―― ホルムズ海峡民間船攻撃が米・イスラエル側の偽旗作戦である可能性について ――
1.ホルムズ海峡事件の概略:突如として引き裂かれた和平路線
中東情勢は、再び激しい戦火の渦へと引き戻されたのかもしれない。その事件は、7月6日夜から7日未明にかけて、世界のエネルギー輸送の生命線であるホルムズ海峡で発生した。
カタール国営海運会社が所有する大型液化天然ガス(LNG)運搬船「アル・レカヤット号」がオマーン沖を航行中に被弾し火災を起こしたほか、サウジアラビア籍の大型原油タンカーなど計3隻の民間船が相次いで損傷した。
これに対し、米中央軍(セントコム)は「イランの革命防衛隊による明白かつ危険な停戦違反」と断定。翌8日にはイラン国内の沿岸部にある革命防衛隊関連施設など80箇所以上の標的に対し、大規模な報復空爆を敢行した。イラン側も即座に反応し、同日中にクエートの米軍施設へ向けてミサイルとドローンによる報復攻撃を行った。
トランプ米大統領は「停戦は終わった」と発言し、米財務省は一時的に認めていたイラン産石油の輸出適用除外を即座に撤回(経済制裁の復活)した。この衝突により、原油価格は即座に6%近く急騰し、国際指標であるブレント原油は1バレル78ドル台へと跳ね上がった。
しかし、西側主要メディアがこぞって「イランの暴挙」と書き立てるこの事件の背景には、論理的に説明のつかない決定的な違和感が横たわっている。
2.金子吉友氏の提起:イラン「3重の自殺行為」という合理的疑念
独立系アナリストの金子吉友氏は、自身のメディアにおいて、この「イラン犯行説」に潜む地政学的・経済的な構造矛盾を鋭く指摘している。https://www.youtube.com/watch?v=M16gHHPO5l8
金子氏が提起する核心は、「なぜイランが、このタイミングで、よりによってカタールの船を狙わなければならないのか」という動機の完全な欠如である。
イランにとって、カタールは現在の国家生存を支える極めて重要な2つの役割を担っていた国である。一つは、米イラン間で結ばれた「60日間の交渉窓口」の成立を水面下で主導した最大の和平仲介者である点。もう一つは、停戦合意の履行と引き換えに、カタールの銀行に凍結されていた自国資産のうち、実に60億ドル(約9,000億円以上)の資金解放を目前に控えていた点などである。
金子氏は、もしこれがイランの仕業であるならば、自ら和平の橋渡し役を攻撃し、9,000億円の受け取りを台無しにし、自国の生命線であるホルムズ海峡を再び危機に晒すという「3重の自傷・自殺行為」に他ならないと解説する。
一方で、イギリス海軍が運営する海上貿易セキュリティ組織(UKMTO)は、米軍とは異なり犯人を特定せず、単に「正体不明」としか報告していない点も、事件の背景が不透明であることを示唆している。
勿論、ハメネイ師の国葬中で反米・反イスラエルの感情の高まりもあり、革命防衛隊一部の暴走という考え方もぬぐいされないのも事実である。しかし、ここでは金子氏がにおわす偽旗作戦の可能性について重点的に考える。ここで採用した視点を十分に承知したうえで以下お読みください。
3. 「もう一つの真珠湾」発言と対米警告
この事件を西側の報道通り「イランの暴走」と捉える見方や、イラン内部の和平反対派(軍部強硬派)の独断とする見方がある一方で、完全な「偽旗作戦(自作自演)」を疑う視点は、事件の直前にイスラエル側から発せられた言葉と不気味なほど符号する。
事件発生の約2週間前(6月23日)、イスラエルの有力シンクタンク「国家安全保障研究所(INSS)」のイラン専門家、ベニ・サブティ氏はSNS上に以下の過激な言葉を投稿した。
「もしかすると米国は、誰が敵で誰が友かを思い出すために、もう一つの真珠湾攻撃か9.11を必要としているのかもしれない」
X上のこの言葉はすぐに削除されたが、トルコのメディアがそれを紹介している。
この投稿の背景には、ベニ・サブティ氏が事件の半月ほど前にノルウェーのポッドキャスターであるヘンリック・ベクハイム氏との対談動画などで露わにしていた、イスラエル側の「焦り」があると考えられる。https://www.youtube.com/watch?v=Z6pvlNRWJh4
