前回、米国は世界平和のためにこれ以上NATOの東方拡大をすべきでないと言う趣旨の文章をアップした。そこでその理由を詳細に説明したが、米国在住の方よりコメントをいただいた。それは正論であるが、議論の立場に違いがあるように感じて、返答した。そこから今回議論を始めようと思う。(補足1)

 

コメントの概要は以下の通り:

プーチンの侵略は、ナチスドイツの戦争責任を追及したニュールンベルグ裁判における戦争犯罪にあたる。プーチンはウクライナの意思と主権を全く無視し軍でウクライナを包囲しNATO が永久に拒否しなければウクライナに侵入すると脅かしている。過去の経緯はどうであれ、国連憲章違反。

プーチンのロシアは治安維持法下の日本のような独裁国になっている一方、ウクライナの一般市民は民主主義資本主義を基本原則とする西側につきたいという意思は当然のことです。

 

これに対する返答の要旨は:

思考の枠組みを国連中心の現在の国際政治の枠組みとした場合、chukaのブログさんのおっしゃる通りです。従って、現実の外交においては、日本政府はロシアのやり方を批判します。それは西欧諸国も同様だと思います。今回、この思考の枠組みについて触れなかったのは、拙かったと思います。

 

つまり、現在の国際政治の頂点にある米国民主党政権の論理では仰る通りだが、もう少し原点の方から議論すればロシアにもロシアの言い分があると書いたのが前回記事である。そこで、前提となる「思考の枠組」について予め触れなかったのは、拙かった。

 

今回は、上記返答における「思考の枠組みの違いで生じた噛み合わない議論」について、説明したい。必要なら次回以降に、ウクライナ問題に適用してみたい。

 

1)思考の枠組の例1: 親鸞の言葉

 

”思考の枠組”とは、論理的に話を展開するための諸前提のセットである。思考や議論において何らかの矛盾が発生したとき、これまでの思考の枠組を再設定することで矛盾が解消する場合が多い。尚、思考の枠組の設定指針がわかる様に代表的な人物等で表現したものが、“XXの立場”である。

 

抽象論だけでは分かりにくいかもしれないので、具体例をあげる。思考の枠組を代えることで、とんでも無い意見が崇高な言葉に変化する場合がある。親鸞の「善人なおもて往生を遂ぐ、況んや悪人をや」である。現代語では、「善人でさえも極楽に行けるのだから、悪人が救われるのはいうまでもないことだ」となる。

 

この言葉は、善人とは社会の規則を守って生きる人の意味だが、悪人と言われる人たちから“善人”を形容すれば、自分勝手に作った規則で富を独占し、善人面する人たちということになる。これは、親鸞による全ての衆生を仏にするという弥陀の本願の一表現だろう。

 

食糧が全人口の95%しか養う分しか無い状況に追い込まれた社会では、何が起こるだろうか? 言うまでもなく、食糧の奪い合いが起こるだろう。その社会が、武力によって秩序が維持されている状況であれば、富者が食糧を独占し、貧者は飢え死にするだろう。通常、法或いは掟は常に富者により定められているからである。

 

その状況下で「生きると言う点において全ての人が平等である」という前提で、食糧分配の方針を議論できるだろうか? 不可能である。親鸞が生きた時代は当に、そのような状況の社会だったと思う。そのような状況下で、飢えた赤児を抱えた男が、富者の家に押し入り財或いは食糧を強奪した罪で捕らえられたとする。その者は悪者とされ、打首となるのは必定である。社会の秩序とは、そのようにして護られる。

 

刑死する前に、悪事を為した故に「あの世」で地獄行きを宣告されることを心配する罪人に対して、親鸞が「善人なおもて往生を遂ぐ、況んや悪人をや」と言ったとしたなら、それは誰もがなるほどと思うだろう。つまり、激烈だと思われた親鸞の言葉は、「生きると言う点において全ての人が平等である」という「思考の枠組」で、あらゆる神や宗教に囚われずに、自分の思想を説明しただけなのだろう。(補足2)

