ハマス・イスラエル戦争が1月19日から停戦となった。第一段階で人質交換が行われ、6週間後に第二段階のイスラエル軍のガザからの撤退が始まることになっている。第一段階開始の17日後から第二段階に向けた相談が始まるとされているので、211日現在協議が始まっている筈である。第一段階の終了は恐らく2月末か31日ごろだろう。

https://www.bbc.com/japanese/articles/cglyypdwlwjo 

https://www.bbc.com/japanese/articles/c3vpre7r7x4o

 

ただ、第二段階に入ることがかなり困難に見えるので、2月末までに停戦合意が吹っ飛んで、戦争が再開される可能性がある。そんな中、トランプ大統領により非常にショッキングな内容のコメントが発表された。ガザ地区住民全員を近隣諸国に移住させ、ガザ地区を米軍の管理下に置き、土地の整理やインフラ整備などでガザ地区に人が住める状態にするという話である。
 

「ガザ地区の移住は長期的なのか、それとも一時的なのかなのか?」という記者の質問には、「長期的かも知れないし、一時的かも知れない」と答えた。この発言の詳細については以前の記事に書いた通りである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12884860237.html
 

トランプは現実的な案として、提案したのだろう。米国を訪問したイスラエルのネタニヤフ首相は、「興味ある案であり、考えてみる価値がある」と言ったのだが、困惑していたかもしれない。

 

越境3.0の石田和靖氏がこのトランプ氏の発言を受けて、ひょっとして第三次世界大戦を始めるのがトランプになるかもしれないと言った。その動画の中で石田氏は、トランプ政権の国務長官や報道官は、大統領の発言のマイルド化(部分的打ち消し)に努めていると話している。https://www.youtube.com/watch?v=MO6YIlWCNVA

 

石田氏は、ガザ地区の瓦礫の撤去とインフラ整備は他国に移住したパレスチナの人たちが何れ帰還する時の為と、トランプ大統領が言うべきだったと言っている。そのような理想論は、イスラエルとトランプ政権の繋がりを破壊するだけの効果しかないだろう。非常に狭い枠組みでの思考の結果であって、現実的ではないと以前のブログで書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12884860237.html

 

この動画に対して、以下のようなコメントを書いた:
 

ガザ停戦問題がネタニヤフ劇場などという小さいものではない、イスラエルが世界のグローバリストと連携するかどうかの瀬戸際にあり、世界の最終戦争或いは第三次世界大戦の発火地点となるかもしれないのだ。ダボス会議でのアルゼンチン大統領ミレイ氏の演説を良く分析すべきだ。ネタニヤフは、トランプ、オルバンなどと並んで反グローバリスト(の砦の主)だと話している。

 

つまり、トランプ大統領のこの案を非人道的だと非難するのは容易であるし、それはグローバリストの報道機関であるBBCや米国の主要メディアの行うことである。しかし、もし極右を抱き込んだイスラエルのネタニヤフ政権が潰れて極右政権が誕生すれば、中東から世界戦争が始まる可能性が高くなる。(補足2)

 

ここで指摘したいのは、イスラエルの極右とグローバリストらの極左は、世界を半周した裏で連携している可能性が高いことである。前者は中東のナイル川からユーフラテス川までの大イスラエルの実現を主張するが、後者はそれを含めて地球全体を支配すべく米国ネオコン左翼政権を動かして画策している。(補足3)それが20世紀から存在するグローバリズムの本質だと思う。

 

テロリストであるハマスはグローバリストの操縦する米国ネオコン政権が育てたという説がある。ハマスというテロ集団があるから、イスラエルの極右勢力はイスラエルで一定の支持を得ることができる。ハマスは知ってか知らずかは分からないが、パレスチナ自治区を完全に潰すというの作戦において“呼び水”的(補足4)に利用されていると考えられる。

 

