1)はじめに

 

昨日の「お詫びと訂正」の記事では、小池都知事の「軽症者を退院させて、ホテルなどに収容し、そこで養生してもらう」という方針に、憲法違反の疑いがあると書いた。

 

そのブログ記事に、「chukaのブログ」さんからコメントをいただいた。そこには、その方法を取ることが正しい判断であると書かれていた。その中には非常に有用な知識が含まれているので、全体を引用させていただく。

 

現在の病院は患者には必ずしも安全な場所ではない。たとえば人口呼吸器を数日つけているだけで、免疫度の弱い患者はMRSAに感染している。20世紀前後にはこれが猛威をふるい、多数の犠牲者が出たのは医療側の常識となっている。その上、人間は寝てばかりいると体もなまってしまい感染に弱くなります。もう一つは精神上の悪影響が大きい。病院のベッド数には限りがあり、特にこれはICUに顕著です。最初の患者優先より、必要者優先です。手術などで長期療養が必要ならばリハビリに送られます。

 

人工呼吸器を数日つけただけで、MRSAに感染することが医療分野の常識であるという話は他人事ではない。ただ、そのコメントは、法的にはどうであれ、差し当たり出来るだけの人命を助けることが肝腎だという考えだと思う。それは尤もなのだが、日本の現状は、法治国家としての体裁を整えていないので、表の論理で反論をしたい。

 

コメントありがとうございます。内容には全く同感です。ただ、その手法を日本がとり得るのかという問題です。つまり、部分と全体という2つの視点があり、全体からみて正しい判断が、部分が受け入れ難い場合、その解決をするのが法です。法を受け入れるという了解の下に、我々は国家に私権の一部を渡しているからです。

 

その法の一部に、国家非常事態の宣言と、非常事態特別法の発動により、個人の私権の一層深い部分からの制限が掛けられます。それが不備な場合、非常時には国家は成立しません。部分の視点を一切持たないのが、独裁です。独裁は、法の不備で困ることはありません。日本は民主国家を標榜していますので、現在、国家非常事態なのです。

 

 (補足:ここで国家とは、国の一部を構成する「国家組織」の意味)

 

2)トロッコ問題

 

上記は、命の選択の問題であり、サンデル教授の熱血授業で有名になったトロッコ問題に似ている。それは、「前方の5人が将にトロッコに轢き殺されようとしているとき、トロッコの進路を変更出来るポイントに居る人は、2人が線路上に存在する方向にトロッコの進路を変えるべきだと思いますか」という問題である。

 

確かに5人の命よりも、2人の命の方が、被害としては少ない。従って、そのような場面にあれば、トロッコの方向を変えて、5人の命を救うべきであるという答えが優勢かもしれない。しかし、それは翌朝の新聞記事の表題を、5人の事故死から2人の殺人事件に変更するだろう。

 

上記軽症者は命の危険性は2であり、後から病院に運ばれる重症者は命の危険性が5であると考えれば、上記トロッコ問題と酷似している。このまま、先に取得した病院での治療権を奪われる人は、より大きな死の危険性という負担を強制される。これは、人のすることだろうか? このトロッコ問題は既に1月15日の記事に書いた。

https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2020/01/blog-post_15.html

 

もちろん、軽症者が簡単に了承するのなら、話は別だが、軽症者の定義は非常に厳しい状況の人も含まれる。https://forbesjapan.com/articles/detail/33415

 

このような状況は、通常、近代国家の姿ではない。ましてや国家非常事態の定義が憲法に無い国では、非常事態だからという言い訳はできない。普通の国では、非常事態宣言がなされたのち、そのような措置がゆるされるという特別法が発動されて初めて可能なことだろう。西欧諸国でも、このような議論は、恐らくなされていないだろう。

 

日本では、非常事態の定義が憲法になく、従ってこの種の非常事態にのみ起こり得ることが発生した段階で、超法規的措置が取られることになる。それは、国家の一時的崩壊と同義である。このような事になったのは、オリンピックと習近平の国賓としての招聘を優先し、この新型コロナ肺炎への備えを怠った安倍内閣の責任である。その点を今後明確にしなければ、日本国民にとって、国家とは単に支配者の道具であり、国民は被支配者に過ぎないという状況が続くだろう。その状況は明治の時代から続いている。

新型コロナ肺炎が日本でも本格的な取り組みが必要になり、首相の緊急事態宣言が今日出されるそうである。世界では米国の確認数は36万を超え、世界で確認数と死者数が其々、134万及び74500に登った。

 

日本も非常に暗い雰囲気になってきたのだが、少し明るい話題として、韓国での予想を大胆すぎるかもしれないが、ここに書いてみる。単純な解析なので、全く外れる可能性もあることを予めお断りしておく。

