2026年2月20日午後、高市早苗首相は国会で施政方針演説を行い、今後の政権運営への見解を表明した。しかし、その内容は日本国民のための日本国の国家戦略とは言えない項目が並んでおり、将来に大きな不安を抱かざるを得ない。以下に、私の国際政治に関する基本的考え方と今回の高市首相の施政方針演説の内容を示し、その不安の根拠についての解釈を述べる。
1)国家の目標と戦略
国家が持つべき目標は、国民に対して①生命と安全、そして②安定した日常と希望ある将来を保障することである。それを将来にわたって実現するために、今後何をどのように実行するかに関する計画こそが「国家戦略」である。
その立案には、日本の現在および将来における財産や能力、他国との関係と地政学的位置などの分析が不可欠である。具体的には、日本には食料・原材料・エネルギーを自給する能力がないこと、また日本が中国や米国と密接な経済的関係にある一方、その両国がグローバルな政治的対立関係にあるという現実は極めて重要である。
現在の日米同盟は「ある意味で」日本の財産ではあるが、それが将来どのように変化するかは予測できない。さらに、日本の周辺にはロシアと中国という核保有の二大国、北朝鮮という核保有の独裁国家が存在する。これらの国家との外交は、米国との外交とともに、日本国民の生命と安全、日常と将来を決定づけることになる。
国家戦略とは、これらの不安要素をすべて取り除くものでなくてはならない。高市首相の施政方針演説が、この要求に応えるものであるかどうかが、ここで議論すべき論点である。
2)「戦略の不在」を軍事組織の肥大化で隠す欺瞞
高市首相は施政方針演説の中で、防衛力の抜本的強化として「安保三文書を本年中に前倒しで改定する」ことや、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」へと改編することを強調した。しかし、これは「戦略」ではなく、単なる「手段」の提示に過ぎない。自国の産業構造や地政学を起点に、いかにして紛争を未然に防ぐかという設計図、すなわち国家戦略ではないのである。
演説で語られたのは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という広域覇権の枠組みへの参加であり、それは米国がAUKUS諸国などを巻き込んだ、米国のための国際的戦略である。日本もその中に含まれてはいるが、それは日本独自の戦略ではない。
日本の生存に直結する東シナ海、日本海、オホーツク海などの近海について、演説では以下のように述べている。
「我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。中国は、東シナ海・南シナ海での力又は威圧による一方的な現状変更の試みを強化するとともに、我が国周辺での軍事活動を拡大・活発化させています。北朝鮮は、核・ミサイル能力の向上を引き続き追求しています」
これは単に情勢を述べているに過ぎず、それに対する戦略は米国に依存すること以外には語られていない。この演説からは、日本の安全保障戦略とは「米国の世界戦略に協力すること」であると解釈せざるを得ない。この道を突き進めば、日本国民にとって致命的な結果に終わる可能性がある。これは、自民党政権が継続してきた「奴隷国家的方向」をさらに加速させる方針である。
拉致問題の解決に関しても、以下のような言及はあるが、具体性は皆無である。
「北朝鮮による全ての拉致被害者の御帰国を、私の任期中に実現したい。(中略)金委員長との首脳会談をはじめ、あらゆる選択肢を排除せず、突破口を開くべく取り組んでいます。また、我が国にとって従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている核・ミサイル開発は、断じて容認できません」
金正恩氏と面会すると言いながら、核開発は断じて容認できないと喧嘩を売りに行くのか、拉致被害者を返してくれと懇願しに行くのか、意味不明の文章である。この問題も米国の国家戦略によって持ち込まれた「朝鮮半島の分断」という方針の副産物であり、解決には朝鮮戦争の終結と日米韓による北朝鮮承認のプロセスが必須である。
※拉致問題の解決に関する詳細は、以前のブログ記事(https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12748869874.html)を参照されたい。
3)キッシンジャーの警告:致命的な同盟への道
第二次世界大戦後の歴史を振り返れば、ベトナム、朝鮮半島、そして現在のウクライナに至るまで、凄惨な戦死者を出した紛争の多くは、大国の覇権拡大競争に利用された「代理戦争」の側面を持っている。高市首相によるウクライナ戦争の解釈は完全に誤りであり、日本国民を欺くものである。
ここで、米国の同盟国がどのような運命を辿るかについて、ニクソン政権で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーの言葉を引用する。
「アメリカの敵になることは危険かもしれないが、アメリカの友人(同盟国)になることは致命的である」
この言葉は、大国が自国の国益のために同盟国を「最前線の盾」として使い潰す非情さを正確に表現している。高市首相は来月にもトランプ大統領を訪問し、日米同盟を「かつてない高み」へ引き上げようとしている。しかし、独自の経済基盤(エネルギー・食料)の確立や周辺国との多角的な外交努力を棚上げしたまま、軍事組織だけを米軍の戦略に統合させていく行為は、日本が自ら「米国の代理戦争を引き受ける」と宣言するに等しい。
演説でウクライナ戦争を単なる「ロシアの侵略」として引用している姿は、日本もウクライナのように米国の代理として大国ロシアと戦い、国民の生活を破壊することも辞さないという「ゼレンスキーの覚悟」を示しているように聞こえる。
※ロシアによるウクライナ侵攻の10日前に、緊張関係の原因について記した記事(https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html)も併せて一読いただきたい。
結論
知性を欠いた追従は、国家を「独立」から遠ざけ、「従属という名の暴走」へと導く。我々が今求めるべきは、勇ましい言葉で飾られた軍拡ではなく、日本を戦場にさせないための日本独自の「生存戦略」の確立である。安保三文書を書き換える前に、我々は日本という国を「誰のために、何から守るのか」を真剣に問い直さなければならない。
(本記事の構成にあたっては、GoogleのAI・Geminiとの対話を通じて論点を整理しました。)