 

現在の社会でも、例えばマスコミで報道される分析などは、ほとんどの場合、多数或いは一番金と力のある者が都合よく作った「思考の枠組」の下に作られた話である。それに洗脳された一般民は、その枠組みの存在にすら気がつかない。

 

2)思考の枠組の例2:文化圏での限界

 

真実追求の議論において、「思考枠組の転換」が重要なより一般的な場合を挙げる。弁証法的に問題を解決する場合である。Aの立場とBの立場が議論でぶつかる場合、ABの立場を融合した新しい立場(つまり新しい思考の枠組)で問題を整理することで、矛盾を解消できる場合が多い。そのプロセスを弁証法では、止揚と呼ぶ。(補足3)

 

裁判でこの考えを説明すると、弁護士は犯罪人の立場、検事は検察側の立場から、精一杯証拠を探し出し論理を駆使して議論する。最後に裁判官が、両方を融合する立場、つまり拡大した思考の枠組で、全ての証拠を一組の論理で組み立てて結論を出す。裁判は弁証法を利用している。

 

この「思考の枠組」を意識することは解決に至るプロセスにおいて重要だが、この弁証法的プロセスでは、立場A と立場Bを包含する以上の広い立場を取り得ないことの意識も重要である。それらが共に、偏見の下に存在した場合、そこから外へ思考の枠組を設定できない。

 

つまり、裁判ではその文化圏の外に思考の枠組設定はできない。従って、韓国の裁判には日本文化の下では理解不能なことが多い。例えば、親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法などは、韓国の論理の限界を示す。日本のように単一文化単一民族の国でも、日本文化という思考の枠組の存在に気がつかないことがほとんどである。

 

異なる国家間の対立の場合、上記のように問題解決できない場合が歴史上多かっただろう。その場合でも、戦争により決着をつけるというのが、西欧でできた拡大版の思考の枠組である。この(クラウゼヴィッツの戦争論)論理で考えた場合、戦争の後で裁判をするという東京裁判などは茶番以外の何物でも無い。米国中心のやり方は、西欧文化の延長上には無い。

 

日本には、明治の時代に出来上がった天皇制という思考の枠組に囚われている人が、知識人のなかにも非常に多い。右派の方々、百田尚樹から馬渕睦夫さんまで、天皇制に強くこだわっている。現在、民族主義への過剰なこだわりは日本の破滅に至ると私は思う。天皇制は維持する方が良い、もっと軽くエレガントに維持できるなら。

 

3)思考の枠組の例3:米国の場合

 

米国のように複雑な民族構成の国では、立場の違いは明白であり、思考の枠組の拡張による問題解決法に気付いている人が多いだろう。ただ、狡猾な一派がマスコミを支配することで、形だけの立場二つ(つまり民主党と共和党)を作り上げ、「立場の違い」の論争を作り上げ利用してきたと思う。

 

レーガン政権の時、彼らは支配力強化のために、マスコミの公共性を廃止し自由化を実行した。マスコミを支配し国民を洗脳するためである。例えば水野道子氏は、「レーガン政権の通信政策における希少性と萎縮効果」(メディアと文化第3号)で以下のように書いている。

https://www.lang.nagoya-u.ac.jp/media/public/200703/Newworks2007.htm

 

連邦通信委員会( FCC) は、電波の寡占にともなう表現の画一化を避けるため公正原則という規則を制定した。 公的に重要な争点に妥当な放送時間を割き、対立する見解を公正に報道するという義務を放送事業者に課したものである。

 

周波数帯の希少性が多メディア・多チャンネル化による電波を利用した表現手段 の増加で解消され、さらに公正原則が放送事業者の表現手段に萎縮効果を与えるということを根拠に、1987 年レーガン政権下の FCC は公正原則を廃止した。(短縮のため原文を少し編集)

 

