はじめに
いま世界を揺るがしているのは、トランプ政権によるベネズエラ介入、グリーンランド接収計画、そしてウクライナ戦争の新展開である。それらは断片的な出来事ではない。崩壊しつつある「米国の覇権」を暴力的にでも元に引き戻そうとする戦略に基づいた動きである。
最終戦争に発展する可能性のあるこの一連の動きは、2022年のウクライナ戦争で明確になった。それは10年以上かけて、親ロシア政権を潰し、米国の前線基地としてウクライナを育てあげるなどして、ロシアを挑発した結果として勃発したのである。
目的は、ロシアの弱体化にあった。そのウクライナ戦争は、目的を達成できないままに米国グローバリスト(ネオコン)側の敗戦が濃厚である。戦況逆転をめざす米側は、ドローンによる「プーチン大統領公邸への直接攻撃」(昨年12月29日)という禁じ手を使ったが、それにより戦争は極めて危険な様相を呈してきた。
これまで代理戦争の奥に控えていた米国が、直接戦争の表に出るだけでなく、近代西欧の築いた政治文化を破壊してまで、自国の覇権維持に動き出した。ウクライナ戦争から、ヨーロッパ全体をそして世界を巻き込む近代文明の終わりとなる戦争に発展する可能性が高くなっているのである。
本記事は、ロシア専門家である歴史学者ギルバート・ドクトロー博士とグレン・ディーセン教授(補足1)の2,3日前に行われた議論を中心にして組み上げた。これは、日本が「終末戦争」へ巻き込まれる危険への注意喚起である。(English version: https://www.youtube.com/watch?v=ivuByVoV3gY) https://www.youtube.com/watch?v=UDyZ_43e9dc
1. トランプ政権の変質とその後の狂気
トランプは、大統領就任当初ウクライナ戦争を「バイデンの戦争」と呼び、数日以内で終わらせると豪語していた。その軽々しい発言から考えて、この戦争の真相を理解していなかったのだろう。
しかし、数か月後、マルコ・ルビオ国務長官が、ウクライナ戦争は「ウクライナを代理にした米露戦争である」との真相を明らかにした時以来、徐々に戦争継続派の意見を取り入れざるを得なくなった様だ。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12904697704.html
トランプは、反グローバリズムの旗手のように見なされていたが、その大統領就任直後の雄姿も徐々に陰り、グローバリスト(ネオコン勢力)の協力者となった。その結果、伝統的なマッドマン理論(補足2)を用いて来たトランプだが、ベネズエラ事件においては本物のマッドマンとなった。
現在のウクライナ戦争の戦況は、ウクライナも支援する欧州も消耗しており敗戦濃厚だが、かれら欧州勢は戦争継続と米国の本格的参戦に期待している様に見える。そんな中、米国トランプ政権は国際法を完全無視する禁じ手を用い、ロシア攻撃を始めた。
トランプ政権の現在の姿勢は、世界核戦争も辞さない狂気をはらんでいるように見える。プーチン政権は、これが交渉術としての『マッドマン理論』ではなく、米国そのものが制御不能な『真の狂人』に変質したという判断を下したのではないだろうか。
ここ数日の、米国側によるロシア攻撃とそれに対するロシアの反撃をまとめると:
①プーチン大統領公邸への直接攻撃: 昨年末から今年初頭、米国側の支援を受けたドローンがプーチン氏公邸を急襲した。一国の指導者の殺害を狙うこの暴挙は、外交関係に関するウィーン条約(1961年)の精神と原則に反し、国際秩序の完全な破壊を意味する。また米国は、公海上でロシア石油タンカーを拿捕するという「海賊行為」を平然と行っている。
②ロシアの反撃「オレシュニク」: ロシア側の忍耐が限界に達し、これまでの『抑制的な特別軍事作戦』から『本格的なインフラ破壊戦』へとフェーズを切り替えた。CNNによると2026年1月8日深夜、ロシアは新型ミサイル「オレシュニク」(Oreshnik)をリビウ攻撃に投入した。
この攻撃がウクライナの電力をささえる巨大ガス貯蔵施設を破壊した可能性がある。もし電源インフラが破壊されれば、電力を欠いた氷点下10度の酷寒の都市は、「居住不能」になり、1000万人規模の難民を欧州へ送り出す「難民の武器化」なのかもしれない。そのようにドクトロー博士は語っている。
そして、この米国側への強烈な反撃は、トランプ政権が帝国主義に変質したとロシアが見做したことを意味すると指摘している。なお、マッハ10で飛来する中距離極超音速弾道ミサイルに対して、西側のパトリオット等を配備した防空システムは役立たない様だ。https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8c87489d2f7671420315db8793b35ef293e65f23
2. 戦争が続く理由:戦争中止で将来を失う指導者たち
国家の命運を賭けて戦い、且つ、大きな犠牲を既に出している戦争では、戦争の帰趨が明らかであるという理由だけで敗戦を認めることは、当事者にとって非常に難しいようだ。ましてや、戦争開始直後に米国側が「ロシアは数か月も経たないうちに白旗を挙げるだろう」と語るのを聞き、それを信じた西欧とウクライナの指導者にとっては、なおさらである。(補足3)
