漫画『チ。―地球の運動について―』に登場する少年ラファウは、その若さにも関わらず、強い信念を持ち、真理の探求に身を捧げた天才でした。
しかし、物語の中で彼は自ら命を絶つという悲劇的な結末を迎えます。
彼の早すぎる死は、読者の心に深い問いを残します。なぜ、彼はあのような選択をしたのでしょうか。
明恵上人という人
時代は遡り、鎌倉時代の日本。華厳宗の僧侶であった明恵上人は、詳細な夢日記『夢記』を残しました。
この人は、ちょっと変わった人で、自分の見た夢の日記をずっとつけ続けていた人なんですね。それが『夢記』です。
その中で、彼は13歳の時に「今は十三になりぬれば、年すでに老ひたり。死なむとする事も近づきぬ」と記しています。
この言葉は、幼いながらに人生の深淵を見つめ、老いと死を感じていた彼の内面を鮮やかに映し出しています。
ラファウと明恵上人の共通点
異なる時代、異なる文化に生きた二人ですが、彼らの魂には、どこか深く共鳴する響きがあるように感じられます。
ラファウの、真理を追い求める純粋すぎるほどの情熱は、周囲の理解を得られず、孤立感を深めていったのではないでしょうか。
彼の天才的な知性は、彼自身にとって大きな重荷となり、理想と現実のギャップに苦しんだのかもしれません。
河合隼雄の著書で、「子供というものは思春期の手前でそれなりの『完成』に達する」と指摘しています。
12、13歳頃に於いて、人間は子供なりに老成するものであり、明恵のこの言葉は子供としての完成を迎えた表現とし解釈されるのではないか。
まとめ
明恵上人の言葉と重ね合わせることで、時代を超えて、若くして深い精神性を持ち、生きることに苦悩した魂の存在が静かに示唆されます。
ラファウのとった選択と行動をみて、明恵上人の「今は十三になりぬれば、年すでに老ひたり。死なむとする事も近づきぬ」という言葉を思い出さずにはいられませんでした。