その4年後のソ連崩壊(1991年)で、米国の一極支配の世界が出来上がった結果、彼らの一派はイラク戦争、カラー革命やアラブの春などを背後で操りながら、世界の金融のドル支配、産軍共同体の利益拡大などに邁進したのだろう。(補足4)

 

その一方、米国市民には誤魔化し続けた。それが可能となったのは、当に、このレーガンの改革があったからであり、上記狡猾で世界の富の多くを持つ一派が、メディアを支配し、「自由、人権、民主主義という近代人類の共有する価値」という幻の思考の枠組を作り上げて、一般市民の洗脳に利用したと思う。

 

最初は、既に述べたように、共和党と民主党という二党の議論で、弁証法的に真実を確認するという形で米国を牛耳ってきた。しかし近年、インターネットなどで、新聞やテレビ以外の情報の流れが大きくなり、より知的な保守の人たちにはその支配の構造が理解された為、民主党を主な足がかりにすることになったのだろう。

 

その後、民主党支援団の中から、とんでもない論理が現れる。例えば、 BLMCRT critical race thory; 補足5)である。上記狡猾な人たちの戦略も限界に近づいたのである。そんな中、民主党応援団の一角だったCNNがトランプ支援に回るという可能性が指摘されている。

 

 

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=FLWnq-XZMn0

(18日7:00、2、3ヶ所の日本語修正)

 

補足:

 

1)本文は文系学問には素人の筆者が、自分の知識の整理のために書いたものです。ここで用いる「思考の枠組」「立場」などの用語は、理系出身の筆者が勝手に用いたもので、社会科学で用いるものとは異なる可能性が大だと思います。その点ご了承ください。

 

2)法然の弟子である親鸞は、浄土真宗の開祖であるが、青年の時に比叡山に修行のために入山する。天台宗の道場である横川中堂で修行するのだが、その苦行に疑問を感じて下山する。比叡山の思考の枠組に囚われている多くの青年修行僧であったなら、浄土真宗は生まれなかっただろう。

 

3)多くの文化系の人には、釈迦に説法だが一応書いておく。1970年代の学生運動盛んなころ、活動家がテーゼ(立場A)、アンチテーゼ(立場B)、アウフヘーベン(止揚; 解決)と鸚鵡のように繰り返し言っていたのを記憶している。活動家が関心を寄せたマルクスの唯物弁証法は、歴史の進展を矛盾の発生(つまり、ABの対立)と解消(矛盾の止揚、アウフヘーベン)の形で理解する思想であると私は理解している。

 

4)イラク戦争では、イラクのフセインが原油取引をユーロで行うことを考えた。それでは米ドルの支配が揺らぐので、サウジアラビアと協力して米ドルでの原油取引決済を維持し、その一方でフセインのイラクを罠にかけて、戦争に巻き込んだ。

 

5)米国に移住した一部の有色人種に属する人たちは、「米国は白人が支配し、白人が富を蓄積してきた。従って、白人たちが積み上げた富の1/4位は、有色人種に無条件で分配されるべきである」と発言する人もいると、誰かがyoutubeで言っていた。そこですこしgoogleで調べると、確かにその類の議論が出てきそうな気がする。引用の記事を読んでもらえればわかる。https://diamond.jp/articles/-/248160このCRTを持ち出す人たちは、平然と米国の法律に反することを言っている。それは思考の枠組みを原始の状態からの議論ができるまで広げてこそ成り立つものである。

ロシアのウクライナ侵攻の可能性が心配されている。しかし、プーチン露大統領は実際にウクライナ侵攻するつもりはないし、侵攻は得ではないと言うのが、大多数の見方である。一言で以下の文章の結論を言えば:米国がNATOの東方非拡大を約束すればプーチンは兵を引くだろうから、1990年の国務長官の発言のとおり、NATOの東方拡大を止めるべき。https://news.yahoo.co.jp/articles/fd8419415de12d4b2a9fd356d376f5e4104d5831(補足1)

 

1)今回のウクライナ危機の概観:

 