このモデルでは、ハマスらテロ集団は結果としてイスラエルの極右勢力と連携して、大イスラエル構想の実現に協力していることになる。最近、DOGE(政府効率化省)の活躍で、USAIDから大金がハマスに流れたという事実が明らかにされたという。https://www.youtube.com/watch?v=3nQxxix5ltU 

 

 

このあたりの事実が解明され周知されれば、今回の停戦が永続的な問題解決につながる可能性もあるので、米国のDOGEの活動にも期待したい。

 

 

2)我々にできること

 

我々の出来ることは、この土地から逃れて助けを求める人たちを助けることであり、ガザで戦うパレスチナ人を助けることではない。

 

ここまでに至る歴史はもはや100年前の第一次世界大戦の戦後処理にまで遡る。第二次大戦後に、国連によりパレスチナの地に二つの国家の共存が決議されたが、その案でこの土地に平和が訪れると考えた人は恐らく居なかっただろう。

 

現在、世界戦争が始まるかもしれないという国際環境にあり、20世紀につくられた国際法などの政治文化は有効に働かなくなっている。つまり、国家間の関係はより原始的或いはアナーキーな状態にあり、国際法に照らして善悪を判断することは幼稚であり危険である。
 

現在進行形の戦争は、生存をかけたユダヤ人たちとパレスチナ人たち両民族の戦いであり、我々日本人が安易に立ち入るべきではない。当事者は相手方を互いに悪と定めて戦っているのであり、国際法など役立たない現状では、我々日本人は善悪を判断する基準を持たないからである。

 

トランプ政権がネタニヤフ政権に圧力をかけて停戦を実現し、結果としてガザ地区の住民の命を救うことは先ず評価すべきである。ガザ地区の米国による支配というアイデアは、その為に政権の覚悟を示すものだと理解すべきだと思う。

 

当然、イスラエルの極右勢力は軍事的にガザを“真空化”してしまうのがベストだとして反対するだろうし、アラブ諸国は当然ガザはパレスチナ人の土地だとして反対するだろう。中東問題に詳しい石田和靖氏の最近の動画は、そのトランプの努力を、不動産屋の地上げの発想だとして批判しているが、それは非常に不適切だと思うので、以下のようなコメントをアップした:https://www.youtube.com/watch?v=fKnSJGz-7G4

 


 

トランプは不動産屋で、停戦合意の内容はガザを国際リゾートのようにするという地上げ屋的発想だというのは滅茶苦茶です。命がけで大統領になって、命がけでグローバリストと戦う中で、そんなこと考える訳がない。そうではなく、トランプはあくまで停戦実現のための遠景(遠景はぼんやりと描くもの)として米国によるガザ地区支配に言及したのだと思う。時間が経過すれば、イスラエルも正気に戻ると考えているのかもしれない。グローバリスト勢力の全世界支配と大イスラエル構想は、根は同じだと思う。
 

石田氏が言っているイスラエルの分裂というのは、どのような意味なのかは分かりにく。ネタニヤフ政権内に「パレスチナ人なんか人面獣心だ」と公言する極右の財務相や安全保障相が含まれていて、政権間に意見の分裂があるのは事実である。

 

しかし、一旦停戦を実現することが大事である。6週間の間に思わぬところから新しい情況が生みだされる可能性もある。

 

例えば、トランプ政権が進めている“ワシントンの泥沼清掃”により、グローバリストの中東における悪行が明らかになれば、イスラエルの極右勢力の存在根拠が半ば否定され、パレスチナの暫定的な平和につながる可能性が出てくる。トランプ政権がイスラエルをその方向に動かすことに期待したい。


 

終わりに:

 

パレスチナ過激主義者と対立するのがイスラエルの極右シオニストであり、かれらと連携するのが、米国などのグローバリストだと思う。
 

イスラエル国民の大半はアラブの人たちとの紛争を望んでいないと思う。例えばエルサレムの市民の20%がアラブ人であるという事実は、互いに温厚に接する限り共存が可能だということを示している。それをパレスチナ過激主義者が平和を乱すことで、アラブ対ユダヤの対立をスパイラルに増幅することになり(補足5)、世界平和を破壊する方向に導いている。

