副題が「桃のパラダイス雛×呉春」。

 

 毎年恒例の遠山邸大広間のひな壇と共に、今年は美術館で、重要美術品・呉春「武陵桃源図巻」の公開もありました。

 まず附属美術館(今井兼次設計・1970年)に入り、この絵巻物一挙公開と、大きな享保雛をはじめとした人形たちを鑑賞。軸装のお雛様を描いた渡辺省亭の絵もありました。

 

 美術館に展示されている「次郎左衛門雛」という、折り紙で作ったような立ち雛。ここのものは江戸時代のものなのに金色も美しい、保存状態の良いものです。

 

 時代ごとに、布の人形「天児(あまがつ)」「這子(ほうこ)」、享保雛・次郎左衛門雛・古今雛・芥子雛、などがあります。

 

 他、張り子、土人形などの素朴な郷土玩具、絹糸細工の動物は、拠りを掛ける前の糸を手で植えて作る貴重なものですが、遠山邸の子どもたちのために、たくさん所蔵されていました。

 

 そして邸宅大広間へ。十畳の畳敷きの部屋いっぱいのおひな様。

 見事な寝殿飾り、普通の段飾りには余り見ない胡蝶の舞などの人形や精巧な雛道具たち、何度見に来ても見飽きることはありません。

 この豪壮な雛壇は、ここを建てた遠山元一氏の長女貞子さん(大正9年生)の初節句のお祝いのものです。

 

 思えば、3年前の今頃は未知の感染症に怯え、この後初夏まで美術館などはお休みしていました。

 今年は3年ぶりの地域のひな祭りを開催するところが多いようです。

 おひな様を愛でることができる状態がずっと続くといいと願っています。

 

※遠山元一=日興證券創始者(現在SMBC日興證券)。この地が生家で、母のために建てた近代数寄屋造りは、国指定重要文化材です。

 遠山元一氏の長男は音楽評論家の遠山一行氏、その甥が現在「スープストックTOKYO」の社長さんでもある遠山直道氏、という繋がりがあります。