自民党総裁選が9月27日行われ、第一回目の投票で高市早苗氏が1位、石破茂氏2位、小泉進次郎氏が3位となった。過半数の票を獲得した候補が居なかったので、上位2位までの決戦投票の結果、1位と2位が逆転して石破茂氏が勝利した。

全部で9人の立候補者があったので、最初から混戦が予想されていた。そんな状況なので、1回目の投票は各候補への期待が票数に現れ、第2回目の投票では2人の候補へのマイナスの評価が対立候補側の票となったと思われる。つまり、高市氏を忌避する自民党議員が石破氏を忌避する議員よりもかなり多かったということになる。

高市氏を忌避する理由は、彼女の大日本帝国が遂行した戦争を肯定すると誤解されそうな歴史観にあるだろう。高市新首相の日本が、最悪の外交関係の中で戦争大敗と国民の大量犠牲を招くという恐怖である。

 

石破氏を忌避する理由は、口先だけで自民党の党内野党として活動してきたこれまでの政治姿勢だろう。要するに、高市氏は何かをやりそうだから怖いが、石破氏は口先だけで何もやらないから選んだということになる。

ここまでを大胆に抽象化すると、自民党議員たちは、何かを積極的に訴え且つ実際に実行しそうな人物よりも、言葉だけで実際は何もしないと思われる人物を安全の為に選んだということになったのである。実際、早々に解散総選挙を実施して最初の任期では何もしないようだ。

 

普通に考えれば、高市氏一人よりも自民党全ての決定の方が正しいだろう。それは、何もしない人物が安全だということが正しいということになる。候補者一人ひとりの能力が低すぎて、自民党からは国家のために何かをする人を期待できないことを意味する。

 

政治家全体の質を向上させない限り日本の政治に改善はないことになる。

 

https://www.youtube.com/watch?v=5L9H6JbeXng


1)首相の靖国参拝に拘り総裁選に敗れた高市早苗氏

上に言及した最悪の外交とは、長期的には世界の中で日本が孤立すること、短期的には対中関係の危機的状況を招きかねないことだろう。

 

深圳での日本人学童の刺殺は、日中関係の悪化が危機的状況に近いことを示している。そんな状況下で、秋の例大祭に高市首相が靖国参拝した場合、経済的危機の中国でかなり多くの日本人駐在員とその家族の命が狙われかねない。日本国内でもテロ等が多発する可能性がある。更にその責任の擦り付け合いから、日中の軍事衝突にまで発展するかもしれない。(補足1)

上に引用したyoutube動画で朝香豊氏も、高市氏が首相になっても靖国参拝は実行すると言って全く妥協の姿勢を示さないので、自民党内の左の方の票が逃げたといっている。

私も、日本の将来を考えると今回の総裁選の選択は正しかったと思う。何故なら、政府代表である首相が靖国参拝を強行すれば、日本政府はサンフランシスコ講和条約での約束「東京裁判を受け入れる」を敢えて無視したことになるからである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12837289399.html

東京裁判を受け入れるということは、A級戦犯として断罪された戦争時の日本の指導者たちが世界の平和を破壊する行為として戦争を遂行したという理解、つまり戦争の原因が日本の軍国主義によるシナ大陸侵略にあったという理解を受け入れることである。

東京裁判が正しいとか間違っているとかいう問題ではない。(補足2)第二次大戦を含め近代の世界における戦争の最大の責任は、英米など西欧各国にあり、日本がその流れに乗った或いは巻き込まれてしまったことの責任は、それよりかなり小さいかもしれない。

 

しかし日本は、戦勝国の論理を受け入れて戦後再出発したのである。何故なら、國際関係は本質的に野生のルールで動いているからである。正しい方が勝つのではなく、強い方が勝つのである。戦後80年を経過して、今更第二次大戦の終結を否定し、再び米中英仏蘭の敵国になるという選択をするべきではない。

 

もし日本が強大な軍事力を持ち、世界を席巻しているのなら東京裁判を否定することも一つの外交上の選択である。しかし、日本は自衛軍すら真面に保有しない国である。

勿論、私人なら靖国に参拝することは信教の自由の範囲に入るとの主張は可能である。しかし、首相にはそれが出来ない。何故なら、日本の首相は日本国そのものであり、その中心だからである。

何故こんな単純な論理が高市氏には理解できないのだろう。日本の国会議員たちは派閥抗争や人事の問題で明け暮れ、勉強不足なのだと思う。石破氏は確かに職業的政治家に見える場合もあるだろうが、そのあたりの知識はあると思う。その差が、総裁選の結果を分けたのだろう。