 

例えば、ハマス・イスラエル戦争の発火点となったハマスによるイスラエル攻撃もイスラエル側の“やらせ”であるという意見も存在する。それはグローバリストとイスラエル極右との連携を意識しての話だろう。更に、米国左翼グローバリストらがハマスを育てていたということが広く知れ渡れば、その永続的停戦が近くなるだろう。  

 

 

補足:
 

1)米国のバイデン前大統領により停戦合意が発表されたのが15日であり、イスラエルのネタニヤフ政権閣議で承認されたのが118日である。バイデンが自分たちの功績のように発表したが、トランプ政権の中東担当であるスティーブ・ウイットコフ氏が重要な役割を果たしたという。実質的にはトランプ政権の成果だったようだ。

 

2)トランプ大統領の狙いは、ネタニヤフ首相に協力し、イスラエル極右のイタマル・ベン・グヴィル前国家安全保障相(極右政党「ユダヤの力」党首)やベザレル・スモトリッチ財務相(「宗教シオニスト党」の指導者)らの強硬路線を抑えて停戦に持ち込むこと、そしてガザ紛争から世界戦争に発展することを防止するのが狙いだろう。

 

3)グローバリストらが地球政府を設立することに成功すれば、環境問題から資源の浪費削減などを地球の人口を大量削減することで、解決するつもりであると考えられる。その理想的な形は、ジョージアのガイドストーンに記載されていた。その詳細は、以前から書いてきた。

 

 

4)呼び水とは、ポンプで地下水を吸い上げるとき、ポンプのパイプ内に注ぎ込む水のこと。パイプの中に水が全く存在しないとピストンを動かしてもパイプ内の空気が膨張と収縮を繰り返すだけで水は汲み上げられない。そこでパイプ内に水を注入して管内の空気を追い出すことで、つまりポンプのピストンと地下水とを呼び水で連結することで地下水をくみ上げることが可能となる。

 

5)10月7日事件23か月後に行われたパレスチナ人へのアンケートでは、このハマスの攻撃は正しかったとする意見が大多数であったhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2023/12/baff3f18d086783e.html また、それと近い時期に行われたイスラエルのエルサレム市民を対象とするイスラエル民主主義研究所(シンクタンク)の世論調査は、イスラエル軍のガザ地区侵攻作戦でその地のパレスチナ人の苦しみに配慮する必要はないという意見が大半であった。https://www.asahi.com/articles/ASRDN419TRDNUHBI00M.html

1)政府効率化省(DOGE)によるUSAIDの整理縮小が始まるまでの経緯


米国の民主党やネオコン(共和党)の国際政治は、世界を自由と民主主義の支配下に置くというスローガンのもとに進められたが、それは表の姿であった。裏には、グローバルな左翼政権(世界政府)を樹立するという目的とその為の作戦があった。(補足1)しかし、誰かがそれを指摘すると彼らはその主張に「陰謀論」というレッテルを張った上で、力で押さえつけるのが常だった。

 

その国際政治を進める中心的存在が政府機関のCIA(米国中央諜報局)やUSAID(米国国際開発庁)だった。それらが巨額の予算を使い、世界世論の左翼化とカラー革命などの政治工作の中心にあったことが、今回のUSAIDの予算使途の公開(後ほど紹介のHaranoTimesの動画参照)で一般にも知れわたりつつある。

そのグローバルな左翼政権樹立の方向が、大部分の人にとって悲劇的であっても、そしてそれを指摘し反対する人がかなり多数となっても、その工作資金の流れの中で既得権益を得ている大統領を含めて多くの連邦議員たちによって進められてきた。

 

その汚れた金の呪縛から米国と世界が逃れるには、米国の政権中枢が金の誘惑に強く、一般市民に深い憐みと、強い愛国心を持つ人物の出現を待つ以外に方法はない。8年前の2017年、そのような人物かもしれないと思ったのが、現米国大統領のトランプであった。

