休日の投資コラム。
今回はチャートを読み解く「ドル円」についてのまとめ。
(詳しくは前の記事も見てください。)
本ブログを始めるに際してこんなことを書いた。
「チャートの上下には理由がある」と。
自分はICU(集中治療室)にいる時間が長く、患者のチャートの変化にも日々注意を払う。
血圧が下がったな、心拍数があがったな、なんでだろう?といった具合に。
同じことが投資のチャートにも言える。今回は「ドル円」チャートについて書いていこうと思う。
海外資産に投資をするとき、「為替」の話題は避けては通れない。
1ドルいくら?という話である。
さて、基本的な話であるが、
1ドル120円が130円に変わることを、ドルが高くなった(ドル高)=円が安くなった(円安)
1ドル120円が110円に変わることを、ドルが安くなった(ドル安)=円が高くなった(円高)
という。
通貨の価値・値段の上下は何で決まるのか?
答えは単純。「どれだけその通貨に人気があるか」である。
もうちょっと詳しく言えば、「その通貨の供給に対して、どの程度の需要があるか」である。
ハワイに行きたい、iPhoneが欲しい、COACHのバッグが欲しい...人間の欲望にはきりがない。
そうなると当然米ドルが必要になる。1万円札を差し出しても売ってはくれない。
米国株を買うにも、米国債を買うにも米ドルが必要になる。
魅力的な商品が欲しい、素晴らしいサービスを受けたい。そう思うからその国の通貨を欲しいと思い、値上がりにつながるのである。
そんな前提を踏まえて、下のチャートを見てみよう。
2020年のコロナショックにより、米国では経済政策として多くのドルを市場に投入してきた。
コロナからの回復により、弱体化した経済は次第に回復の兆しをみせてきた。
ところが、コロナ時代の大量のドルが市場にまわったことで、今度は過度のインフレが引き起こされた。
モノ・サービスの値段がどんどん上がっていく....。このままではイカンだろ。
ということで米国の中央銀行(FRB)が金利を上げて、行き過ぎたインフレを引き締めようとしたのである。
米国政策金利の推移を表したグラフ。2022年初旬から利上げを開始した。
結果として何が起こったか。
米国債の金利が大きく上昇した。10年物、30年物で4-5%の水準である。
一般的に国債は安全資産に分類される。株式・社債などと比べて。
国が借金返せなくなる(債務不履行、デフォルトという)ことなんて、普通の一般企業に比べたらまずないだろう。
ましてや世界一の経済大国アメリカである。お金を貸しても、将来必ず返ってくるだろう。
という安心感が国債の安全資産たる所以である。
そんな米国債の利回りが4-5%という高水準になったのである。
その結果、米国債は超人気となり、世界中のマネーが米国債へ、そして米国債を買うための米ドルへ集中した。
それがこれまでのドル高・円安の理由の一つである。
こうすることで、過度なインフレが抑制され、いわゆる適正なインフレ率に調整される。
昨年後半までFRBは順調に利上げを維持してきたが、そろそろ大丈夫だろうと年末に判断した。
「2024年からは段階的に利下げを行いますよ」と発表したのである。
だから、これからは米国債の利回りも徐々に低下し、人気も収まってくるだろう。
そうすれば今まで、円安が続いていたが、これからは円高に傾くだろう。と皆想定している訳である。
「貯蓄から投資へ」という政府のスローガンの一環として、「新NISA」も大々的に進められてきた。
そして、間違いなく貯蓄は投資へと向かった。その行先は米国株を中心とした外国株である。
多額の円が海外へ流れ、それがまた今年に入ってからの「円安トレンド」を後押ししているのである。
投資系YouTuber、ブロガーなどのインフルエンサーによって、特にS&P500・全世界株式のインデックス投資が昨今のトレンドとなっている。中には非課税枠1800万円すべてを、最速5年で埋めてしまえなどという人もいる。
私だって、これらの投資信託の積み立てを行っているし、何ならそういったブロガーの一人なのかもしれない。
しかしどうだろう。
このブログでも度々取り上げているが、米国経済は決して良い状態とは言えない。
例えば、これから先、「米国株」が大暴落したとき。
そして、それに追随するようにドル安となって円高トレンドとなった時。
思い出してほしい、外貨建て資産は「資産額×外貨の額」である。
「米国株安×ドル安」となるとうことは、恐ろしい勢いで日本円評価額が低下するということである。
繰り返すようだが、自分も主要株価指数のインデックス投資を行っている。昨今のトレンドを否定する気は毛頭ない。
しかし、暴落の可能性があるのも事実である。それも、かなり直近で。
その暴落の果てで、「やっぱり投資なんてしなきゃよかった」とか「現金が一番」などといった、原点回帰になる可能性。実はそれが一番不幸なのではないかと思う。
投資はした方がよい。日々勉強。それがこれからを生きる上での必須事項であるとさえ思う。
とにかく市場を注視し続けること。これが大切。