古本市でこの分厚い文庫本を見たとき、「リーチ先生」?原田マハさんだから麻雀のことじゃないよね?と買ってきたら、戦前に来日し、民芸運動にも関わった「バーナード・リーチ」のことでした。

 

 プロローグは1954年、リーチが再び日本にやってくるところから始まりますが、すぐに彼が初来日した1909年へと遡り、横浜の食堂で働く「亀乃介」と、詩人高村光太郎との出会いとなっていました。

 

 この高村光太郎の家を訪ねてきたのが、バーナード・リーチ。光太郎がロンドン留学時代に知り合った日本好きの青年でした。

 英語ができる亀乃介はリーチの世話係となって、彼が学ぶ陶芸の助手もするようになり…。

 民芸運動の柳宗悦などとの関わりも丁寧に描かれ、戦況が厳しくなってリーチがロンドンに戻るときも、亀の助は同行します。

 その後、亀乃介の帰国時に「リーチ先生!」と別れを惜しむシーンでは、涙しました。

 

 美術をモチーフにした原田マハさんの作品は、どれもくっきりと脳裏に「絵」が浮かび、一気に読み終えました。「民芸」の濱田庄一、河合寛次郎、他に作家の名前も散見していて、楽しめました。