 

2021年に疑惑の選挙に勝利したバイデンが大統領の座に就き、早々にアフガンからの米軍撤退から一年後のウクライナ戦争と、世界が大混乱の中に入ると、民主主義政治だけでなく主権国家体制の世界の秩序が、20世紀の遺物となるのかもしれないという危機に瀕した。

 

2025年、トランプ政権が彼らグローバリストたちの強力な選挙干渉(補足2)などを退けて誕生したのは、恐らく世界史に残る奇跡だろう。

 

そして、米国のグローバルな左翼政権樹立への実行機関であるCIAやUSAIDの閉鎖或いは縮小が、トランプ大統領とその当選に大きな貢献をしたイーロンマスク氏により、政府効率化省(DOGE;Department of Government Efficiency)の設立と同時に、政府の財政赤字削減の名目で進められている。

 

この政策は、それら諸機関周辺に巣くう既得権益者と、その国際政治の構造に気づかない大衆による強い批判(下の写真)を受けながら、命がけで進められているのである。=>NYサバイバルさんの動画

 

 

2.USAIDの整理縮小の意味

 

USAIDは、アフリカ諸国などの貧国に対する食糧支援や保健衛生支援をする慈善機関という表の顔と、世界の左翼化の為のプロパガンダや東欧のカラー革命などを企むという裏の顔を持つ。左翼理想主義者たちの顔と同類の裏と表の二重構造は、真実と嘘の二重構造でもある。

例えば、世界的な報道機関や大学などの教育機関に資金提供することで、言論や思想の誘導を企んできた。例えば、ウクライナの主要メディア10社の内9社、その他BBCなどの国際的報道機関に資金を流してきたことは、USAIDがウクライナ戦争に対する米国の関与の為に働いていたこと(補足3)と整合性がある。つまり、それらはウクライナ戦争に関する情報操作の為だろう。

またUSAIDによる隣国カナダの著名10大学に対する合計55億ドルと言う巨額の支援は、カナダの政治思想を左翼側に誘導する企みで行われたのだろう。その効果かどうかは分からなが、カナダのトルドー政権は期待された通りの極左政権である。

 

そのほか所謂グローバリストの国際政治を進めるためとその真相を隠すために、方々に資金が供給されていると考えられ、今後それらの多くが明らかにされるだろう。(補足4)https://www.youtube.com/watch?v=DPmUhlLtIK4

 

 

HaranoTimesによれば、USAIDから世界に流れる資金の途中に多くの民主党議員や共和党議員の一部が居る。彼らの懐に巨額の資金が流れ込み、それが既得権益化していることは想像に難くない。具体的には、例えば、クリントン財団に8500万ドルという巨額の資金が流れているという。

トランプ政権は、政府効率化省(DOGE)において政府の諸機関を整理し、米国民のための機関として再編する予定のようだが、上記USAIDの本来(表向き)の仕事は、国務省の中に組み込まれるようである。CIAも廃止の方向にあるようだ。

イーロン・マスクは当初DOGEにより政府予算から2兆ドルが削減されると言ってきたが、上記のような急進的改革をもってしても1兆ドル削減がやっとのようだ。それでも物凄い額の削減であり、それが政府財政の改善に役立つ。更に、削減された労働力は他の分野へ振り向けられ、結局労働力を移民に頼る姿勢の変更にも役立つだろう。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-09/SPTZ0MT0G1KW0

 

終わりに:


米国で政府効率化省の働きで、今後CIA、USAIDなどを含む諸機関の活動に関する情報が次々と出てくるだろう。日本は米国の属国的であることはもはや常識であるから、その中に日本の諸機関やマスコミなどが関係するケースも含まれるだろう。

 

その真相究明を切っ掛けにして、日本も米国を見習い、政府の効率化を進めるべきだと思う。霞が関の既得権益層は、米国のこれら機関とも関係がある筈であり、一掃するチャンスかもしれない。