今回のウクライナの件は、ウクライナのゼレンスキー大統領が2014年のミンスク合意を無視しようとしたことが、プーチンの国境への軍隊配備を誘発したと言える。ミンスク合意とは、2014年のウクライナ危機後の安定を取り戻す交渉で、ウクライナ東部ドンパス地方に強い自治権を認めることを全欧安全保障機構(OSCE)が中心に纏めたものである。https://www.dir.co.jp/report/research/economics/europe/20220210_022836.html

 

その合意の履行に関して、独、仏、露、ウクライナが10日(2022/2/10)、ベルリンで高官級協議を開いた。https://news.yahoo.co.jp/articles/5db434f0b011d3887f8478ac43c509d2b67ad537

しかし、その履行がなかなか困難なのは、ロシアの要求通りにすればウクライナが東西に割れる可能性をウクライナ政府が心配するからである。

 

ロシアがウクライナへ侵攻する姿勢を示すのは、隣国ウクライナのロシア敵視の軍事同盟であるNATOへの加盟を阻止するためである。元々ウクライナとロシアは非常に近い関係にあり、ロシアには必要な国でもある。そこに、米国の核ミサイルが並ぶことだけは阻止したいのである。

 

そのロシアとウクライナ関係を示唆する出来事が最近あったようだ。全ロシア将校協会がウクライナ侵攻に反対する書簡を書いて公開したという。このままではロシアとウクライナが永遠の敵同士になり、更にロシアの存立が危うくする政策だとして反対しているというのである。(補足2)

 

元々プーチン支持のロシア軍の将校たちが、ウクライナとロシアの関係を心配しているのである。何故、元々非常に近い関係にある両国を裂き、ウクライナも東西に割くようなことを米国は企むのか。

 

米国クリントン政権、或いはその背後の勢力に、ウクライナをNATOに加入させることで、ロシアとの間に楔を打ち込み、両国を混乱に持ち込み、それに乗じて利益を得ようという考えがあったのではないだろうか。

 

2)NATO の東方非拡大を一旦考えた米国が、何故それを撤回したのか。

 

東ドイツが民主化されて統一ドイツができる時、アメリカのベーカー国務長官がゴルバチョフと会談した。その際、NATOを東方へ拡大しないことを約束したという記録が残っている。それにも拘らず、その後米国大統領になったクリントンがそれを反故にしたのである。今こそ、バイデン政権はそれを世界平和のために提案すべきだと思う。https://nsarchive.gwu.edu/document/16117-document-06-record-conversation-between

 

そもそもNATOはソ連を対象につくられた軍事同盟である。それにも拘らず、ソ連崩壊後も縮小されなかったことが不自然である。ミンスク合意の履行をウクライナに迫るよりも、NATOの東方への拡大をこの辺りで止める決断を欧米はすべきだろう。

 

NATOは軍事同盟であり、世界最大の軍隊を持つ組織である。ロシアは現在“危険な思想”の国ではないのだから、それをロシアの隣国ウクライナに持ち込むのはおかしい。(追補1)そのプーチンの思想だが、米国民主党のものとはかなり異なるのは確かである。しかし、危険ではない。

 

aプーチンは主権国家を大事に考え、そのベースとして秩序ある伝統的家庭の形を大事にする。欧州各国は、もう少しプーチンの思想に理解を示すべきであると思う。異常なのは米国民主党の思想である。国境は明確でなくても良いとして、中南米から大量に不法移民の入国を結果的に許したり、家族もバラバラで良いとする左派の考えは世界を混乱に導くと思う。

 

https://www.youtube.com/watch?v=glOGf4spm78

 

異なる思想を認め合うのが自由主義なら、ロシアはロシアの思想をもっても良いのでは無いのか? 勿論、プーチンが大ロシアの再興を考えているとしたら、警戒は当然のことである。しかし、現状拡大しているのは、NATOの方でありロシアではない。 

 

仮に、米国が個人の自由と人権を大事にする民主主義のリーダーなら、民主化の途上にあるロシアを敵対視するNATOは、例えば今後30年間、暫定的に東方非拡大とすると言っても良いのではないのか。