インタビュアーのベクハイム氏は、曾祖母がナチスによってアウシュヴィッツで殺害された歴史を持つノルウェーのユダヤ系の人物である。彼はイスラエルの安全保障を絶対的に擁護するインフルエンサーであるからこそ、サブティ氏との独占対談が実現したのだろう。
サブティ氏はこの対談の中で、トランプ政権がイランと結んだ和平覚え書き(MOU; momorandum of understanding)を激しく非難している。彼の主張の骨子は、「イランの核やテロの脅威は中東に留まらず、いずれ欧州や大西洋を越えて米国本土まで届くものであるのに、トランプ政権は目先の取引のためにイランの嘘に騙され、中東から退こうとしている」という強烈な危機感であった。
この「いくら言葉で危険を訴えても、トランプの和平路線を止められない」という絶望的な焦燥の延長線上に、「米国が目を覚ますには、かつての真珠湾攻撃や9.11のような大惨事が再び起きるしかない」というあの過激な言葉があると考えられる。
ここから更に一歩踏み込んで国家諜報の感覚でこの発言を評価するなら、これは単なる比喩ではなく、米国への強烈な「脅し」と見ることも可能である。歴史的に真珠湾攻撃やトンキン湾事件、そして9.11といった大惨事には、背後の情報機関による黙認や暗躍の疑惑が常に付きまとってきた。
サブティ氏が、敢えて「9.11」という米国の絶対的タブーを名指ししたことを深読みすれば、米国の安全保障中枢に対し「もし我々を見捨てるなら、かつて共有した裏の秘密を暴露するぞ」という警告だと考えられないだろうか?
その仮説が成立するのなら、今回のホルムズ湾での事件は「我々のために偽旗作戦(第2の9.11)を実行あるいは容認してイランと戦うか、さもなくば破滅かを選べ」という二者択一を迫る裏の最後通牒であった可能性を排除できない。
X上でのサブティ氏の発言の半月あまりの後に、イランに動機のないホルムズ海峡でのカタール船攻撃という不自然な事件が起きたというタイムラインは、上記仮説に綺麗につながる。
4.トランプは大局の「蚊帳の外」に置かれていた可能性
最後に検討すべきは、この和平路線の破壊を、トランプ大統領自身が事前に認知していたかという点である。
トランプと米国のディープステート(情報機関や軍産複合体)との関係は、第1期政権時代から激しい権力闘争の歴史であった。トランプは一貫して彼らを「終わりなき戦争で利益を貪る利権集団」として敵視しており、今回の対イラン融和路線も、自らの身内の情報機関を完全に飛び越えてトップダウンでまとめ上げた可能性が高い。
この孤立無援のトップダウン外交において、国務長官などの主要閣僚たちもまた、トランプの独走に対して冷ややかな、あるいは静かな抵抗の姿勢をとっていた。政権内の閣僚の多くは、ワシントンの伝統的な安全保障エスタブリッシュメント(既得権益層)や親イスラエル派ロビーと地続きである。
彼らネオコン・エリートたちは、トランプがイランとの停戦交渉を進める間も、水面下ではその融和路線に猛烈に反対していた。つまり、トランプはホワイトハウスの内部においてすら、四方から包囲されている状況であった。
この文脈に従うならば、トランプ自身は今回のホルムズ海峡での民間船攻撃、あるいはその裏で画策されたかもしれない偽旗作戦の計画を「全く知らされていなかった(蚊帳の外に置かれていた)」と考えるのが自然である。
閣僚たちを含む軍産複合体やイスラエル情報機関にとって、コントロール困難なトランプによる和平路線を潰すには、現場(海上)で「決定的な停戦違反の事実」を演出し、大統領から選択の余地を奪うことが最も効果的である。
結果としてトランプは、発生した事態に対して即座に激しい言葉でイランを非難し、制裁復活を選ばざるを得なくなった。これはトランプの関知しないところで政権内外の強硬派によって仕組まれた精緻な「罠」に、大統領自身が完全にはめ込まれた構図が鮮やかに浮かぶ。
情報が遮断された現状において、我々にできる唯一の論理的防壁は、流される報道を盲信せず、その裏で誰のどのような利害と秘密が動いているのかを、冷徹に見極め続けることである。
【編集ノート】 本記事は、直近の中東情勢および各種インテリジェンス情報に基づき、筆者が立てた仮説構造を、AI(Gemini)との多角的な論理検証およびデータ照合を経て共同で作成・推敲したものである。