人を買収し、
携帯事業に参入すると、営業先は一層広がった。
そして営業活動を強烈に後押ししたのが、球団の強化だ。「チームが強くなることが一番ありがたい」(吉武氏)。ダイエー時代の初優勝を飾った99年以降、ソフトバンクが買収する2004年までホークスは毎年リーグ首位争いをする好成績だったが、
買収後は成績が低迷。08年には勝率4割5分、リーグ6位に沈んでいた。
しかし孫正義オーナーの「めざせ世界一!」という宣言通り、最新の練習設備を整え、三軍制を導入して選手層を厚くするなどの強化策が徐々に花開く。
10年に再びリーグ優勝を果たすと、以降はほぼ毎年優勝争いを繰り広げる常勝チームとなった。「お化けフォーク」で知られる投手の千賀滉大選手や、「甲斐キャノン」の異名を持つ強肩捕手の甲斐拓也選手など、三軍出身の選手もリーグ優勝に貢献。
選手育成でも他に類を見ない実績を出している。
ホークスのリーグ順位。けが人続出するも、今年も首位争いを繰り広げる
注:2019年は5月6日時点
球団が強くなると、それだけ放映権が高く売れる。試合に勝つほどに視聴率が
あがり、「その分、球場に出す広告もスポンサーが付きやすくなる」(吉武氏)。
球団関連のイベントは盛り上がり、ファンの来場数も毎年のように増えていった。
その熱気が伝搬するように、球場周辺には商業施設が充実しだした。
18年には大型商業施設「MARK IS 福岡ももち」が営業を開始。
20年には球場に隣接する球団の自社ビルが完成し、ドームと連携して
野球だけにとどまらないエンターテイメント施設として事業展開する計画だ。
ソフトバンク傘下になって社員の給料も上がった。
元々、野球事業の企画・営業をしていた会社の主業はホテル運営。社員の給与水準も福岡県のホテル従業員の水準だった。それがソフトバンクグループ基準の給料になり、昇給の制度もかわった。評価の仕方は大きく変わらないが、「100点満点の減点方式から、働き次第で150点や200点といった評価も得られる加点方式になった」(深町氏)。チームが優勝した時の特別ボーナスなども含めれば、
ダイエー時代に比べて「年収が1.5倍以上になった社員もいる」(同)という。
福岡ソフトバンクホークスの球団経営やマーケティング事業は、人材や働き方と
いった面では買収の前後で特に変化があったわけではない。コロニー・キャピタル
傘下の頃は経営改善のために様々な制約があったが、ソフトバンク傘下になって
からは「自主性にまかせてくれている」(吉武氏)。
それでも、社内の雰囲気は「以前とは完全に別物」(深町氏)だという。
ソフトバンク入りで戸惑ったことをあえて挙げると「急に会議で横文字が増えた
こと」(吉武氏)。ソフトバンググループの社員と会議をするたびに、今まで使ったことがないような言葉が飛び交う。最初は「コンサバってどういう意味だ?」
「アグレッシブなプランって、つまりどういうこと?」「コンセンサス……。
意味は分かるが、なぜ横文字で言う?」などと戸惑っていた。が、そんな
“横文字会議” にもすぐに慣れたという。
ファンにも伝わる挑戦の姿勢
そんな変化をファンも感じ取っている。北九州市から来ているという50代の女性ファンは、「球団の名前が変わったころから、設備がすごくきれいになった」と語る。20年以上、ホークスを応援しにドームに通っているという。
以前は「ドームの座席にホコリが積もっていて、『こんなところから見るのか』と
思ったこともあった」が、最近は「球場もきれいになって、商業施設も増えた。昔に比べると、うんと活気がある」という。ドーム買収もよい成果を生み出たようだ。
ソフトバンクは12年、コロニー・キャピタルから球場を買っていたシンガポール
政府投資公社から約870億円で球場を買収。年間約50億円かかっていたドーム利用料がなくなり、設備維持費を考慮してもコスト削減になった。また、現状復帰義務がなくなったことで設備の改修をしやすくなった。
球場を買収したことで改修がしやすくなった。以前に比べると設備が新しくなり、広告が増えた。例えば、応援席のシートの色を変えて命名権を売った。観客は
「コカ・コーラシートを1つ」といったように観戦チケットを購入するわけだ。
ほかにも客席の外周エリアをチームカラーの黒と白でリニューアルした。