 

日本全体の労働生産性向上と平均賃金を上昇させるためには、企業だけでなく政府においても効率化を進めなければならない。省庁を増加させる一方の従来の政治では、政府の効率化減少と腐敗の温床をつくるだけだと思う。

 

 

補足:

 

1)世界史におけるこのような試みの最初は、ユダヤ系のレーニンやトロツキーらによるロシア革命と世界共産革命であった。21世紀のグローバリストたちの企みは世界史上二回目の世界帝国建設の動きであるが、その動きは分かりにくい。しかし、①国境の意味をなくす動き、②各国の伝統的価値観の破壊、③有力な伝統国家を崩壊に誘導、④地球環境問題、食糧難、そしてパンデミックなどを切っ掛けにして、世界連携を余儀なくさせる、などとして明確に始まっている。④の世界連携と言えば聞こえは良いが、そこからこぼれた人たちには悲劇的運命を強いる。この革命の実行者であるグローバリストたちは、支配者として特別の待遇を受けることになる筈である。

 

2)トランプ氏を司法機関を武器として、大統領候補者から排除しようとした。

 

 

3)2014年、選挙で選ばれた親ソ派のヤヌコービッチ大統領をデモやテロなどで追い出し、親米のウクライナをNATOに加盟させようとする政権を樹立した政変(マイダン革命)は、米国国務次官補だったビクトリア・ヌーランドの指揮により進められたことが知られていたが、今回その資金がUSAIDから出ていることが明らかになったようだ。2022年に始まったウクライナ戦争は、その政変から連続するウクライナ対ロシアの紛争である。

 

4)HARANO Timesさんの動画(上に引用)によると、武漢のP4研究所に新型コロナの原因ウイルスの開発資金も直接ではないもののUSAIDから出ていたことが明らかにされている。

 

(2/11, 早朝補足3の編集ミスを修正)

1)日本の労使関係:封建的会社組織(補足1)

 

日本の労働者と会社(使用者)との伝統的関係は、入社式や永年勤続表彰(今はまれかもしれない)の慣習でも分かるように、封建的な特徴を持っている。雇用された労働者は、雇用主である会社の仕事を中心に生活設計をしなければならない。会社と雇用者との関係は、主人と家人の関係でに似て、会社が必要とすれば、誰であっても玄関掃除までもすることが期待された。

 

しかし現代、高度な産業技術社会となり、労働者の多くは高度な専門的知識と技量を必要とする場合も多い。そのような環境での経済発展を考える場合、日本はこの伝統的労使関係を変えなければならない。何故なら、この労使関係では本当に優秀な人の雇用や、その継続が困難となるからである。

 

そして、労働者を測る物差しとして、専門的な優秀さの尺度だけではなく、人間的とかいう全人格を対象にする尺度が同等に働く状況を排除しなければならない。そもそも、会社の組織からして近代社会に不適合な場合も多い。その例は最後のセクションで触れる。

 

現在の労使関係では、本当に優秀な人材の多くを定年という区切りで失うことになる上、若くして“裏切って”他国に職を求めるかもしれない。また、雇用を最優先するあまり会社が傾くことになっては元も子もない。更に、そのような雇用文化の中で国全体の技量が低下する危険性もある。

 

つまり、現在の高度な機能体的会社においては、労使関係を①封建的なウェットな労使関係から②経営者と労働者の間のドライな労働契約の関係に改めなければならないと思うのである。後者の労使関係は、人間的関係というよりも労働提供の契約関係である。

 

この労使関係では、優秀な人材には高い給与を支払う必要があるので、労働者間に大きな給与格差が発生する可能性が高い。その結果、人件費は全体として相当高くなるだろう。労働者が年齢以外ではほぼ均一である時代には労働組合が大きな存在であったが、本質として労働者ごとに報酬が大きくことなる時代となれば、その意味が低下するだろう。(補足2)

