1)技術特異点とは、技術の発展を人間が担うのではなく、汎用人口知能(artificial general intelligence; AGI)が担うことになる点(段階の節目)である。その横軸は技術的発展の度合いであり、ほぼ時間軸に並行する。最近、レイ・カーツワイルという人の本(補足1)で急に注目されるようになったが、その人はその特異点(singularity)が訪れる時点を2029年と言ったらしい。2045年位という人もいる。
 
このシンギュラリティ(補足2)という言葉をより分かりやすく表現した人は、統計家のI.J. Goodかもしれない。(ウイキペディア参照)その人は技術特異点を超知的マシンの出現と考え、そのマシンがそれを超えるマシンの開発を行い、その後は人間の介在する余地がなくなるのである。その最初の超知的マシンが人類の最後の発明となり、以後の発明は人知を超えたマシンによりなされる。この言葉は1965年にだされている。従って、この議論の歴史は古い。
 
これはSFの世界の出来事のようであるが、今やそうでないような気がする。そして、気になるのがその技術的特異点にどこの国の技術が最初に到達するかということである。その競争に勝った国が多くの新規技術を知的所有権という形で抑えれば、世界の技術分野を制覇する可能性がある。
人間を超えた例えばAGIロボット(或いは機械)は、次第に漠とした目的を入力すれば、新しい技術開発の方向も方法もAIGが決める様になるだろう。(補足3)
 
もっと近いところでは、すべての家庭内の装置から工場の機械や自動車などがインターネットで繋がり、ほとんどのものの利用がインターネットを通してされる時代が来る。これをIoTInternet of things;モノのインターネット)と呼ぶらしい。モノの状態を第二のモノがインターネットを通して感知し、第三のモノがそれに対して応答する様な時代がそこまで来ているのだ。
 
この技術開発が世界で凌ぎを削っている時に、日本がこれらの分野非常に立ち遅れているというのである。その様な日本の遅れは、停滞の20年ではなく、没落の20年につながる可能性大である。
 
2)現在、日本は他国に比較して長年続いた経常黒字を蓄積しており、世界一の債権国である。それにも関わらず、新しい産業に投資する様子はあまり見られず、また、設備投資やインフラ整備をして生産性向上を目指すなどの兆候もあまりない。その金は死蔵されたまま、日本経済の没落とその後やって来るかもしれない円安により、紙くずに変わる可能性すらある。
 
その原因は、日本国に全体としての意思(と方向)がないことである。そして、日本国民一般にスピリット(パワーやエネルギー)も危機感もなく、関心のあることと言えば本能に根差すことに加えて、健康と長寿となっている。(補足4)その結果、健康産業に医療や薬剤関係の仕事が安定しているとして、高校の優秀な生徒は医学部や薬学部に進学する。(補足5)つまり、国民が医師が最高の職業であると思う誠に志の低い状態にある。
 
人材が大事であると言いながら、政府は大学の授業料の無料化などという役に立たない政策しか思い当たらない。それは、改革には抵抗を打ち破る信念とエネルギーが必要であるが、日本の政治家はほとんどが職業政治家であり、「如何に無難に国会の椅子を確保するか」だけしか心にないからである。そして、栄光の大企業であった、東芝、シャープ、三菱自動車などの没落は特別な現象ではなく、日本社会全体の崩壊の序曲ではないだろうか。
 
今こそ、中学生や高校生が、自分たちの目の前に多くの分野が幅広く広がっており、自分の能力を活かせるところにも、社会的地位や給与の高い花形の職業が存在すると、心から思う様な教育が必要である。そのためには、家庭や学校が世界の広い国々とそれらの状況に目を向ける必要があると思う。そうすれば、必然的に日本の危機を正しく理解し、その情報を家庭内で学校や社会で交換することになると思う。その全体の空気の中で、優秀な技術者や研究者がそれぞれの分野で育つのである。
 
そのためには、従来の既得権益を破壊する必要がある。例えば、医学部の新設など自由にして、誰でも医者になれる様にすれば良い。そして、優秀な医者のみが生き残れる様にすれば、結果として国民の健康増進につながるだろう。薬局で棚から薬を取り出して、袋に入れて患者に渡すだけの仕事にどれだけの価値があるのか。これらが難関学部であるという理由で、その分野への向き不向きに関係なくだが秀才が集まる弊害をなくすべきである。

