田中均氏はアジア太平洋局長として何度もテレビニュースで紹介されているので、記憶に残っている元外交官である。外務審議官となり、2005年に定年退職されている。この田中均氏が最近のナショナリズムの全世界的広がりについてコメントをyoutube動画としてアップされている。

 https://www.youtube.com/watch?v=AXvEl-qTpaM

 

 

この動画を取り上げたのは、外務審議官まで登った外務省主流の外交官が、移民問題をどのようにとらえているが興味があったからである。しかし、中身はほとんど空っぽであった。経済的に人手がたらない日本が移民無くしてやっていける筈がないので、移民反対を唱えている参政党などは大衆を扇動して日本を困難に引き込む政党であるという類いの議論であった。

 

この方の考えの浅さを象徴しているのが、参政党の移民反対運動の主なる原因として外国人観光客のマナ―の悪さに対する怒りを上げていることである。また、英国の移民比率が14%で日本は未だ3%に満たないのだから、まだ大騒ぎするほどのことではないと仰る。

 

この中で、現象の原因について分析するというレベルの話として在ったのは、“全世界でのナショナリスト政党の拡大を、リベラリズム(補足1)に対する排斥運動である”という説明である。これはある意味で正しい。尚、リベラリズムは西欧近代国家が作り上げた文化であるが、世界標準化されていたわけではない。 

 

そこで、コメントを投稿した:

 

全世界で民族主義勢力が台頭している現象を、相互理解で乗り越えるべき異民族との不調和をポピュリスト政党が煽って短絡的な排斥運動を引き起こしていると説明して居られる。失礼ながら、何もわかっておられないと思う。

 

①リベラリズムの排斥は、途上国の人たちを大量に抱えた現在の西欧社会にそれが相応しくないと一般市民が直感的に見抜いている結果だと思う。

 

②故人となったブレジンスキー氏が、米国でユダヤ民族が実権を握った方法として回顧録に記したのは、要するにマイノリティの権利拡大運動つまりリベラリズムを応用して米国に分断を持ち込む方法であった。

 

③政治が最も大切にすべきはマイノリティではなくマジョリティである。その原点への回帰を主張するのがドイツのAfDや日本の参政党である。

 

2)移民問題が重症化して国家分断となった米国

 

米国は移民国家である。しかし、マジョリティは英国からの移民であった。1950年代になっても、アメリカ人口の約9割を白人が占めた。そして建国の父たちと同じWASP(アングロサクソン系でプロテスタントの白人)が、権力や影響力のあるポジションを牛耳っていた。

 

その後の新自由主義経済の中で、金融資本で世界を制覇したユダヤ系のグローバルエリートとその周辺が、アフリカ系黒人や中南米のヒスパニックなどを抱き込んでマイノリティの権利拡大運動を行い、伝統的な米国の権力構造を破壊して自分たちが権力を奪取したのである。(補足2)

 

その結果、米国社会は荒れ果て、元々のマジョリティがアファーマティブアクション、つまり「積極的格差是正措置」で冷遇された。そこで、遅まきながら立ち上がったのがマジョリティであるWASPの権利確保を約束したトランプである。

 

米国は、近代思想に染まらない力のあるマイノリティ(補足3)がリベラリズムを悪用して国を乗っ取ったのである。トランプはその中心部をディープ・ステートと呼び、彼の政治改革のターゲットとしたのであった。

 

ただ、トランプはあまり緻密でなく戦略的でもないため、米国の金融エリート、軍産共同体、ユダヤロビー、イスラエル国の間の強い結びつきの中でモミクチャにされている風にも見える。トランプの戦いの帰趨は未だ明らかではない。

 

補足:

 

1)リベラリズムとは何かと“AI”に聞けば、「市民革命時代に由来し、自由と平等を基礎とする政治的・道徳的哲学であり、個人の自由な判断や決定、自己決定権を重視します」と答えてくれる。これは移民難民が大量に入り込んだ国には適用不可能である。

 

2)コロンビア大学のジェフリー・サックス教授がヨーロッパ議会での演説において解説している。中東での米国の戦争は全てイスラエルにとっての理想の中東を建設するために、イスラエルロビーとネタニヤフが米国にさせた戦争であると上に紹介の講演で語っている。

 

 

3)近代西欧思想に染まらない力のあるマイノリティとは、当然ユダヤ系の金融エリートを指す。彼らユダヤ系が未だに近代の西欧的政治文化に染まっていないことは、イスラエルのガザ地区で行っているホロコーストを見れば分かる。最近のイエメンでの首相暗殺など、要人暗殺を外交(?!)の武器の一つとしていることも同様である。彼らは古代の感覚で世界政治に参加している様に見える。

 

(12:00、編集)