 

この米国の不思議な政策については、ソ連崩壊後の政治経済を勉強しないと分からない。素人ながら少しネット検索してみた。(本文章は、素人が自分の考えを作り上げるために書いたと理解いただきたい。)

 

 

3)オレンジ革命とウクライナ危機 (補足3)

 

ウクライナの2004年大統領選挙は、親ロシアのヴィクトル・ヤヌコビッチと親欧米のヴィクトル・ユシチェンコの戦いとなった。この選挙の前には、ユシチェンコの暗殺未遂事件があった。ダイオキシン類が食事に混入していたとされている。ひどいニキビ顔になったユシチェンコは同情票をもらって、選挙に望んだのだが、ヤヌコビッチに負けるという結果になった。(補足4)

 

ユシチェンコ側は、ヤヌコビッチが当選したのは不正選挙のせいだと主張し、大規模なデモが展開された。最高裁の裁定(判決ではない)により再選挙の結果、5244でユシチェンコが勝ち、大統領に就任した。これをオレンジ革命と言う。それは、東欧のカラー革命と言われる一連の政変の一つである。(補足5)この大規模デモを応援したのが、米国民主党の背後に居ると思われるユダヤ人資本家のジョージソロスである。

 

しかし大統領となったユシチェンコはウクライナ経済にテコ入れが出来ず、汚職を放置するなどで人気を無くし、2010年の選挙では結局ヤヌコビッチが大統領になった。その後2014年、上に書いたように、ヤヌコビッチの汚職などの腐敗を民衆が追求して大規模な暴動が起こり、ヤヌコビッチはロシアに逃げた。この暴動を支援したのが、ソロス財団だというのである。

 

更に、紛争を引き起こした側の一角に米国CIAの発注により軍事会社Academi (Black Water)が派遣した民間兵士が居たという説がある。つまり、英国のDaily Mail配信のニュースによれば、ドネツクなどでその民兵が武器をもって街を闊歩する様子が撮影され、ロシア側からその件が発表された。

 

彼らは記章をつけていないので、政府の兵士ではない。集まった民衆の中からBlack Water と言う声を聞くと、そそくさと去る様子が映されているとのこと。ロシアのTVもこの傭兵を米国から派遣された者として報じたので、Daily mailはその点をBlack Waterに問い合わせたが、返答がなかったと記事には書かれている。

https://www.dailymail.co.uk/news/article-2576490/Are-Blackwater-active-Ukraine-Videos-spark-talk-U-S-mercenary-outfit-deployed-Donetsk.html

 

以上総括すれば、今回だけでなく、ソ連崩壊後の東方のゴタゴタには米国の影がある。更に付け加えれば、2014年、米国大統領府でウクライナを担当していたのが現在の大統領バイデンである。その際バイデンの息子のハンターや当時国務長官だったジョンケリーの娘婿などが、ウクライナのオリガルヒ(ガス会社が中心にある)から巨大利権を獲得した疑惑がウクライナ疑惑である。

 

この辺りは、浜田幸一という国際政治学者の見方のようで、及川幸久氏もこの見方を採用して動画を配信している。ウクライナの政治にちょっかいを出したのは米国の方なのだから、この際、NATOの東方非拡大を約束すべき。https://plaza.rakuten.co.jp/sun7249/diary/202202060004/ 

 

 

4)ソ連崩壊後の経済:東欧に新興財閥を作って経済乗っ取る企み

 

米国がNATOの東方非拡大を反故にしたのは、米国政府とネオコン勢力が旧ソ連の東欧諸国の政治と経済を自分達の支配下におきたかったからだろう。NATOという欧州にとって最重要な軍事同盟を維持することで、欧州でのリーダーシップを維持し、それを強固な“足がかり”として利用している疑いがある。

 

