きしいこぞ つまをみきわに ことのねの
とこにわきみを まつぞこいしき
こちら、一見して熱烈な恋文と分かる歌ですが、実は下から読んでも同じになる、回り歌となっています。
回り歌というのは、
カナサキイワク コノウタハ
カエコトナラヌ マワリウタ
ワレモミユキノ フネニアリ
カセハケシクテ ナミタツヲ
ウチカエサジト マワリウタヨム
なかきよの とおのねふりの みなめさめ
なみのりふねの おとのよきかな
トウタエバ カゼヤミフネハ
ココロヨク アワニツクナリ
ワカヒメノ ウタモミヤビヲ
カエサジト
カナサキ様が言うには、「回り歌には言葉を変えることも返すことも出来ない、つまり読み手の願いを拒否することの出来ない力があるのです。私自信も昔、航海中に嵐に襲われたとき、回り歌を詠んで海を鎮めたことがあります。あなたもこの歌を送られたからには決して断ることはできませんよ。」というわけです。
この熱烈且つ強かな歌の詠み手は上述の通りワカヒメ様です。流石カナサキ様に育てられた方と言う他ありません。
では受け取ったのはどなたでしょうか。
それはアチヒコ様というアマテル様に仕える男神様です。
アチヒコ様はイサナミ様の兄ヤソキネ様の長男ということで、ワカヒメ様の従兄弟に当たる方だそうです。
勅使として玉津宮を訪れたアチヒコ様にワカヒメ様が一目惚れして、募る恋心に思い兼ねて、送ったのが冒頭の回り歌でした。
もらったアチヒコ様はどうしたかと言うと、
オモエラク ハシカケナクテ
ムスブヤワ コレカエサント
カエラネバ コトノハナクテ
マチタマエ ノチカエサント
モチカエリ タカマニイタリ
モロニトフ
アマテル神の姉君から仲人もたてずに、いきなりプロポーズされたので、どうしていいかわからず、返歌も思い浮かばす、後で返すので待ってほしいと言って、高天原に持ち帰り、アマテル神や、育ての親カナサキ様等、御重鎮達に相談されたのです。
アチヒコ様の報告を聞いて、ざわつく高天原が想像できそうです
自分なら恋心はお偉いさん達に知れわたるわ、自作の恋文はあーだこーだと評価されるわで「ヤーメーテー(*/□\*)」ってなりそうですが、返事を待っている間のワカヒメ様の心境ってどんなだったのでしょうか。
もう想像するだけできゅんきゅんしますね
カナサキ様の回り歌の説明を受けて、アマテル様が発した勅は
カナサキガフネ ノリウケテ
メオトナルナリ ヤスカワノ
シタテルヒメト
「カナサキもこう言ってるし、彼の助け船に乗って夫婦になればいいんじゃね?」
そして結婚したお二人はヤスカワ(野洲川?)で新婚生活をすることになり、ワカヒメ様は下照姫の称え名を賜り、アチヒコ様はワカヒメ様が思い兼ねたお相手ということで、思兼神と呼ばれるようになりました。
めでたしめでたし
思兼神と言えば、
知恵の神とされ、天岩戸に引きこもった天照大御神に出てきてもらうための作戦を立案した神様として有名ですが、ワカヒメ様の旦那様だったんですねー。
と、ここまで前置きが長くなりましたが…(本当に)
玉津宮で運命の出会いを果たしたワカヒメ様と思兼様ですが、では、思兼様を祀る神社は和歌山にはないのかしらー
と和歌山に向かう電車の中でスマホをいじっていたらありました!
日前神宮(ひのくまじんぐう)です。
和歌山電鐵喜志川線沿いにございます。
喜志川線と言えば、喜志駅のたま駅長が有名ですね。今は代替わりしてにたま駅長が働いておられます。
また同路線の伊太祈曽駅にはよんたま駅長もおられます。
コロナの影響で今はガラス越しにしか会えませんが、猫好きな方は是非会いに行ってください!
