日本では、中心となる勢力の意見が唯一正当性を持つ考えである。それで日本全体が一致団結しなければならない。そこから外れる人間は非国民となる。

昨日の「そこまで言って委員会」で、中国がテーマになっていた。日本人コメンテーターは、AIIBの失敗や中国経済の崩壊のシナリオを、中途半端な知識しか持たないくせに宗教の様に信じている。それは日本の正当な予測だからである。唯一ゲストの中国人実業家の宗文州氏の話に説得力があった。“中国経済は発展鈍化するが、健全であり崩壊しない。それは、経済の中心は共産党政府ではなく、たくましい中国人個々の活動により支えられているからである”というのである。
 
その考えに沿って、成長が鈍化する直前に中国株を売り払い、今年5-6月に買い戻したという。「皆さんと違って、僕は喋るのが仕事ではない。自分のお金で投資して、稼ぐのが仕事である。視聴者の皆さんは、僕の言ったことを記憶して検証してほしい。」と発言した。番組の中ではこの強烈なパンチとでも云うべき宋氏の言葉はコメンテーターの中に何の反響も呼ばなかった。そして、コメンテーターにはなんの反駁能力もないことが、その後の番組の流れが証明していた。この正鵠を得た意見を取り込むことを、日本の事情が許さないようである。(補足1)
 
日本では、中国は敵対国であるから、“その経済や政体が崩壊することが好ましい”という希望的観測が、主なる勢力の方向を向いた人々の間で反響して、“その経済や政体は崩壊する”に変化するのである。この希望的観測が現実的観測に変化する現象は、中国問題だけにあてはまるのではなく、日本の(政治)文化そのものである(補足2)。また、その前提である“中国は敵対国である”も同様に、日本の中で(より正確には、米国支配下の日本の中で)、醸成された精製された政治テーゼの可能性が高いことに、人々は気づいていない。
 
西欧の多くの国では、常に正解を挟んで選択肢を二つ以上置く。プラトンなどギリシャ文明からの伝統かもしれないが、一人では正解に近づけないことを西欧文明は知っているのである。日本では対立する意見は、メジャーな勢力が抹殺するのが常である(補足3)。再び中国問題に戻って例をあげれば、AIIBの顧問になる予定の鳩山由紀夫氏は、お笑いの種である。その意見を一度は真面目に聞こうとする人も番組もメジャーな勢力の中には全くない。笑うのは、意見を聞いてからでも遅くはない。
 
補足:
1)この意見を番組ではほとんど無視することで、コメンテーター達の名誉をかばった。辛抱氏は当否を知りつつ、日本の主なる勢力の分析を守ったのである。この番組が面白くなくなった理由の一つは、この司会者が番組を支配する放送局重鎮の意向に従順だからだろう
2)古い例を挙げる:真珠湾攻撃は一部成功であり一部失敗であった。この失敗部分は、メジャーな勢力が好まないために忘れ去られた。真珠湾には空母は一隻も居なかったのである。しかし、真珠湾で大勝した日本は破竹の勢いで進むという希望的観測が日本を支配した。その希望的観測は虚しく、ミッドウエイで4隻の空母を失う大敗をする。しかし、ミッドウエイでの大敗は当初陸軍には知らされなかった。(永遠のゼロ)
3)20世紀の初め、美術界は黒田清輝が支配したようだ。昨日の日曜美術館では、吉田博の版画が黒田清輝の支配する日本美術界で受け入れられなかったという話があった。以前、フランスで有名なレオナールフジタ(藤田嗣治)が帰国しても黒田清輝の支配する美術界に受け入れられず、再びフランスに戻ったという話を聞いた。独裁がこの国の文化のようである。
オランダのハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)が、フィリピンの訴えを受けて、中国が南シナ海で岩礁を埋め立てて島とし、その領有権を主張することに法的根拠はないと判決した。これに対し、中国は無視する考えをアナウンスした。その上で、フィリピンの新しい政権との話し合いをする意向を示している。この件、国連のパンギブン事務総長も、二国間の話し合いで解決すべきとのコメントを出した。
 
この国連事務総長のコメントに怒りの動画を出したひとがいる。
また、以下の動画も同様の主張をしている。
私も最初は、これらと全く同じ意見をもったが、それはPCAと国連の司法機関である国際司法裁判所(ICJ)とを混同したからである。