ソ連の崩壊後に、旧ソ連は15の独立国となった。そこでの国有企業の個別化と民営化には、経営者や雇用者などの明確化や債務・債権の整理が必要だし、銀行との金融関係なども作る必要があるだろう。政府の企業支配が薄れ、財閥支配に移る過程で不正が多くなされただろうことは想像に難くない。

 

ロシアでは、エリツインの時代の10年間で、新興財閥(オリガルヒ)の支配する市場経済の国に代わっていたが、その結果生じたオリガルヒの多くはユダヤ系であった。それは、おそらくIMFの関与で育てられた新興財閥なのだろう。https://www.kyodo-cpa.com/report/2009/0401_225.html

 

1991年のソ連解体後、ロシア大統領に就任したエリツィンは、ソ連の経済体制を一気に資本主義化し、世界の市場経済に組み込むべく取り組んだ。それに協力したIMF(国際通貨基金)は、ロシアに対する外貨貸付をてこに資本主義化と多国籍企業のロシア進出をアレンジした。上記文献は、その基本を以下のように書いている。

 

① 市場経済の導入すなわち国有企業の民営化による新興財閥の育成と多国籍企業の進出促進

② ロシア国家財政の赤字圧縮を理由とした年金福祉制度の後退、補助金等の打ち切り

 

このロシア経済を西側に開くプロセスで、ルーブル安とハイパーインフレが進むのは必定である。そして、ロシア人は文無しになり、ほとんどの資産は高い通貨の国、つまり米国人系の所有になった。IMFや米国中央銀行のFRBはユダヤ人の下にあるので、新興財閥の多くはユダヤ人のものとなったのだろう。

 

このユダヤ人オリガルヒの多くを追放したのが、2000年に第2代の大統領となった元KGB(国家保安委員会、米国のCIAに相当)出身のプーチンである。そのプロセスで、プーチンはユダヤ系資本と敵対するようになった。つまり、ユダヤ人財閥といえども、ロシアの国家主権は奪えない。そこで、プーチンは上記のような理不尽を国家主権を用いて、(理不尽に)解消したのだろう。

 

ウクライナも同様に、オリガルヒ支配が続き、結果として国民は貧しい状態が続いている。現在の大統領のゼレンスキーも、喜劇役者からドンバス(=ウクライナ東部地区でロシア人が多い)戦争(2014年から続いている)の終結とオリガルヒの汚職・腐敗によるウクライナ国家への影響を阻止することを公約に掲げて当選したという。

 

地政学的にロシアの喉仏にあたる位置を米国の支配下に置くことは、世界を不安定にすることは明白である。仮に、ユダヤの資本家たちが期待するように、ロシアが消滅するにしても、それには非常に長い時間を要する。それまでは、ロシアが数万発の核ミサイルを持って暴発しないようにすべきである。これらの問題は、中露同盟という最悪の結果を招く危険性を避ける意味でも重要である。

 

以上で今回は終わりたい。あまりにも複雑で手に負えないというのが実感である。

 

一言付け足し:ソ連解体の時の核兵器の多くがウクライナにあり、そのロシアへの移送という決断をウクライナがしたのだが、それと絡めて今回のウクライナ危機を論じる人がいる。

  ロシアの卑劣な裏切り。正直者が損をしたウクライナ危機の真相 - まぐまぐニュース!

勿論、ウクライナが核を大量に保有していたなら、現在全く違った事態にあるだろう。しかし、今回の事態の原因ではない。

(午後5時に編集;14日早朝少し編集、()内を追加)

 

追補:

1)日清日露は、日本の隣国までロシアの脅威が近づいたことが原因である。ロシアの反応は、同様のモデルで理解可能である。キューバにソ連軍が近づいたとき、ケネディは海上封鎖して、それを防いだ。隣国への核兵器配備の可能性を排除するのは、自衛権行使の範囲だろう。

 

補足:

1)引用のNewsSocraの記事は分かりやすい。この時の経緯と、NATOのそもそもの役割を考えて、今後の東欧の安定のために、東方非拡大を決断すべきであると思う。

 