 

労働者はそのような給与差の中で、機能体である会社内で円滑に連携をとる必要がある。その様に労働者が多層均になれば、仕事上で発生した人格的人間関係は消えるだろう。人格的人間関係は仕事とは無関係にプライベートに求めることが全てとなる。欧米では、アフターファイブの飲み会はほとんどないだろう。


 

2)就学と就職の人生における意味

 

封建的な労使関係では、就職はその後の人生の大半を決定する重大事となる。一旦優良企業に入社すれば、その後の人生は安泰となると考えられ、日本人の大半はこの人生モデルを主軸として結婚や教育などの人生における諸要素を考えていると思う。学歴の役割は、(テレビのクイズ番組で役立つ人を除けば)就職した時に終わる。

 

一方、契約的労使関係が主流になれば、労働者は自分の技量と知識を会社に売りつけなければならないし、会社の経営者はより高い技量と豊富な知識を獲得すべく候補者を評価しなければならない。その結果、上に述べたように全体として人件費が上昇し、会社に労働生産性のための投資を促す筈。

 

労働者側では、自分の技術を高める努力を現在の会社で仕事(フルタイム)を得る前になされなければならない。そのために、大学も学歴獲得のためではなく、明確な目標をもって実力養成のために選び勉学に努めなければならないだろう。
 

そのようになれば、現在の大学等の教育機関も大きな影響を受け、入学試験の人生における比重もそれほど大きくはなくなるだろう。学歴社会と封建的労働環境は1:1の関係にあると思う。

 

このように考えた場合、世界での経済的地位を向上させるには、西欧が作り上げた近代技術社会に文化的に適応しなければならないことを意味し、簡単ではないことが分かるだろう。政治家もそのような点をよく考えて、労働問題、教育問題、経済政策等を立案すべきである。現在のように世襲政治家が財務省を批判するだけでは、日本は近い将来途上国となるだろう。

 

尚、②の契約的労使関係の会社では、会社の上層部であるCEOなども労働者と言えるかもしれない。所謂サラリーマン社長である。会社は株主の所有であるから、日本でも株主は会社の経営に対して注文をつけることが普通になるだろう。

 

ただ、株の大半は所謂機関投資家と呼ばれる者、多くの場合投資会社や各種基金等なので、それら大株主によって会社経営者が選定されることになる。最近、各会社経営者が利益の株主還元を重視するのは、このような事情が背景にある。

 

株主は、会社が破産すればその責任を株が紙屑となることで取らなければならないが、労働者もサラリーマン社長もそれ程大きな損はない。(補足3)

 

(補足1の街頭演説でもちいられたスライド;演説主は高い株主還元率を批判している)

 

社長等経営者は、一般労働者と株主の間に立つ存在であり、本来、封建時代の“殿様”(或いは天皇と呼ばれる存在)の様にはなり得ない。日本ではそのような例が多々見られるのは、会社の人事が封建的に進められてきたからである。


 

3)古いタイプの会社とそこでの人間関係

 

現在、国際的競争に晒される先端的業種での労使関係は、殆ど上述の②のタイプに近くなって来ているだろう。そうでなければ、高い国際競争力など維持できないだろうと思う。

 

その一方、国際的競争下にない業種では、恐らく①の封建的労使関係のままだろう。労働者を大事にする会社と言えば聞こえが良いが、それは現在のドライな人間関係になりつつある社会全体に陰湿な人間関係の島或いは蛸壺のような空間をあちこちに作っている。
 

最近、テレビのニュースにおいて話題になっているフジテレビという会社もそのような会社の一つだろう。その他にも芸能関係や放送関係での性被害のテレビ報道が多く、視聴者の一人としてウンザリしている。

 

そのような番組では、性加害者と考えられる有名人を袋叩きにして、報道する側と視聴者の側の両方で鬱憤晴らしをしている様で、非常にみっともなく見える。テレビ放送の中身が日本の文化の反映だとすれば、日本全体の恥だろう。報道関係者には、放送法第一条を良く読めと言いたい。