常設仲裁裁判所は、同じハーグの平和宮(The PeacePalace)の中に入っているが、ICJとは別の機関である。国連とは直接関係のない機関が出した判断だと考えると、パンギブン国連事務総長のコメントはノーマルなものに聞こえる。そして、上記動画での怒りのコメントは行き場を失うだろう。
 
PCAは二国間の紛争の仲裁のための機関であるから、他国がそれを国際司法裁判所の判決のように考えて、中国を攻撃するのには違和感がある(補足1)。そしてそのような行為は、中国政府からは門外漢のイチャモンと受け取られても仕方ないかもしれない。アジア欧州会議で安倍総理が李克強首相との会談で、常設仲裁裁判所の判決を受け入れるべきだと声高に言うのは、第三者(他国)が何かを言う資格がないのを承知の上で、米国の提灯持ちをしているのだろうか?
 
英語のサイトだが、inquirer netというところでは、PCAとICJなどと、平和宮(the peace palace)との関係について書いている。平和宮そのものはカーネギー財団が運営しているとのことである。そこでも、西側の報道では、常設仲裁裁判所(PCA)と国連の国際司法裁判所(theUN’s International Court of Justice ICJ)を混同する場合が多いと指摘している.
 
とにかく、安倍総理には日本が根拠のない行為で中国との関係を悪くして、結果として日本国民が損をすることのないようにしてほしい(補足2)。また、マスコミにはマスゴミと言われることが多いのであまり期待はしていないが、できれば期待を回復するように、このような紛らわしいケース(同じハーグの平和宮にあるが、機能も権威も全くことなるPCAICJの違いなど)は、あらかじめしっかりと説明してほしい。
(編集12:00)

補足:
1)もちろん国際機関の出した判決だから、中国は従うべきである。従わずに何の平和的合意をフィリピンと構築できないのならば、中国の国際的評判が落ちるだろう。しかし、100%判決を受け入れるのではない形でも、フィリピンと合意すれば、それについて何かを言う資格は他国にないと思う。
2)つまり、軍事力ない国は、大きなことを言わない方が怪我をしないで済む。外交は、論理や原則ではなく、現実を重視して行ってほしい。したがって、日本が一定の軍事力と、それをManageする政治力をつけることが大事だが、それまでは米国にその役割をしてもらう(させる)べきである。
昨日のテレビ報道や今日の新聞報道により、天皇陛下が退位の意向をお持ちだという情報が流されている。読売新聞15日朝刊一面、天皇陛下・体力考慮「退位」に関心というタイトルの記事では:
“「生前退位」の意向を持たれている天皇陛下が、加齢による体力面の問題でこれまで通りの活動を続けることが難しくなるなか、退位という考え方に関心を示されていたことが、関係者の話でわかった。という文章にはじまり、天皇陛下による退位の意向が、動機を含めて詳細に関係者の話として書かれている
 
しかし、最後の方で:14日夕の記者会見で宮内庁長官は、「陛下が生前退位の意向を宮内庁関係者に伝えられたという事実はない」と説明した。”と書かれている。
 
また、別の“政府慎重に対応”というタイトルと、“「有識者会議で議論」案”というサブタイトルのカラムにおいて:“政府は天皇陛下の「生前退位」の意向を踏まえ、皇室典範の改正など対応策の検討を進めていく方針だ”と明確に政府の意志を書いている。
 
しかし、これも終わりの方で:
“菅官房長官は記者会見で「宮内庁でそうした事実はないと言っている」と話すにとどめた。政府関係者が沈静化を図ったのは、憲法が天皇について「国政に関する機能を有しない」と定めており、「天皇陛下の意思を受けて政府が改正を検討すれば問題視される恐れもある」との懸念があるからだ。”
否定しているのか何なのか訳のわからない文章を書いている。
 
いったいこれはどうしたことなのか? 政府は官房長官が、「宮内庁長官はそのような話はない」と言っていると発表しているのにも拘らず、宮内庁の別のルートが天皇の意思を聞いて、それを別の内閣官房に伝えて、皇室典範の改正を「有識者会議」で意見を聞いた上で進めるようなのだ。いったい、この国の政治権力はどこにあるのか? 憲法の規定はおまじないの台詞にすぎないのか?

この件について、佐藤優氏が“日本の民主主義の危うさ、マスコミのレベルの低さ”として解説されているので、引用する。