2)最近、このウクライナ問題に詳しい政治評論家の北野幸伯氏が、この緊張状態がプーチンの下手な戦略による可能性を示唆するメルマガを配信した。(北野氏のメルマガ)それによると、ロシアのイヴァショフ元上級大将が率いる全ロシア将校協会が、ウクライナ侵攻に反対するプーチンに対する書簡を書いて公開したようだ。元々、プーチンを応援してきたこの協会が、ウクライナへの侵攻は、ロシアとウクライナを永遠の敵にする可能性があり、更に、ロシアの存立を危うくする政策だとして反対しているというのである。

 

3)この表題は、元駐ウクライナ大使の天江喜七郎という方の文章の表題を借りた。この文献ではウクライナ大使の視点から、オレンジ革命と2014年の政変は一連の流れの中にあると指摘している。

http://www.eb.kobegakuin.ac.jp/~keizai/v02/data/pdf/201509amae.pdf

 

4)2004年の9月の週末友人とダーチャ(郊外の別荘)で食事をしたあと、中毒になり死線をさまようことになる。ダイオキシン類による中毒とされているが、真相は明らかにされていない。直接のきっかけである食事まで特定されながら、真相は闇の中というのはいささか合点がいかない。補足1に引用の元ウクライナ大使は、「外国諜報機関による毒殺未遂説や自作自演説などが噂されたが、真相は未だに闇の中である」と書いている。噂の外国の諜報機関とはC●●のことではないのか?

 

5)更に、補足1で引用の天江氏の論文に、「オレンジ革命は自然発生的な面と、事前によく計画され実行に移された面の両面があるように思う」と書かれている。更に、ユシチェンコの配偶者が米国国際開発庁に勤務していた米国人であったことから、その結婚が「反ユシチェンコやロシアなどから米国の情報機関の政略と受け取られたようだ」と書いている。

 ーーーおわりーーー

明治以降の日本人は、外の世界(“海外”)を先進的であるという前提で政治を考えて来たようだ。西欧から新しい良い文化を取り入れて、日本に残る古い悪い江戸文化を放逐するという思想は、明治政府の自国民向けプロパガンダであった。その文明開化の時の世界観が、未だに日本人及び日本人政治家を陰から支配している。(補足1)

 

明治から昭和の時代まで、日本の伝統文化に拘る人たちを批判する言葉が「時代遅れ」であった。「ハイカラ」は昭和40年代ころまでは、老齢の方からよく聞いた言葉である。今でもハクライの腕時計をして、ハクライの自動車に乗るハイカラ生活が、ステータスシンボルとなっている。(追補1)

 

この世界感では、西欧が世界の主人公で日本はその配下、アジアやアフリカの諸国は野蛮人の世界である。この世界秩序の国民感覚を、矯正することなく未だに利用しているのが、日本の与党自由民主党である。

 

坂口安吾の堕落論にある「切腹もせず“くつわを並べて”法廷にひかれる老年の将軍たちの壮大な人間図」という記述は、日本人の西欧諸国(正確には米国)に対する劣等意識が日本の諸大臣や将軍に明確に“刻印”されているように感じさせる。東京裁判の光景は、謀反を誅伐する側とそれを受ける臣下の姿に見える。(追補2)

 

この景色は、裸になったまま「謀反のための武器など何も持っていませんし、持つつもりも未来永劫ありません」という、吉田茂のマッカーサーに対する態度から現在の対米隷属外交まで、一貫して日本の政治・外交として続いている。

 

2)日本の戦後政治:

 

戦後復興の後、20世紀の最後の10年から現在まで、日本は長い停滞の中にある。その陰鬱なる空気の中で、最近の右側の政治評論家(チャネル桜の討論会に参加する人たちなど)は、太平洋戦争の責任は米側にあるというプロパガンダをばら撒いている。

 

彼らは、東京裁判史観は間違いであると言いたいのだろうが、その主張は当に東京裁判史観の俎上にある。その光景は、キーナン判事の「guilty」 という言葉に対して、石原慎太郎など右系の政治家や政治評論家のほとんどが、「not guilty」と言い返しているだけである。