 

ここ一か月ほど話題となった上記フジテレビの件では、女性アナウンサーには容姿を含めての技術・能力だけでなく、本来労働契約にないことが要求されたことになる。将に全身全霊で会社に尽くすことが要求されたのだろう。その陰湿な労使関係は封建体制そのものである。
 

その風通しの悪い会社の中心に40年間その会社の天皇と呼ばれた87歳の絶対権力者が存在するようだ。https://www.mbs.jp/news/feature/specialist/article/2025/01/104943.shtml


その放送局の持ち株会社に対して、アメリカの投資ファンドは、企業統治に欠陥があると指摘した上で、取締役相談役を務める上記87歳の方の辞任を求める書簡を送ったようだ。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250204/k10014711631000.html

 

この放送局は、フジメディアホールディングスという親会社が運営する筈なのだが、そこの経営者もフジTVの「天皇」には手が出せなかったのである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c13c87be8a52386ecbb95f0ee0171cb98837fc7f
 

勿論、その殿様にどの程度の責任があるかは不明だが、そのことが暗示する古い封建的人間関係で、この会社と放送局が成り立っていたことは事実だろう。中世では、女性はcommodityと見なされていたのだが、その時の文化が現代日本の純粋にdomesticな会社には蔓延しているのだろう。
 

性加害者の人物は、その中でその放送局に自分の出演を独占的に約束し、その対価として賃金とその特殊サービスとを受け取っていたのだろう。問題の本質は、その人物が有徳の人物では無かったことにではない。徳などはヒトという動物の表面にある薄皮一枚でしかない。(補足4)その会社の労使関係が、近代的ではなく古い封建的体制にあったことである。
 

つまり、この問題はフジテレビだけでなく日本全体の問題である。このような観点からこの件を論じたTV報道等を見たことが無い。つまりそのような労使関係は、日本中に空気のように存在していても多くの人には見えないのである。これでは日本という国が途上国化するのは時間の問題なのだ。


 

補足:
 

1)この記事を書く動機となったのは、ある政党党首の街頭演説のyoutube動画に対してコメントしたことであった。その動画は:https://www.youtube.com/watch?v=R8ITX_2bpQQ

 

そのコメントは:

参政党を応援する者ですが、経済についての議論は慎重になされた方がよいと思います。賃金が上昇しないのは、労働者と経営者の関係において労働者が弱いからです。それは一生会社に奉職するというタイプの日本文化の弱点です。毎年4月の入社式(その文化の象徴)なんて、バカげています。この文化を乗り越えて、労働の流動性と同一労働同一賃金の厳守が達成されれば、労働者個人は自分の資質向上に努めることがより強く要請されますが、会社と賃金交渉を他社と天秤にかける形で可能となります。労働生産性の向上には、会社の投資と労働者の資質向上の二つが必要です。

 

2)この文章の意味は職種ごとに細かく給与を設定するという意味である。その算定にあたって、一定のルールが定められているべきなのは言うまでもない。

 

3)最近、〇〇ホールディングスという名前の会社が多くなった。それは持ち株会社であり、複数の会社を一段上から経営する。更に、その持ち株会社にはより大きな存在として機関投資家が存在する場合もある。それら機関投資家には、〇〇基金や△△銀行や別の大会社などが存在する場合が多い。なお、フジテメディアホールディングスの在米株主によって、フジテレビの天皇と呼ばれた人物を解雇するよう要求書が経営者に提出された。

 

4)このことは、国家が歴史の中で作り上げた国際法などの文化と相似的である。本来野生の原理で動く国家がつけている薄皮一枚に過ぎないことを、イスラエルによるガザにおける民族浄化が教えてくれる。しかし日本国民の殆どはそれを学んでいないのは、この低レベルで外国支配のTVの所為である。

 

 

 

(2月6日早朝全面的に編集、補足4を追加)