そして喜志川線は全車両ラッピング車で、コンセプトもそれぞれ違うようです。常時4車種は運行しているようなので、一日乗車券で色んな電車に乗ってみるのもおすすめです
沿線沿いには寺社仏閣がたくさんあるのですが、中でも記紀神話にゆかりの深い
日前宮(にちぜんぐう)
竈山神社
伊太祁曽神社
は、西国三社巡りとして詣でる習わしが古くからあるそうです。
私はまず喜志駅でにたま駅長に挨拶をしてから、和歌山駅方面に戻る順路でめぐりました。
紀伊国一之宮でもある伊太祁曽神社は日本書紀によると須佐男命の子である五十猛命・大屋津比売命・都麻津比売命をお祀りする神社です。
五十猛命は、父神が高天原から持ってきた木の種を大八洲国(日本)に蒔くよう命じられ、妹姫達とともに全国に種を蒔き、最後に木の国(和歌山県)にお鎮まりになったとつたえられます。
敷地内には祇園神社もあり、須佐男の命もお祭りされていました。本殿横には蛭子社もありました。
御猿石や木の俣くぐりなどパワースポットも多くあって楽しめる神社です。
ただ、夏ごろは毛虫が多いので気を付けて…🐛
次に向かった竈山神社は竈山駅からちょっと距離がありました。次の電車に乗れるように急ぎ足で向かいます。
こちらは神武天皇の兄で、東方遠征中に敵軍の矢を受けて亡くなられた彦五瀬命の御陵がある竈山を守るように鎮座しています。
御陵があるということで、やはり静謐な空気に包まれていました。
そして日前宮です。
こちらも紀伊国一之宮。
紀伊国は一之宮が二つあるんですね。
どこも素晴らしい神社ですが、こちらはやはり別格と言う感じがしました。
境内奥は写真撮影ご遠慮くださいとのことだったので、撮影していないのですが、奥には二つの拝殿が並んで鎮座します。
ひとつが
日前神宮(ひのくまじんぐう)
祭神 日前大神
相殿 思兼命・石凝姥命
ひとつが
國懸神宮(くにかかすじんぐう)
祭神 國懸大神
相殿 玉祖命・明立天御影命・鈿女命
これら2つを総称して日前宮と呼ぶそうです。
由緒書きによると天岩戸隠れの際に思兼命の発案で製作された日像鏡と日矛鏡が後に紀伊国造営の折りに、神武天皇が遣わした天道根命によりそれぞれの神宮に奉られたとのことです。(多分)
ホツマツタエでは、
キシイクニ アヒノマエミヤ
タマツミヤ ツクレハヤスム
アヒミヤオ クニカケトナス
セオリツヒメとワカヒメ一行が稲穂虫を他所へと去らせた後、民は喜んで、天君の御用邸であった天日宮の前に天日前宮を作り、天照大神の正后として向かい立つセオリツヒメに、また玉津宮をワカヒメに建造し献上ました。
その後天日宮は高天原の勅使が全国に出張する際の拠点(クニカケ)として使われました。
とあり、アヒノマエミヤが日前神宮、元アヒミヤでクニカケとなったのが國懸神宮になったのではと言うことです。
オモイカネ様もキシイ邦に出張の祭はこちらの宮に滞在していたのかもしれません。
境内には市戎社として蛭子社も存在しました。
和歌山は蛭子と書いてエビスではなくわざわざふりがなふってヒルコと読ませる所が多い気がします。あくまでも個人の感想ですが。
さて大急ぎで三社回った後には、GOODLUCKCOFFEE和歌山黒田店さんで美味しいかき氷をいただきました!
氷が崩れて、あんまり上手に食べれませんでしたが美味しかったです
その後は夕暮れの和歌山城を見学して終了です。
ところで、オモイカネ様と言えば、私も一度は行ってみたい、天体観測の聖地、阿智村にある阿智神社が有名ですよね。
阿智はアチヒコのアチから来ているんでしょうか。阿智族との関係も気になりますし、この辺ももっと調べたいですね。
また阿智神社は倉敷にもあり美観地区の北側に堂々と鎮座しておられます。
主祭神は宗像三女神ですが、思兼命も祭神の一柱として合祀されていました。
阿智神社が鎮座する鶴形山には、古代の磐座が点在しており、やはり何かしら関わりがあるような気がしてきます。
岡山ではヤマトタケの痕跡を追ってみたかったのですが、大雨に見舞われほぼ何もできず
せめてと思ってフルーツパフェを食べに倉敷に行き、地図を見てたら「なんか神社がある、磐座もあるらしいし行ってみよー」という感じで、下調べもせずに訪れたのですが、結果としてお参り出来て良かったです。(そんなのばっかりだけど)
泊まったホテルの近くにも思兼神社があったようなので、岡山は実はアチヒコ様と縁の深い場所なのかもしれません。
出来ればもう一度天気の良い日にお参りしたいですね。
フルーツパフェも食べたいし