 

坂口安吾の言葉で言えば「堕落して、底まで落ちた」筈なのに、未だに落ちた崖に向かって何やら叫んでおり、まるで這いあがれるなら這い上がりたいという風情である。

 

先日、どこかの TV局の朝の番組で、レギュラーコメンテーターの橋下徹氏が石原慎太郎氏の逝去を悼むコーナーの中で、石原氏とは一時期日本の政治を変えるべく統一会派を作ったが、結局分裂することになったと話している場面があった。

 

その対立とは、未だに戦前から戦後の境に位置する断崖を眺めて、こんな崖を落ちる筈がなかったという石原慎太郎と、世界は反対側に広がっていると道を探す橋下徹の対立であったようだ。その橋下徹の街頭演説を映す動画を見つけた。

 

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=ExWt5iboDko

 

この二人の意見の違いを日本国民全員が考えるべきである。つまり、どん底に落ちたのなら、そのチャンスを生かすべきである。坂口安吾の堕落論をそのように読むべきである。

 

自民党の政治家は、優れた知性を持つものほど、石原慎太郎と同じ意見を共有するだろう。しかし、それは明治以来の文明開化の考え方から抜け出られない人たちの姿である。私は以前から、橋下氏の対中姿勢を批判したことがあるが、それ以外一貫して彼を支持してきた。

 

3)反知性が支配する自民党:

 

知性に優れていない自民党政治家は、キッシンジャーが「日本人(の政治家)は愚鈍で、まともな議論など出来ない連中なので、私の関心の外にある」と評した通りの連中である。このセリフがキッシンジャーから出た理由は、先日公開された伊藤貫さんの動画に詳細に述べられているのでご覧いただきたい。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=OCllWXHAuW8

 

アイゼンハウワーとニクソン、その下のキッシンジャーらにより、日本に核軍備をし真の独立国となって、世界の大国の一員として動いたらどうかと打診されながら、「単なる使用人の私には、そんな大それたことは出来ません」と言わんばかりに固辞した佐藤栄作。 彼以前と以後の政治家は、全て明治維新以降の散切り頭の連中である。

 

彼ら与党政治家は、伊藤貫さんの言葉を借りれば、馬鹿でなければ真の「売国奴」である。

 

追補:

 

1)街中には、フランス語、イタリア語、スペイン語など名前が多い。サンマルシェ、アピタ、ピエスタなど。現役の時、上から降りてくる文書にやたらとロードマップ(長期計画、あるいは戦略)やシナジー(共同、調和、相乗など)などの言葉が多かった。馬鹿かと思いつつ無視した記憶が蘇る。このような名称をつけるのは、欧米のものを無批判に良いと思う”ハクライ信仰”の結果である。何故なら、意味がわからないアルファベット名称の方が、外の先進的世界から来たように見えるからだ。

 

2)戦争は国家と国家が命運を賭けて戦うことであり、懲罰(裁判)で終わるのは異常である。戦死することはあっても、刑死する理由はない。何故、殺されるとしても、裁判の形式を拒否しなかったのか? 国を率いた者たちの最後にしては、非常に情けない姿である。吉田茂から現在まで続く自民党の対米従属の日本は、かれらが作った。何故、その彼ら刑死した指導者たちを靖国神社に合祀したのか? 自民党幹部らの靖国参拝は、敗戦時の首相以下閣僚に対する尊崇の念を捧げるためであり、対米従属を堅持する誓いの儀式である。

 

補足:

 

1)明治維新は、ユダヤ系資本家と英国の支援で動いた薩摩や長州によるクーデターであるとの解釈が正しいだろう。その延長上に現在の日本政府が存在する。長州出身者が圧倒的に日本政界に多いのはそのせいである。このことが過去の本ブログのメインな題材の一つであった。

 

(2/10/6:00編集; 12/11/12:00 一つの文の一句を変更、最終稿)