——高市首相は、何のために防衛費の増額をするのか? 国民に覚悟はあるのか?—— 


 

最近、中国の王毅外相が、日本の防衛予算増額(GDP比2%への動き)を捉えて「新型軍国主義」と痛烈に批判している問題について、柯 隆(か りゅう)氏は経済学者の視点から冷静に分析している。

 

王毅氏の批判は具体的な国際比較データやエビデンス(根拠)を欠いており、多分に中国国内向けのポーズであること。しかし同時に、日本国内の議論もまた「結論ありき」でデータに基づかない無責任なものが多いと警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

その動画のコメント欄には「お前らがEEZ内に立ち入り脅しを掛けるからだろ」とか「本当に日本をその気にさせたのはチャイナです」などの感情的な反中国コメントが散見された。そのため、私はそれらのコメント主の方々への警告の意味も込めて、以下のようなコメントを投稿した。

 

日本の軍事力増強の前提として、ウクライナのように米国の犬として動かない真の独立国を明確に目指しているということがあるべきです。その一つとして、中国やロシアとの対話を継続することは必須です。高市政権にそれがないのなら、つまりこれまでと違って積極的に米国の犬として戦う姿勢なら、それは新型軍国主義のための軍備増強といわれても仕方ないと思います。孫崎さんは米国の恐ろしさを知っていると思います。

 

1. 柯 隆氏が指摘した元外務官僚のCCTV発言とその真意

柯 隆氏は上記動画の中で名前こそ伏せていたものの、元外務省国際情報局長であり『アメリカに潰された政治家たち』などの著書で知られる孫崎 享(まごさき うける)氏が中国の国営放送(CCTV)の取材に対し「防衛費増額が日本経済に大ダメージを与える」といった主旨の発言をしたことを紹介している。

 

柯氏はこの発言に対し、具体的な財政出動のデータを示さない感覚的な発言であり、海外の視聴者をミスリードしかねないと指摘している。データや論理を欠いた批判は、かえって本質を見誤らせる原因となるからであるという意見は真っ当である。

 

しかし、孫崎氏は元外交官であり、経済の専門家ではない。その事実を踏まえるならば、彼の発言の背後にある意図をもう一歩深く考えるべきではないだろうか。つまり孫崎氏は、東アジアの情勢が緊迫する中で、「日本国内にも現高市政権の政策に反対する意見が確かに存在する」という事実を、中国国民に向けてあえて示したかったのではないか。

 

孫崎氏は、名著『アメリカに潰された政治家たち』(河出書房新社)で知られる元外交官だ。同書には、石橋湛山や田中角栄といった「自主独立」を掲げた政治家たちが、対米追随からの脱却をいかに図り、そしてアメリカによっていかに潰されてきたかが冷徹に記されている。

 

そうして自主派の政治家たちがすべて葬り去られた後に残ったのが、「不沈空母」発言で知られる中曽根康弘氏らを筆頭とする米国盲従型の政治家たちである。孫崎氏のCCTVでの発言を「不適切だ」と批判するのは簡単だ。しかし、彼を批判できるだけの独立自尊の資格を持った日本の政治家など、今の長田町にはほぼ皆無だと言わざるを得ない。

 

2. 防衛力増強の「主体」はどこにあるのか

ここで我々は、さらに一歩踏み込んで考えなければならない。それは、「その軍事力増強の前提として、日本はウクライナのように米国の意向のままに動くのではない、真の独立国を明確に目指しているのか」という点である。

 

もし日本にその国家ビジョンがなく、単に米国の対中・対ロ包囲網の戦略に組み込まれ、その肩代わりとして積極的に戦う姿勢であるならば、それこそ中国側から「新型軍国主義のための軍備増強」と指弾されても弁明の余地はない。

 

真の独立国であるためには、軍備の増強という抑止力と同時に、中国やロシアといった近隣諸国との対話チャンネルを継続・維持する外交努力が必須である。

 

もちろん、現在のアジアの知政学リスクを鑑みれば、米国との同盟関係を完全に断ち切ってしまっては日本の生存は成り立たない。アメリカの冷徹な戦略に一定の範囲で同調しつつも、いかに日本の国益を守り、自立性を保つかという高度なバランスが不可欠なのだ。

 

それが出来ない内閣であるならば、日本国民はその政権に対して明確に「NO」の意思を示すべきである。手遅れかもしれないが、唯一日本を救えるのは、日本国民一人ひとりの政治に関する深い関心と主体的関与だけである。

あとがきを兼ねて:日本が「まともな国」になるために

国家の安全保障は、最前線の兵器(ハードパワー)だけでなく、米国内などでの緻密なロビー活動や世論形成といった「ソフトパワー」が勝敗を大きく左右する。しかし、日本のこの種の活動はあまりにも戦略性に欠け、脆弱である。

 

イスラエルは言うに及ばず、台湾や韓国などの国々も、まさに国家の生存や実利をかけて米国内で凄まじいロビー活動を展開している。日本も多額の予算を投じてはいるものの、その多くは「摩擦回避」や文化プロモーションにとどまっているのが現実だ。

 

政府の発信力や外交センスの低さを嘆くだけでは何も変わらない。動画のコメント欄を見渡しても、こうした政治的・地政学的な構造の本質を見抜く声は極めて稀であり、感情的な思考停止や知識不足が目立つ。

 

国の防衛力は、防衛費の金額や自衛隊の規模だけで表せるものではない。世界情勢を冷徹に見つめ、大国の思惑に流されず、自国のあり方を自ら考える主権者がどれだけいるか——その国民の意識の高さこそが、国の最大の防衛力であり、真の独立への第一歩なのである。

 


付記: 本稿は、生成AI(Gemini)との共同作業として執筆したものである。特に、各国のロビー活動の比較検証およびその実態の調査においては、Geminiによる知見と言語化のサポートを大きく反映させている。