循環列車。

始発駅と終着駅が同じ駅、つまりいくつかの路線を経由してぐるりと一周して、また元の駅に戻って来る列車のことです。

国鉄時代にはそうした列車がいくつかありましたが、北海道には「旭川」「いぶり」という、2つの循環列車がありました。

どちらも準急列車としてスタートし、国鉄で準急という種別が廃止になった際に急行列車となりました。

 

1.「旭川」

その名の通り、旭川発旭川行きの列車で、宗谷本線、名寄本線、石北本線を経由しました。

昭和38(1963)年12月号の鉄道弘済会版北海道時刻表を見ますと、右回りの列車が旭川駅を6:20に出て13:24に旭川駅に戻り、左回りの列車は右回りの列車が旭川駅に戻った後、15:40に旭川駅を出て22:42に旭川駅に戻ります。

宗谷本線から名寄本線に入る名寄駅で進行方向が変わり、宗谷本線内の旭川駅〜名寄駅間では準急「礼文」(旭川〜稚内)と併結します。

なお宗谷本線と石北本線の分岐駅である新旭川駅には右回りの列車が旭川駅に戻る道中でのみ停車し、一度は通過した駅に7時間後に停車することになり、「準急『旭川』で旭川駅から新旭川駅まで行く」という縛りを仮に設けた場合、一つ隣の駅に行くだけのために7時間という所要時間と相応の料金が必要になりますが、もちろんそんな需要はあるはずもなく、また左回りの列車については新旭川駅を2回とも通過します。

昭和38年12月号の時点では石北本線内で右回りと左回りとで停車駅が異なり、右回りのみが停車する駅に上白滝駅、伊香牛駅、新旭川駅が、左回りのみが停車する駅に中愛別駅がありました。

「旭川」は昭和37(1962)年に新設、昭和41年に急行になりましたが、その2年後の昭和43年に廃止となりました。

全区間「本線」を走行しますが、いずれも現在でいう「地方交通線」にあたり、「幹線」を走る区間はありませんでした。

また名寄本線は特定地方交通線に指定されて廃線となったので、現在ではたとえばリバイバルのイベント列車のような形で再び走らせるということはできない列車です。

 

停車駅(▲は一部のみ停車) 昭和38(1963)年12月

手書きで申し訳ありません。石北本線内の停車駅が独特です。

 

 

 

2.「いぶり」

短命だった「旭川」に対して、昭和50年代まで残っていたため今でも認知度が高いのがこの「いぶり」です。

「旭川」は全区間「本線」を走行しましたが、「いぶり」は函館本線、千歳線、室蘭本線、胆振線の4路線を走行し、さらに各区間で多層建ての列車として複雑な運用がされていました。

このうち胆振線以外の区間は現在の「幹線」にあたりますが、胆振線は廃線となっているので、やはり現在では運転できない列車です。

札幌発札幌行きの列車で、「旭川」が旭川駅〜新旭川駅間を2回通るのに対し、「いぶり」は完全に一筆書きの経路でした。

ただし、函館本線と胆振線の接続駅である倶知安駅では進行方向が変わりますので、札幌駅に帰る頃には車両の向きが変わってしまっていることになります。

「旭川」と異なる点として他に、「いぶり」では途中で「いぶり」同士のすれ違いが見られたということが挙げられます。

昭和45年の時刻表を見ると胆振線内の京極駅で「いぶり」同士が交換していますが、昭和38年の時刻表では同じく胆振線内の六郷駅で運転停車をして交換しているようです。

昭和45年のダイヤでも「いぶり」は六郷駅に15秒の運転停車が設定されていましたが、これはタブレット閉塞だったためにその授受の必要性から停車していたものと思われます。

六郷駅は昭和46(1971)年10月に無人化され、交換設備も撤去されたとのことなので、隔世の感があります。

なお六郷駅はスイッチバックする倶知安駅の隣の駅で、倶知安駅を挟んで反対の駅である小沢駅でも岩内線の普通列車の増解結を行うために長時間停車があったので、小沢駅、倶知安駅、六郷駅と3駅連続で運転関係の要因で足止めを喰うことになり、所要時間の増加の一因となってしまっています。

停車駅は末期には右回りと左回りとで揃えられていましたが、昭和38年の時点では右回りのみの停車駅に恵庭駅、白老駅が、左回りのみの停車駅に仁木駅、島松駅がありました。

「いぶり」も準急から急行へ格上げされ、昭和55(1980)年に廃止となったそうです。

 

停車駅(▲は一部のみ停車) 昭和38(1963)年12月

上図の頃は最小限の停車駅という感じですが、昭和50年代になると胆振線内では主要駅以外にも停まるようになります。当時は札幌から千歳までちょうど1時間を要しており、時代を感じます。

 

 

参考:1963年12月号北海道時刻表(鉄道弘済会刊)より引用した両列車の停車駅と時刻表

「旭川」

 

「いぶり」

※札幌→東室蘭:「第2ちとせ」室蘭行き(1等車連結)

 倶知安→札幌:「ニセコ」蘭越発

 小沢→札幌:岩内発普通列車

 を併結

※札幌→小沢:岩内行き普通列車

 札幌→倶知安:「ニセコ」目名行き

 伊達紋別→札幌:「第6ちとせ」洞爺発(一部東室蘭より普通室蘭行き)

 東室蘭→札幌:「第6ちとせ」室蘭発(1等車連結)

 を併結

 

 

今回もここまでお付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。