そして、労働文化も、従来の様に会社という封建組織に家臣として就職する様なものではなく、労働を提供して賃金を受け取るというノーマルなものに変えるべきである。そうすれば、新卒採用が一流企業に就職する唯一の機会であるという、労働力の流動性が異常に低い、他国と比較して非常に弊害の多い労働文化は次第に消滅するだろう。(補足6)
 
 
補足:
1)Ray Kurzweil著 “The Singularity is Near,小野木明恵訳
2)Singularityとは特異点の意味。数学用語では、微分不可能な点で、そこでの将来予測(横軸が時間の場合)が不可能となる点である。
3)IoT(続きの文章の中にある)の背景で高度なAIGロボットができれば、ほとんどの人に(人相手の仕事以外)働く必要などなくなるかもしれない。現在、掃除ロボットは電源を探して自分で充電する。やがて、汚れたところを探し出して、掃除する様になるだろう。その後、家の環境全体を受け持つ様になる。人が入力する情報は次第に少なくなり、ついには明日のスケジュールに基づいて主人に持ち物や服装まで進言するロボットに進化するだろう。しばらく後のある時点で人に震源ではなく指示する様になり、人を超えたロボットは人のような意思を持つ事にならないだろうか。それは第二の技術特異点(テクニカル シンギュラー・ポイント)となる。そうなれば、“彼ら”の価値を人間が決めるのではなく、“彼ら”が人間の利用価値を決めることになるかもしれない。
4)朝鮮半島には自分たちが危機感を持って国家の近代化に邁進した、日本の明治維新の時の様な経験がないため、現在のテイタラクがあると言える。それは、李氏朝鮮時代は巨大な中国の顔色さえ見ていれば良いという危機感のない時代が続いたのが原因だろう。中国を米国に変えれば、李氏朝鮮は現在の日本ではないのか?そして、現在の半島のテイタラクは、近い将来の日本である。
5)理工系全学部学科のトップ(東大理科1)の難易度(偏差値)は、医学部医学科の10位と同じ難易度である。理工系花形の京大工学部情報学科の難易度(理工系8位)は、島根や福島という地方大学の医学部(65-70位)の難易度と同じである。http://www.toshin-hensachi.com/rank/
6)昨年、電通での過重な時間外労働の結果、東大卒の女子職員が自殺に追い込まれた事件が話題になった。それは労働市場の閉鎖性(労働の流動性のなさ)が原因であると指摘した。
2月13日に暗殺された金正男には、5年前から暗殺指令が出ていた。その暗殺司令のきっかけの一つとなったと思われるのが、G氏という東京新聞の記者が書いた本「父・金正日と私、金正男独占告白」という本だという。金正男にとっては、本の出版は意外で望まないことであり、「ご理解をお願いします。北朝鮮の政権が、私に危害をもたらす可能性もあります」とメイルで出版をやめるようにG氏に依頼した。
 
つまり、出版など無いという前提で、報道人であるG氏へのインタビューに答えたのだろう。それでも出版に踏み切った真意について、G氏はこう話したという。「彼の立場ならそうでしょう。ただ、北朝鮮が17年間統治した指導者を失い、どの方向に向かうかはっきりしない中で、長男の意見を広く世間に伝えるほうが、意味があると考えました。さらにこの本を通じ、正男氏のイメージが変わり、多くの人が関心を持つようになれば、逆に正男氏にうかつなことはできなくなると思います」
 
G氏は、「金正男は、本を出すならわれわれの関係は終わりだと言っていました。本への反応はありませんが、たぶんどこかで入手して読むでしょう。そしてまた連絡してくれることを願います」と話したという。http://www.asagei.com/excerpt/3582
 
そのG氏が、金正男の暗殺後にインタビューに答えている。「残念のひと言です。北朝鮮のことを、あれほど率直に語ってくれる人はいませんでした。それが、こんなことになるなんて……」沈痛な面持ちで語るのは、かつて金正男(享年45)に7時間インタビューし、計150通もメールをやりとりした「金正男の友人」の東京新聞編集委員である。このように記事に書かれている。
 
