セザンヌとルノアール。印象派の画家として尤も有名な2人でしょうか。

 お互い親交があって、リスペクトし合って、同じ題材を扱った絵画を対にしての展示は、案外「相手に寄せた絵」も書いていたことがわかる、興味深いものでした。

 

 柔らかな色調、色味もただ美しく…一方は時に素っ気ない感じを受ける、写実的ではあるがどこか揺らぎを感じる…。前者がルノアール、後者がセザンヌでした。

 

 誰もが好きになる、ルノアールの代表作「ピアノを弾く少女たち」。今回観られるのは、オランジェリー美術館所蔵品ですが、この秋から国立西洋美術館で開催される「印象派展」には、同じ題材でオルセー美術館かお借りしたものが展示されるようです。

 

 調べたら同じような構図の絵は6枚有るそうで、完成作品→国家買い上げがオルセーの作品。背景まで丁寧に描き混まれています。

 でもこの日観たオランジェリー美術館の作品も、軽いタッチで、少女達は簡略化された背景から浮き上がるような、楽しげな作品です。

 

 今回音声ガイドは必聴。セザンヌ役/細谷佳正さん、ルノワール役/羽多野渉さん。

 最後に2人がお互いのことを語る、と言う趣向、もう…泣けました。音声ガイドは是非声優さんにやって欲しいと思っています。

 

 

☆2025年7月27日(日)ソワレ 彩の国さいたま芸術劇場

 

 少し前ですが、忘れないようにアップしておきます。

 

 とある童話作家(浦壁多恵)が語るお話。

 架空の2つの国=「強い国」「弱い国」があり、強い国は領土拡大(昔はこちらの領土だったと主張する地域)を求め、宣戦布告。軍隊を持たない「弱い国」はどうする?

 

 「強い国」の人気歌手メロリス(浦壁多恵=二役)は、「平和な星」を歌ったことで反戦とみなされ逮捕されてしまいますが、国王(菊池まさはる)の娘が彼女の大ファンで、釈放され、「弱い国」に亡命。

 

 「強い国」の王子は戦争に行くことを望みますが、王妃は行かせたくない…「弱い国」は軍隊がなくても戦争を回避するすべはないかと考え巡らせて…。

 これは、劇中劇=童話ということなどで、ハッピーエンドとなりました。メロリスも一緒に「平和な星」を歌います。

 

 メロリス役の浦壁多恵さん、さすがの歌唱力で、カリスマ歌手役は納得でした。

 

※ 実は「ミュージカル座」では同時並行で「ひめゆり」の稽古も行われていて、壁を隔ててこのハッピーな歌が聞こえてきて、「ひめゆり」キャストたちは、より平和を願う心境になっていたそうです(ひめゆりのプログラムより)。

 

 

 ミュージカル「ひめゆり」の1幕最後に「杉原さん」という優しげな青年が登場します。

 ヒロインが看護すると「ありがとう学生さん」と語りかけ、女学生の「どこから来たの」という問いには「すずらんの咲く根室」と答えています。

 

 元ひめゆり学徒の女性が、北海道の兵士から「生きて帰れたら君にすずらんを送ってあげる」と言ったけど、自力で動けないため南への撤退ができなかった(置き去りにされた)という、哀しい証言をされていました。

 沖縄育ちの女学生は、すずらんを見たことがありません。

 

 8月初旬、福井さんのコンサートのため北海道に泊まった際、NHK北海道ローカル「北海道兵、10805人の死」という番組をやっていて、釘付けになりました。

 北海道から出たこともない若者が、気候風土が全く違う沖縄戦に投入され、10805名が戦死。

 

 その中で「すずらんを送る」と言った兵士は誰だったのかを探す場面があり、陸軍南風原病院壕で、ひめゆり学徒の方が記憶した日に亡くなった方を、戦死者名簿から丹念に拾い上げていく。

 結論は、その兵士は浜頓別の方だろうということでした。親類縁者もほぼお亡くなりになっていて“確証”はないのですが。

 

 この番組、北海道にいなかったら観なかったかもしれない…戻ってからはPCでNHKプラスとして観ることが出来たので、気になった場面は繰り返して視聴しました。

 

 ミュージカルの歌詞=すずらんの咲く「根室、」ではなかったようですが、この花を観たことがないという女学生に「送ってあげる」、という心優しい青年の死が、痛ましくてなりませんでした。

 

※すずらんの花の写真がなかったので…。

ブーゲンビリアは5月に南風原病院壕に行ったときに、壕の近くに咲いていたものです。

☆2025年8月22日(金)ソワレ シアター1010

 

 毎年上演されている作品、私もほぼ毎回足を運び、今回で12回目です。

 今年のキャストは初見の方が多いです。

 きみ(社家あやの)、檜山上等兵(中谷優心)、滝軍曹(KENTARO)、上原婦長(彩乃かなみ)。

 

 今回は5月に沖縄の現地を訪れてから観る、ということで、よりリアルに感じたことは事実です。

 歌も台詞もほぼ覚えてしまっていても、毎回キャストは違うので飽きることはありません。

 

 女学生たちが劇中で合唱する清冽な歌声…あの真っ暗で湿気が強い「陸軍南風原病院壕」の中を思い出すと、胸が痛みました。

 

 ♪お国のために 役に立とう できることは小さくても…

 ♪遥かな希望の熱い思い胸に 私は旅立つ まだ見ぬ明日へ

 

 こんな歌詞を歌いながら陸軍病院壕での日々が始まりますが、ここから南への敗走、隠れたガマで歌われる「小鳥の歌」。

 ♪あの小鳥になれたら 空を飛んで逃げよう 広い青空は故郷へ続く

 

 劇中の歌はみんな美しい旋律です。

 「ひめゆり平和祈念館」で女学生たちの写真を観たことを思い出し、二度とこんなことがあってはいけないと強く思う、昨品でした。

 

 今まで見たキャストのことなど、過去の記事を貼っておきます。

 

(歌詞に関しては、聞き覚えで書いたもので、間違っていたらすみません)

☆2025年8月22日(金)マチネ よみうり大手町ホール

 

 副題は「アメリカと日本の架け橋、桂子・ハーン」。

 第二次世界大戦後、日本に進駐してきたアメリカ兵と結婚し、海を渡った女性たちは、「WAR BRIDE」=戦争花嫁と呼ばれています。

 

 この作品は横浜に生まれ、キャンプ座間で働いていた山田桂子(奈緒)と、アメリカ兵フランツ・ハーン(ウエンツ瑛士)が恋に落ち、互いに尊敬し合いながらアメリカで暮らし、子育てをし、日米の架け橋となった…桂子・ハーンさんの物語です。

 

 1925年、当時としては国際感覚が有る家庭に生まれ、香蘭女学校(現在の横浜雙葉)を卒業。外国人シスターもいる環境で英語を学んだことが、後の職業へと繋がる。

 

 渡米して子育てをする中で、長男を亡くしてしまうのが痛ましい。電話を掛けてきて、じゃあまた、と言ったきりになってしまった…「ジャージーボーイズ」にも、こんなシーンがあった事を思い出しました。

 

 そんな哀しいこともありましたが、結婚した時に「日本とアメリカの架け橋になる」と決意したことを生涯忘れず、姉妹都市提携に関わり、生け花や茶道を紹介、そしてすばらしいことに、“現在95歳でご健在”です。

 

 この1月、主演の奈緒さんがモデルとなった桂子ハーンさんに会いに行ったこともプログラムに載っていました。

 

 女学生から老齢までを演じた桂子役の奈緒さん、熱演でした。