投資コラム チャートを読み解く「日本国債」 後編 | 外科系集中治療医による新NISAの記録

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新NISAとともに成長するpompoko2525の愛と勇気と成長の物語

連休中日。いかがお過ごしだろうか?
心なしかいつもよりどこも人が多い。
インフレで家計が苦しい...。そんなこと言っていても、お金を持っているひとは持っている。
そんな社会が垣間見える。
 
といったところで休日コラム。「日本国債」の続き。
 
 
世界はインフレに傾く
このブログで何度もでてきている言葉。
世界は緩やかにインフレに向かう、
だから、コンビニのおにぎりの値段も、遊園地の入園料も基本的には値上がりし続ける。
ほとんど値段が変わらなかったこの20年、30年が異常だっただけで、それが当たり前のことなのである。
 
逆に言えば、それは貨幣の価値が下がり続けるということ
今の1万円と、10年後の1万円であったら、10年後の1万円の方が価値が低くなっている可能性が高い。
 
皆さんの持っている日本国債。これも同じ理屈になる。
今100万円で購入し、10年後の2034年に100万円を返されても、その価値は下がっているだろう。
だから利息という形でそれを補ってやらないと誰もお金を貸してくれない。
15年後、20年後も同じ。
期間が長くなればなるほど、価値が下がる可能性は大きくなる。
だから期間の長さに応じて利率も高くなる。そうじゃないと誰も貸してくれなくなるから。
 

国債償還までの残存期間を横軸に、利回りを縦軸に、プロットすると上記のような曲線が描ける。
これを「イールドカーブ」という。
基本的には右肩上がりのゆるやかなカーブを描く。
 

ところで金利には大きく、「短期金利」と「長期金利」が存在する。

 

短期金利」とは期間1年未満のお金の貸し借りに使われる金利のこと。

主に銀行間の貸し借りに適用される金利を指す。

特に、インフレの調整のため、各国の中央銀行が上げ下げしているのは短期金利であり、金融政策に基づいて調整が行われることから「政策金利」とも呼ばれる。

だから、「米国がインフレ対策に金利を上げた」というニュースに出てくる金利は、この「短期金利」である。

 

対する「長期金利」は1年超の金利を指す。

特に日本では10年物国債の金利を、代表的な長期金利の指標としている。

基本的に、長期金利は市場の状況によって変化するものである。中央銀行の金融政策などを受けて、景気が良くなりそうなら高くなり、悪くなりそうであれば低くなる、という景気の指標としての役割も有している。

 

 

さて、またイールドカーブ。

基本的には右肩上がりのカーブを描くので、短期金利は長期金利よりも低い利回りとなる

市中銀行は「短期金利」で中央銀行からお金を借り、「長期金利」を目安にお金を貸す。

そうすることで得られる利ザヤが収入になる。

 

しかし、先のインフレの過熱により各国の中央銀行がこぞって金利を上げたのは説明したと思う。

つまり「短期金利」を引き上げたのだ

結果イールドカーブがこんなことになってしまった。

 

 

 

 

今までの右肩上がりのカーブとは反対に、右肩下がりになっている。

これを「逆イールド」という。

 

「短期金利」でお金を借りて、「長期金利」でお金を貸す。

市中銀行はそういったモデルで収益を上げているが、これでは利益を出すことができない。

銀行の貸し渋りが起こり、市場の貨幣は減少する。それ故「逆イールド」になると不況になると言われるのである。

 

米国はインフレが過熱しており、モノ・サービスの値段がうなぎ上りになっていた。

その一方で、特に庶民を中心にカードローンの延滞・各種借金の支払い不能なども顕在化しつつあった。

インフレの対抗策として、FRBは金融引き締めに転じ、インフレはある程度収束の兆しが見えてきた。

しかし、その一方で企業の倒産・リストラには拍車がかかり、貧困に苦しむ庶民はますます困窮している。

...という現状が実際にある。

 

米国だけではない。主要先進国がこぞって利上げを実施し、今全世界規模で貨幣不足が進行しているのだ。

耳の痛い話ではあるが、この状態で市場にのこった少ない貨幣をかき集めようと、株や不動産などの金融資産が一度に売りに出されることで、資産の暴落が起こり、世界は恐慌となる

これは1990年代初頭の日本のバブル崩壊・2008年のリーマンショックなどで実際に起きたことである。

 

今、現在、非常に危ないバランスの中にいるということは覚えておく必要がある

 

ところで我が国はどうであろうか。

 

 

逆イールドになっていない。大丈夫そうだ...とはならない。

他の先進国とは全く違う問題を我が国は抱えている。

 

以前の投稿で、低迷した日本経済を立て直すため、日銀は大規模な金融緩和を実施していると説明した。

それが、①金利の爆下げ、②国債の爆買いである。

 
 
 

景気改善のために中央銀行が介入するのは、「短期金利」であり「政策金利」ともいわれる。

「短期金利」を引き下げることで、市中銀行の民間への融資を推進するのだ。

2000年初頭に日本銀行はこの「短期金利」をゼロにした。いわゆる「ゼロ金利政策」である。

 

しかし、上手くいかない。

そもそも経済不安が続く日本で、融資を受けて新規事業を始めようとはなかなかならないだろう。

貨幣は債務から生まれる」。それゆえ、誰かが借りなければお金は生まれない。

 

そして始まったのが2016年からの量的・質的金融緩和である。

短期金利をマイナスまで下げ、10年物国債利回り(これが一般に言う「長期金利」)がゼロになるまで、国債を爆買いした。

 

本来、長期金利は市場の動向で決まるものであり、中央銀行の介入で決まるものではない

しかし、現在まで続くこの金融緩和によって「長期金利」までも中央銀行はコントロールしてしまった。

マイナスの「短期金利」、ゼロの「長期金利」。それを実現するために日銀は国債を爆買いしたのである。

 

これが俗にいう「イールドカーブコントロール (YCC)」である。

 

2016年より量的・質的金融緩和が始まり、短期金利が-0.1%(カーブの左端)、長期金利(10年物国債利回り)が0%となるように、日銀が国債の爆買いを続けてきた。

それが、この昨今のインフレの流れ、特に米国債の利回り上昇により、日本国債にも上昇圧力がかかった

 もちろん、それでも対外的に見ればまだまだ金利は全然低いわけだが...。

 

そんななか、昨今のインフレにより、「そろそろ利上げをするのではないか」「マイナス金利を解除するのではないか」といった、話が出始めている。

 

金利は本当にあがるのだろうか?

以前こんな投稿をした。

 

 

 

昨今インフレの続く日本...。

しかし日本はなかなか利上げに踏み切らない。否、利上げできないのである。

 

日本の財政は超低金利によって維持されており、利上げは財政破綻の引き金となりうる。

(こちらについても、上記のリンクにて解説しているので是非ご覧ください。)

日本はインフレの対抗策を失っており、まだまだインフレの傾向は続きそうである。

 

そんな現状を打破するためには、政府の財政状態、政策も含めた抜本的な改革が必要である。