「」内に友人の文字が入っているのは、G氏が言っているだけで、だれも友人とは思っていいないからだろう。
 
これらのG氏の発言とその報道に、人間としての違和感を感じるのは私だけだろうか。勿論、金正男はキム王朝の中にあって、マカオなどで北朝鮮の武器や麻薬などの違法ビジネスで金を稼ぎ、複数の邸宅と複数の女性を囲っている嫌な男であるという指摘が事実だとしても、である。https://news.yahoo.co.jp/byline/ishimarujiro/20170225-00068075/

若干警戒心に薄い注目の男と友人的な関係を築いて巧みに取材し、命が危ないので出版はやめてくれという願いを無視して、金儲けのために出版したG氏。「私はプロの記者でありそれで生きているのだ」と言うのなら、それも一つの生き方だと認めることは可能だが、そうはしないであくまでも友人関係を主張するズル汚さにはうんざりする。
 
出版する意義として主張した論理、金正男が暗殺されたあとのコメントを聞いて、人の汚さを改めて見た思いだ。

(これは公にされた本の出版趣旨について書いたもので、個人攻撃のつもりで書いたものではありません。)
NASAが、太陽系から比較的近いところに水が存在するかもしれない惑星を持つ恒星について発表した。その恒星は名前をトラピスト1というのだそうである。この発表について、“「地球に似た7つの惑星を発見」――NASAの発表を正しく理解するために大切なこと”と題して、ヤフーニュースが解説している。

 

その記事の中で、この種の惑星の存在についての発表が以前からあったと断わりながら、それらと比較して今回の発表の重要性について説明している。そして、その記事の筆者は地球外生命の有無の答えが出る日は近付いている」と書いている。(補足1)
 
私は、地球に似た温度や気圧の環境と水が存在する惑星が、多数宇宙に存在する可能性があるだけで、地球外生命が存在するかもと騒ぐ神経がわからない。私が考えるこの発表の大事な点は、NASAがトランプ政権下でどれだけの予算を獲得できるかという点に影響を与えるかどうかだけである。
 
現在の科学の知識では、生命はどの様な環境で、そして、どの様なメカニズムで発生するのかさっぱり解っていない。第一に、高度で複雑且つ精密な組織である生命の発生は、エントロピー増大の原理が支配するこの宇宙で不可能だと思う。つまり、この地球上と同じだが生物の存在しない環境が宇宙にあったとして、そこで数十億年待っても、必要な数の分子が集合して一つの原始的な生命体が生じることは、確率論としてはあり得ないだろうと思う。
 
従って、地球外生命の存在の問題は、信仰の問題であり、NASAの担当する科学の問題ではないだろう。生命とは、精巧な何百という化学物質の極めて高能率な合成の場であり、その量を精密に制御するシステムを持ち、外敵に対する情報収集システムに戦闘システムとか、数え切れないほどのシステムが調和的に共存する巨大複合システムである。それを記述すれば、生命以外の全宇宙を記述するよりも遥かに大きい書物になるだろう。
 
我々人間は、この生命体の主のように思っているが、単に一刹那の間借り人にすぎない。そして、生命の発生については何にも知らない。そんなレベルの存在が、宇宙のなかに水が存在する星が多数存在し、そして、その星の温度や圧力が地球上の値に近いかもしれないという知識を得ただけで、地球外生命が存在する可能性が高いとか低いとか、其の答えがもうすぐ出るとか言うなんて、愚かにも程がある。
 
 
補足:
1)以下にまとめる。「太陽系から39光年という、比較的近いところでの発見であること、また惑星を7つ、さらにハビタブル・ゾーン(地球上のような生物が棲むに適した領域)の中に限定しても3つも惑星が発見されたということ、更に、トラピストは赤色矮星という星で、宇宙にもっとも多く存在する星で、それらに生物が住めるような環境の惑星が共存する可能性が高いとなると、それだけこの宇宙のどこかに生命がいる可能性が増えることにもなる。
 
今の時点では、地球外生命がいるとは言えないが、しかしいないとも言えず、私たちが探し続けさえすれば、いつかは見つけることができる可能性は大いにある。今はまだ、その日がいつなのか、近いのか遠いのかさえわからないし、もちろん空振りに終わる可能性もある。けれども、今回のような研究や、最新技術を使った新たな望遠鏡によるさらなる探索によって、少しずつ答えに近付いていることは間違いない。