休日の医療コラム。
外科系集中治療医と標榜しているものの、当ブログにはそういう要素がほとんどない。
というわけで、たまには本業の方も書いてみようと思う。
今回は、連日の「チャートを読み解く」シリーズ。
これにちなんで、集中治療はどういうことを見ているか、そんなことを紹介しようと思う。
まずは、これを見てほしい。
これは私が日々実際に見ているチャートの一例。
集中管理されている患者は、そのバイタル(心拍数や血圧など、生体にとって重要な指標のこと)が経時的に記録される。
上のチャートでは、赤が血圧(上が収縮期圧、下が拡張期圧)、緑が心拍数、黒が呼吸数といった具合。
心拍数は70前後で概ね正常範囲内。
血圧は上が160前後と高め。少し下げないといけないかな....。
といった感じで薬の調整をしていくのである。
「自然」というのは「複雑系」である。
様々な物事が組み合わさって、これから何がおこるか、どうなるのかが決定される。
「AならばB」「BならばC」。だから「AならばC」といった風に単純ではない。
だから血圧を下げたいと思ってお薬を追加しても、なかなか下がらないこともあるし、反対に下がりすぎてしまって慌ててしまう、ということもある。
一筋縄ではいかない。だから、色々な視点から原因と結果を予測して、これから何をするかを考える必要がある。
そこが集中治療の難しいところであり、おもしろいところでもある。
心拍数を例に考えてみよう。
いわゆる心臓の、ドクドクする回数のことである。
大人の場合は、大体1分間に60-100回くらいを正常範囲内としていることが多い。
心拍数はどうやって決まるのか?
非常にわかりやすく説明すると、神経とホルモンによって決まる。
もう少し細かくすると...
「心拍数を早くする神経」「心拍数を遅くする神経」「心拍数を早くするホルモン」「心拍数を遅くするホルモン」
といった感じ。
この4者がそれぞれ心臓に作用することで、今の皆さんの心拍数を決定している。
休日、リラックスしている時には「心拍数を遅くする神経」が優位になり、心臓がゆっくり動く。
朝、駅に向かって走っている時には「心拍数を早くする神経」が優位になり、心臓が早く動く。
身体の代謝を調整するホルモンである「甲状腺ホルモン」。
これが多く出ているときは心拍数が早くなり、逆に出ていないときは心拍数が遅くなる。
それぞれが心臓に作用することで、トータルで心臓の動きが早くなったり、遅くなったりするのである。
いかがだろうか。
これは株とか債券のチャートにも同じことが言える。
日本銀行は市場の国債を爆買いして金利を下げようとする。
機関投資家たちは国債を市場に放出して、金利は上昇傾向となる。
この相反する2つが市場に作用することによって、ここ最近は若干金利上昇のトレンドとなっている。
米国債の金利低下が予想され、ドルの値段が下がる。
米国株のインデックスファンドが日本でバカ売れして、ドルの値段が上がる。
この相反する2つが作用することで、ドルは上昇トレンドとなっている。
といった具合に...。
人間の身体と同じように、金融市場も「複雑系」。様々な要素が絡み合ってチャートを形成している。
だから正しく市場を予測するためには、幅広く物事を知る必要があるのだ。