ポスターで埋め尽くされていた掲示板を撤去し、取り付けた液晶ディスプレーで
映像広告を流したりした。シーズン外には映像に切り替えるなど、ドーム利用
イベントの誘致をしやすくなったという。
「最近はシーズンのたびに球場のどこかが新しくなっている」と、
ソフトバンク傘下になってからファンになったという30代の男性は笑う。
チーム成績がよくなり、客席が満員になることも珍しくない。ドームが自社所有物になったことで、最近になって一部施設を撤去して座席数を増やしたりもした。
センタースクリーン横には大型モニターを設置した。広告看板だったころの
3割ほどの費用で5つの広告映像を流し、収入を1.5倍にするといった施策もできた。
球場買収で、ますます企画・営業の担当者ができることが広がった。
球場が活気付くと、併設する飲食店などの誘致もしやすくなった。英国風パブ「HUB」を運営するハブは、初の九州進出先をこのドームに決めた。野球観戦を
しながらお酒が楽しめる特別席も用意し、オフシーズンも営業をする計画だ。
もはやホークスとドームは、街の中心になったといっていい。
平成で最も売られて良かった企業。それは福岡ソフトバンクホークスかもしれない。
日経ビジネスの5月13日号特集「売られた社員 20の運命 シャープ、東芝、タカタにいた人の今」では、多くの売られた会社を取材し、社員の運命を左右する
M&Aの実態を追った。
2004年10月18日、孫は福岡入りする朝、驚くべき記事が躍った。
「ソフトバンク、プロ野球のダイエーホークス買収に名乗り、来季参入目指す」
朝日新聞にすっぱ抜かれたのは、あの母親がリークしたからだと思います
ソフトバンクは、Yahoo! BBの新規顧客獲得費に年間1000億円をかけていたから、
球団を保有することで認知度が上がれば「十分まかなえる範囲」としてのは、
分かります。無料で機器を配っていた費用。会社の宣伝費と考えると安いかも。
球団買収後、名前をいろんな人に知られて顧客も増えて赤字も減り、ここから
ソフトバンクは大きくなったように思います
ソフトバンクは12年、コロニー・キャピタルから球場を買っていたシンガポール政府投資公社から約870億円で球場を買収。年間約50億円かかっていたドーム利用料。
ダイエー資本の別企業が運営していたが、03年に業績悪化のため投資会社の
米コロニー・キャピタルに施設を売却。
孫さんは、2年前から球団を買収したいと打診していたのに、ダイエー側が売らないと
考えていた1年後に球場の施設を売却し、その後シンガポール公社に高く売却した。
最後まで球団を手放したくなかったダイエーは、タイミングを逃した
スムーズに行けば、外資を挟まずにダイエーから買収すれば、球場などもっと安く
買えたはず、外資はドラマじゃないけどハゲタカと思ってしまう。
安く買って高く売る。外資なら同然の考え。でも日本は情が絡むから・・・
日本人は、交渉力がないと孫さんが言っていたので・・・。
外資に安く売ったのが分かりました。( 足元を見られた )
日本のことわざ「損して得取れ」じゃないですが最終的には得をしたソフトバンク
占い師の母から「情に流されない、かけない、ほだされない」と言われていたので。
そして、母も「タイミングが合ってくるから」と言っていたので、ソフトバンクも
買収するタイミングを虎視眈々と待っていたんですね
ソフトバンクに買収されて、従業員の給料や考え方が変わったのが分かりました。
やっぱり注文が多いより、自由にやらせてくれる方がお互いに良いのが分かります。そうなると企業も黒字になり、その儲けは、球場や選手、関連している人達に
使って貰え、やりがいが出て、利用する人やファンにとっても良い相乗効果になる
孫さんは、才能や行動力がありますが、後継者問題やエネルギー問題を
抱えているとTVで観ましたが、これから解決するでしょう。
これから孫さんは企業として、どんなアイデアを出して叶えていくのか楽しみです。
心身ともに健康で、お仕事頑張って下さい
人の思考を低下させないで。記憶障害も止めて。唇を痺れさせないで
人の後ろに憑かないで、憑依しないで、人をコントロールしないで
いつもありがとうございます。
最後までお読みいただきありがとうございました