2)憲法改正案への自衛隊明記する場合の問題点

また朝香豊氏は、石破茂氏の自民党の憲法改正案に対する態度を批判している。安倍内閣の時に決めた自民党案では、憲法92項を残したまま第3項に自衛隊を明記するが、それでは改正にならないというのが石破氏の意見である。

朝香氏は以下のように話す: 憲法改正には公明党の数が必要であり、その連携を維持するために9条2項を残し自衛隊を明記する草案を作ったのである。石破氏は評論家的発言をして、その努力の結果である自民党案に反対し、結局憲法改正が出来なくしてきた。自分の案に拘るなら、それで公明党を説得する努力をすべきであった。しかし、石破氏は汗をかくタイプの人ではない。

また朝香氏は、政治は多数派を握った方が勝ちであり、従って純粋を求めてはいけない。理想論を語ることは良いが、政治は理想論だけでは動かないとも語っている。高市氏が今回の総裁選では、多数派工作として自分の靖国参拝への熱意を一時的に曖昧にすることだったと語る。

しかし、現実政治が妥協の産物だとしても、守るべき一線が存在する筈である。そのレッドラインの認識において、朝香氏は間違っている。現在の自民党案で憲法改正をすることは、日本を世界の笑いものにすることである。そこに自民党を導くことは、反日国家の工作かもしれないと考えるべきだ。

石破新首相がすべきなのは、元々意見の異なる公明党の説得ではなく、そのような考え方の異なる政党との間違った連立を解消して、本来の考えに従って草案を作り国民に理解を求めることである。


終わりに:

日本の政治の貧困は目を覆うほどである。その大きな原因は国会議員の質が低いということだと思う。その一つの原因は、国会議員の殆どが職業として永田町(国会)に勤務しており、終身雇用に近い職の安定を求めて活動していることである。

 

二世議員が多いのが原因であるという人が多いがそれは結果であり原因ではない。タレント議員も元官僚の政治家も、次の代は代議士を目標に人生を歩むだろう。従って、日本の政治改革の近道は、国会議員を職業とはなり得ない制度を取り入れることである。

 

例えば、国会議員をボランティアとする。そのうえで、一生涯で5年間を政治家としての最長活動期間とする。待遇だが、実費と自分の本来の職業の中で、5年間の政治家としてのサービスによる不利益を帳消しにするレベルの給与を支給する。 

国会議員の定数は、野党を含めて内閣を構成する人数の3~5倍程度として、定数を半分以下にすべきである。選挙活動は、候補者数人毎の討論を唯一とし、選挙期間を3か月以上とる。選挙区は道州制として、国会議員の地方での政治活動へのかかわりは禁止する。

 

 

補足:

 

1)今回の総裁選で、中国及び米国から自民党議員たちに対して強い干渉があった可能性を指摘する人もかなりいる。伊藤實氏はある動画の中でその可能性を示唆している。https://www.youtube.com/watch?v=-yLv4OQ2rY8 (動画の13分あたりから)

 

中国の場合、高市氏が選ばれ首相として靖国参拝をすれば、日本人が大変なことになるかもしれないというタイプの脅し或いは干渉があった場合、その効果は大きいだろう。何故なら、自民党議員たちはその可能性を既に考えているからである。

 

2)東条以下の平和に対する罪での断罪は、①事後法での裁きであるので法理論的に本来無効だという考え方がある。それはかなり説得力を持つ。また、平和を乱した責任など日本になく、②日本にとっては防衛戦争であったなどの論理も、歴史を詳細に見ればその通りだったということになるかもしれない。しかし、それらを現在世界を牛耳る勢力は決して認めない。そして、日本政府が①や②の論理を用いることを放棄したことで、サンフランシスコ講和条約が成立したのである。同じ“力の論理(歴史は勝者が書く)”で、原爆投下も正しいとされてきた。

 

(編集歴: 10月3日早朝、本文最後の文を修正、そのほか助詞修正レベルの編集の後最終稿)

米国ハドソン研究所のHPに9月25日の日付で「Shigeru Ishiba on Japan’s New Security Era: The Future of Japan’s Foreign Policy(日本の新しい安全保障の時代についての石破茂が語る:日本外交の将来)」という論説論説(Commentary)が掲載されている。

https://www.hudson.org/politics-government/shigeru-ishiba-japans-new-security-era-future-japans-foreign-policy

 

記事は、最初にこの文章がハドソン研究所に送られた由来を紹介する文章で始まる: 

 

Shigeru Ishiba, the next prime minister of Japan, exclusively shared his views on the future of Japan’s foreign policy in response to a request from Hudson Institute’s Japan Chair. The following is an unofficial translation of his response, which was published before Ishiba was elected and reflects his personal opinion.

