開かれない扉のそのままを

 

ときに、人は

自分でも気づかぬうちに
ある記憶を封印する

それは、忘れたわけではない
消したわけでもない

ただ、思い出してしまうには深すぎた

 

名前のつけられない哀しみ
言葉にならなかった怒り
誰にもわかってもらえなかったさみしさ

そういったものを
どうしようもなく胸の奥に沈めて
そして、そのまま閉じた、

 

それは生きるための選択であり
壊れないための祈りだった



身体が、ふと気づいてしまう瞬間

誰かの声に
誰かのまなざしに
あるいは、何気ない沈黙に

ほんのわずか、風が吹く

 

閉ざされたはずの扉のまわりに
そっと、ふるえが走る

身体のどこかが
「なにかがある」と知ってしまう

でも、その瞬間

 

また、封印は閉じられる

中身は見ない
触れない
見なかったふりをする

 

けれど、それは
逃げではない
むしろ、もっと深い優しさ



開けないままで、生きていけるように

いくつもの時代を、いくつもの言葉の海を
すり抜けながら生きてきたひとたちのなかには

もう、その封印を開ける必要のない人がいる

それは、もう充分に
苦しみと引き換えに、
その人なりの輪郭を手に入れたということ

 

その輪郭は
見えないし
触れられないけれど

たしかに在る

 

「ここまで、生きてきた」
という、たったひとつの確かさとして



「そのままでいいよ」

愛してるでもなく
感謝してるでもなく
わかってるよでもない

ただ、「そのままでいいよ」

 

それだけが、ずっとずっと
言ってもらいたかった言葉だったのかもしれない

何かを成し遂げなくても
何かに変わらなくても
誰かの期待に応えなくても

 

この自分のままで、生きていいと
誰かに、たったひとりに
そう言ってもらいたかった

 

けれどその言葉は、
いつも届かず、いつも遠く
だからこそ
最後の最後、届く前に

静かに耳を塞ぐことを選んだ人もいる


それは、敗北ではなく、意志だった

人は「封印」と聞くと
なにか悲しいこと
癒されなかった過去
もしくは解決されるべき問題のように捉えがちだけど

ほんとうは、違うかもしれない

 

封印とは、
わかってて
見えてて
触れられる距離まで来たうえで
「あえて閉じた」ということ

誰にも見えないところで
自分自身のために
自分自身の手で
そっと蓋をした


それはもう、悲しみじゃない
逃げでもない
未熟でもない

意志だった
誇りだった
美しさだった



魂の判断としての「封印」

誰にも見せないまま
誰にも壊させないまま

それでも、自分の中では
しっかりと在り処を知っている

ふとした時に
風が吹くたびに
わずかに感じてしまうけれど

それでも
もう、開けない

それは冷たさじゃない
そのままにしておくことこそが、
自分という存在を、まるごと守る唯一の方法だった

 

それが「封印」
そしてそれは
ちょっと、かっこいい



何も語らず
誰にも説明せず
ただ、静かに生きるということ

その裏には
見えない封印がひとつ、またひとつ
きれいに重なっていることがある

 

でもそれは、
未解決の問題じゃない

むしろ、すべてを見て、知って、
「これ以上、触れなくていい」と
自分で決められたことの、証

 

だから
その封印は、解かなくていい
開かれなくていい
そのまま、封印されたままで

そして、ちょっとかっこいいまま





あたたかさも、哀しみも
ぜんぶ封印したまま

その人の人生は、完全だった

 
壊さなかったこと
触れずにいたこと
わからないふりを貫いたこと

そのすべてが
ひとつの「美しさ」だったのだと思う


それは、触れられずにいたことで
守られてきた輪郭の痕跡


その人が、そのままのかたちで

生きて、そして

そっと風になる






誰にも見せない静けさの中で

わたしはわたしを守った

そして、今日もちゃんと、生きている




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