ウクライナ戦争において、 ゼレンスキーや欧州の首脳たちが現段階で戦争を止める決断ができな理由として、ドクトロー博士は、指導者たちの「個人的な自己保身」があると喝破している。彼ら戦争指導者たちは、この戦争に自らの政治資本を注ぎ込みすぎたので、引き返すに引き返せない情況なのだ。
今さら敗北を認めて戦争から撤退すれば、彼らは即座に失脚、あるいは法的・物理的な破滅を免れない。自国民が経済的に困窮し、戦争に巻き込まれる危険にさらされても、彼らにとっては「自らの権力維持」が最優先なのだと博士は語る。
3. 戦争を続ける理由:帝国に変身した米国
戦争を止めたくないのは米国のネオコン・グローバリストたちも、ヨーロッパの首脳たちと同様である。かれらも膨大な資本をウクライナ戦争につぎこんだ。しかし、ウクライナ戦争は元々衰えかけた米国覇権の維持という計画の一つの現場に過ぎないので、かれらは別の角度から計画推進で挽回を考えた。
トランプと米国支配層は、敗戦濃厚となったウクライナ戦争の失点を回復すべく、面倒な工作抜きの直接戦争に切り替えて他の方面での覇権維持の戦いを加速したと考えられる。戦いの対象を拡大する方向に舵を切った可能性が高い。
ネオコンたちは、トランプの個人的な虚栄心(強さを示したい欲求)を巧みに利用し、彼を万能の世界支配者に仕立て上げたのである。ベネズエラ事件やグリーンランド接収計画は、西半球から中国やロシアの影を消す為の作戦であり、トランプの新モンロー主義政策の一環であると言われている。しかしそれは、米国による世界の一極支配の戦略と矛盾しない。彼らは、戦いを中東イランや東アジアにも拡大する可能性が高い。
おそらく米国グローバリスト勢力は、新モンロー主義政策のトランプを抱きこみながら、世界の一極支配の回復を行っているつもりだろう。トランプとグローバリスト・ネオコンとの関係は、私には、米国版の国共合作(補足4)のように思える。
4. 日本への警告:東アジアでの「潰し合い」の構図
日本人は、この惨劇を「遠い異国の出来事」として見てはならない。米国グローバリスト層は、一極覇権回復そしてその維持という戦略を東アジアでやがて展開するだろう。ウクライナと同じ惨劇を、東アジアの日本や韓国で再現しようとしている様に思う。
日本や他の国々を中国と激突させ、「東アジアの諸国と中国を共倒れにさせる」のが、その構図である。この場合代理国家はクライナのケースよりも更に悲惨な情況になるだろう。何故なら、中国の軍事指導層は、国家の存亡をかけた戦いにおいて核兵器の使用をプーチン・ロシアのようにはためらわない可能性が高いからである。(補足5)
中国にも反対があるだろうが、政府に反対するものの厳しい運命は既に実証されているので、有効な力とはならないだろう。尚、もし中国が核兵器を使用すれば、世界で唯一の核兵器によるジェノサイドを行った米国の犯罪行為の相対化が出来て喜ぶ人たちも多い筈である。
トランプにとっても、新モンロー主義的には遠い別半球での出来事であり、大したことではないだろう。国際政治では、冷酷無比なことが起こり得る。それは、パレスチナ・ガザ地区での悲劇を見ればわかることである。
おわりに:沈みゆく船から降りる勇気を
米国の一極支配という「沈みゆく船」にしがみつき、彼らの覇権維持のために隣国と潰し合いの戦いという未来——。いま日本が歩んでいる道は、その先にしか繋がっていない。重要なことは、米国支配層の「(中国との)共倒れ戦略」を拒絶する勇気だろう。
米国の一極支配という傘の下で、平和を享受してきたように見える日本。しかし、その米国は今、世界を道連れに破滅へと突き進もうとしている可能性が高い。「米国についていけば安心」という思考停止の時代は終わったのだ。
トランプ政権の傲慢で利己的な外交による被害を真っ先に受けるのは、自律的な外交手段を持たない日本かもしれない。今、私たちはまさに瀬戸際に立たされている。世界戦争の足音が近づく今、私たちはこの狂気から目を逸らしてはならない。
補足:
1)ホストのグレン・ディーセン教授はノルウェー人でノルウェーの University of South-Eastern 大学教授で、新現実主義の政治学者。ゲストのギルバート・ドクトロウ博士はベルギー在住の米国人 で、元コロンビア大学客員研究員(コロンビア大学から 歴史学の分野でph.D取得)。二人はともにロシア関係の専門家である。
2) マッドマン・セオリー(狂人理論)とは、もともとは冷戦時代にリチャード・ニクソン大統領が用いた戦略。「自分は予測不能で、怒らせたら核のボタンも押しかなねない狂人だ」と敵対国(当時の北ベトナムやソ連)に思わせることで、相手を恐怖させ、有利な譲歩を引き出す手法である。
3)例えば、欧米グローバリストたちの楽観的予測を丸のみした筑波学院大の中村逸郎教授はロシア軍は2、3カ月しかもたないと予想していた。https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/05/13/kiji/20220513s00041000427000c.html
4)国共合作とは、中国の国民党と共産党が、中国の統一と発展という共通の目的のために、前後2回協力関係を結んだ歴史的出来事を指します。
5)中国共産党人民解放軍の朱成虎将軍は、嘗て「 世界の人口削減のために日本やインドに核兵器を用いるべきだ」と言ったことがウィキペディアにも掲載されている。
(本記事は、一部google AIのgemini の協力を得て作成されました;13日早朝編集あり)