 

日本の次期首相である石破茂氏が、ハドソン研究所日本担当主席の求めに応じて、将来の日本の外交に関する彼の見方を独占的に返答した。以下は彼の返答の非公式な翻訳文であり、選出前に出した私的な考えである。

 

本文には、①アジア版NATOの創設、②国家安全保障基本法の制定、及び③米英同盟なみに日米同盟を強化することが、それぞれ必要だと書かれている。

 

①のアジア版NATO創設については、以下のように書かれている。ウクライナがロシアの侵攻を受けたが、NATOに加盟していないウクライナは、安全保障理事会で国連軍派遣が決定されるまでの間の国連憲章51条に謳う集団的自衛権の行使が出来なかった。もし、日本が中国に侵攻されたとして、ウクライナと同様の運命に陥らない為には、アジア版NATOが創生され、日本が加盟しなければならない。

 

この考えは、安倍内閣の時の集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定があっても、日米安全保障条約第5条による米国の軍事協力に不安があることに因る。つまり、5条の中にある「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という条件が、米軍が日本防衛に参加しない根拠となる可能性を石破氏は考えているのだろう。

 

これらの不安材料をなくすために、国内法の整備である②国家安全保障基本法の制定と、③日米同盟の米英同盟なみの深化・強化が必要だと考えられる。日米安保条約にある米国の言い訳「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」が事実上無効となり、迅速且つ無条件に米国の軍事協力が得られるようにしたいのだろう。

 

短い文章であり、日本語訳もついているので、簡単に読める。ここでは私の理解のエッセンスを書いた。

 

2)何故米国のシンクタンクは25日に既に石破氏が新首相になることを知っていたのか?

 

この記事の存在を知ったのは、ヤフーニュースが韓国ハンギョレ新聞の記事を報じたからである。同新聞は、このアジア版NATO構想が本格的に推進されれば、韓国もその集団安保体制に参加する構図になり、波紋は避けられなくなる。ただし、実現の可能性については疑問の声が多いと書いている。

 

ハンギョレ新聞は韓国の民主化に深く関係し、市民を株主として誕生した新聞だという。韓国が中国と日本の間にあることを考えると、上記の波紋の意味が分かるような気がする。

 

ハンギョレ新聞には、ハドソン研究所のHPに石破氏の上記考え方が現地時間の27日に掲載されと書いている。それは、ハドソン研究所日本担当主席が25日に石破氏から得た返答ではなく、27日にアップロードされた石破構想に関するIku Tsujihiro & Riley Waltersの解説記事だと思われる。

 

ハドソン研究所のHPで検索すると、commentaryの目次は以下のようになっている。

 

一番上に上記Iku Tsujihiro & Riley Waltersの署名で、次期首相としての石破茂の方針という記事があり、その4つ下に最初に紹介したハドソン研究所日本班のトップが受け取った石破茂氏の将来の日本外交についての返答が9月25日の日付で紹介されている。

 

既に上に書いたように、その25日に公表された文章中には明確に次期首相と書かれている。上の目次にみられるように、ハドソン研究所のHPが日付を間違える筈がない。この日付の矛盾として二つの可能性が考えられる。

 

一つ目は、27日の総裁選の結果が出る前に、ハドソン研究所は石破氏が次期総裁となる可能性が大きいと考えて、石破氏に今後の日本の安全保障外交についての考えを聴き、それを25日のHPにアップした。その後、実際に新総裁となったので、文頭の記事の由来を書き換えた可能性である。

 

二つ目は、党員党友の投票(26日に締め切り)の25日までの分の結果を知っていて、自民党議員の投票結果も合わせた最終結果に完全な自信をもって予知できる人物が存在し、それをハドソン研究所に知らせたというシナリオである。

 

この日時の矛盾は何を意味するのかはさっぱり分からない。自民党は選挙を捏造し、日本国民よりも米国のシンクタンクとより親密なのかもしれないとか疑ってしまう。或いは、そのように思わせる諜報活動かもしれない。どなたかこの日付と内容の矛盾がどうして生じたのかわかる人はコメントでお教えくだされば幸いです。

 

追加: なお、石破氏の自民党総裁への当選は意外であった。そのことは何よりも当選が決まった瞬間の為替と先物株価の急変が示している。(19時記入;同時に本文の編集少々)

 

=== おわり ===

石破茂氏が27日の自民党総裁選の決戦で思わぬ票の動きで勝利した。第一回目の投票で党員票でも国会議員票でも高市氏に負けていた石破氏だったが、1位と2位の間で行われる決戦投票で、一回目で別候補に投じられた票がかなり纏まって石破氏に流れたと考えられる。

 https://www.youtube.com/watch?v=fdRADLbafak

 