 

先日の記事で、この病気での致死率を2つ定義した。(これは全くオリジナルであり、然るべき学会での議論を経ていない。)

 

① 致死率1(DR1)= 死者数/(死者数+治癒者数)               

② 致死率2(DR2)= 死者数/確認数                                      

 

ここで、この病気の流行が終わって、闘病生活を送っている方の人数がゼロになったとき、この2つの致死率は一致する。なぜなら、全て確認された人数は、治癒するか死亡するかに割り振られるからである。韓国が発表し、John Hopkins大の特設ページに発表されたデータから計算した上記①と②を、日付を横軸にして図示してみたのが、下図である。

この図で、2つの致死率が交わった点が、ほぼ韓国でこの病気の流行が終焉する時期だろうと考えられる。つまり、4月中には、韓国はこの病気をほぼ克服するだろうというのが、今回の予測である。

 

ここで、注意すべきは、この直線的な致死率の変化は、理論的に明確に示されるわけではなく、単に経験的なものに過ぎない。韓国では、3月30日の記事にも書いたように、2月の終わりから、この直線傾向がつづいている。外部からの第二波の感染などがなければ、予測はほぼ的中すると思う。あくまで個人的な見解だが。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12585840544.html

 

日本の場合は、データに信頼性がなく、全く予測不可能であるが、政府の要請に国民は従順に答えるだろうから、5月には、その終焉予測ができると考えている。

 

今日ブログ記事のテーマとした緊急事態宣言は、首相による国家の緊急事態宣言ではなく、特別あらたに議論するほどの法令では有りませんでした。ただ、国家の緊急事態基本法が無いこと、それが独立国家として必須であること、更に、その憲法上の裏付けが必要なことなどは、全て正しい主張だと思いますので、そのまま残します。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12587503729.html

 

同様の新型コロナ肺炎に対する緊急事態宣言は、米国トランプ大統領により3月13日に発せられてました。この文章には、明確にNational Emergency Actの201および301項により、国家非常事態を宣言すると書かれています。(補足1)https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/proclamation-declaring-national-emergency-concerning-novel-coronavirus-disease-covid-19-outbreak/

 

そのNational Emergency Act (EMA; 国家非常事態法)は、1,976年に定められたものです。このEMAに相当する法律が、民主党が準備していた国家緊急事態基本法で、小泉内閣のときに流産した法律です。

 

今回、首相が宣言する緊急事態宣言は、トランプの非常事態宣言とは全くことなることは前ブログに書いた通りですが、その根拠は、今年に国家で一部modify(修正)された新型インフルエンザ等対策特別措置法の32条です。https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=424AC0000000031#216

 

 

この宣言は首相によるものではなく、通常首相が務める新型インフルエンザ等の対策本部長によるものですので、「首相」が出すというマスコミ報道に、ボケた私の頭脳が間違った反応をしてしまいました。北海道知事が2月末にだした緊急事態宣言も、同様のものですが、法的根拠はありません。

 

昨日東京都知事が発表した、入院中の新型コロナ肺炎患者で症状の軽い人は、病院からホテル等の収容施設に移すという緊急の提案も、法的根拠のない人権無視的提案だと思います。(補足2)それは、新型インフルエンザ等対策本部長(安倍首相)による緊急事態宣言を予想して、発表したようです。きっと、首相と都知事とは、意思疎通が非常にスムースな仲なのかも知れません。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-03/Q875PJDWX2PU01

 

これらの動きは、論理的思考に慣れた私には、理解を超えるものですので、ついミスをしてしまいました。謹んでお詫び申し上げます。

 

補足:

  1. NOW, THEREFORE, I, DONALD J. TRUMP, President of the United States, by the authority vested in me by the Constitution and the laws of the United States of America, including sections 201 and 301 of the National Emergencies Act (50 U.S.C. 1601 et seq.) and consistent with section 1135 of the Social Security Act (SSA), as amended (42 U.S.C. 1320b-5), do hereby find and proclaim that the COVID-19 outbreak in the United States constitutes a national emergency, beginning March 1, 2020. 
  2. 入院患者を病状が軽いからという理由で、或いは他に重症者が現れたからという理由で、病院から追い出すのは、特別な法令がない場合人権無視だと思う。厚生労働省の通達があるというのは、不十分な根拠だろう。つまり、病院を追い出される人にとっては、等しく医療を受ける権利の侵害であり、憲法違反ではないのか? それを合法化するには、上記トランプの宣言のように、憲法から、患者をホテル等に移動させる措置を記した法律まで、系統だった説明ができなければならないだろう。