 

恐らく前回の総裁選で出来ていた小石河(小泉、石破、河野)連合関係の票がかなり石破氏に流れたのだろう。また、第一回投票後の5分間演説 (動画2:16:00~) の最初に、石破氏がこれまで不快な気持ちにさせてきた議員たちに、自分の能力の無さの結果であったとして謝罪したこと等が、大きかったという評論家もいる。(補足1)

 

確かに石破氏の演説は良くまとまっていた。政治の原点を持っている人物のように思える演説だった。自民党をルールを守る公正な政党にするという言葉に共感した若手がかなりいた可能性もある。最後まで手を抜かなかった石破氏の姿勢が、思わぬ形で勝利に結びついたのだろう。
 

更に、高市氏の対中国強硬姿勢が不必要に中国を刺激することとなり、不測の事態を招きかねないと感じる人たちが、安心感を石破氏に求めた可能性もあると思う。また、石破氏がこれまでの演説で、日米地位協定の見直しや東アジア版のNATO創設という具体的な改革に言及したことに、若い世代の国会議員には賛同した人もいたと思う。

 

石破氏の経済政策には大きな不安を感じるが、経験と知識のある石破氏が当選したことは、安全保障、特に対中国外交の面で一安心だと言える。

 

その経済政策だが、大企業の利益の積み上げや配当金の増加を悪のように言及する発言、法人税や金融所得課税の強化への言及など、経済を疲弊させるような発言があった。その一方、海外進出率の高い大企業に国内回帰させたいという発言など、互いに矛盾し且つ自由主義経済の原則に反するような話をしている。(補足2)

 

決選投票前後の演説でも、岸田政権の「新しい資本主義政策」を進めるという類の発言をしていた。岸田氏が最初に言った新しい資本主義は、クラウス・シュワブの「株主の為の資本主義から全関与者の為の資本主義への転換」という考え方であり、突き詰めれば新世界秩序或いは世界共産主義帝国を築くという発想である。“論理的に話ができる”人だと思っていた石破氏から、新しい資本主義という言葉が出れば、経済界は警戒するのは必定である。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/0201_2

 

もし石破新首相となり、そのような左翼的経済政策を実行すれば、日本経済は不況に落ち込むだろう。小泉氏の解雇規制を徐々に緩和するという話よりも遥かに強い打撃を与える上に、何の利益も結局生まないだろう。実際、石破氏が当選した瞬間から日経先物が2000円ほど急降下している。

 

自民党の総裁候補9名とも、クラウス・シュワブの「新しい資本主義」が世界共産主義革命の現代版であることなど知らないのかもしれない。また、彼ら全員がウクライナ戦争とはロシアが領土拡大欲求を満たすために国際法に違反してウクライナ侵攻したことが殆どすべてであり、国際秩序が守るためにはロシアを懲罰し、ウクライナを全力で支援しなければならないという理解に留まっていることと符合し、将来の日本外交に不安を感じる。
 

以上、石破氏は新しい風を一時期日本政界に吹き込むかもしれないが、現在のままでは日本のリーダーとしては能力不足であり長期政権にはならないだろう。それでも今回先頭グループを形成していた石破、高市、小泉の三人の中では一番安定感のある人物だと思う。今後、いろんな人から話を聞いて、徐々に立派なリーダーに変身(補足3)していってもらいたい。


 

補足:
 

1)自民党議員の中にも、中国に対して強硬姿勢を見せる高市氏に不安を感じる人が多いかもしれない。首相になっても靖国参拝を継続するという発言もあり、高市首相が誕生した場合には中国に駐在する日本人に更に大きな被害が発生する可能性があった。そのような議員たちが石破氏の方に流れやすくする効果が、この謙虚な姿勢と言葉にあったと考えられる。

 

2)石破氏は選挙戦の演説の中で次のように言っている:ドイツや韓国の輸出額の対GDP比が夫々47%と44%であり、日本のそれは18%に過ぎない。その低い値は日本の製造業がより多く海外に出ている結果なので、それらの国内回帰を目指す。

ただ、企業でも人でも、日本を出るのは日本が棲みにくいからである。その改善をしないならそれら企業が日本に回帰する理由はない。企業の剰余金に課税したり、配当金などの金融所得に新たに課税するという石破氏の方針とは矛盾している。

そんなことはしないで、小泉氏が言ったような日本にダイナミズムを採り入れる改革を徐々に採り入れるのなら、海外進出した工場も日本回帰が可能になってくるだろう。

 

3)ソ連のゴルバチョフ書記長の例もあるので、まったくあり得ないことではない。自民党を換骨奪胎するのである。

 

(14:00修正;翌日早朝編集後最終版)