参政党は今回の参議院選挙で大きく伸びた。それは国民の戦後80年間の自民党政治に対する不満と、自民党に置き換わる能力を持っていなかった野党既存政党に対する不信、そしてこの停滞する日本で参政党が唯一何か新しい流れを起こして呉れそうなに感じた結果だろう。

 

世界政治の激動と混乱の中で、日本はそれまでの国際的慣行や価値観に縛られ、近い将来消滅する可能性もあると一部で議論されている。そんな昨今、消滅寸前のウクライナやパレスチナなどの国々とその悲劇を見ながら、既存政党はそれらから学ぶ姿勢も知恵も示せそうにない。
 

そんな中で参政党は、ドイツのAFDやイタリアのメローニ政権などと同様に、世界の混乱の本質を探し出し、伝統ある日本を守る方針を明確に打ち出した唯一の国政政党である。日本国を外国人スパイなどから守るとか、外国人の受け入れを慎重に行うなどと共に、歴史に学び近代の国際法体系を重視する保守主義を謳い、明確に反グローバリスト政党としての旗を掲げている。

 

ここでグローバリストとは、国際金融エリートたちとその周辺が、自分たちとその仲間が支配する世界帝国を目指す勢力のことである。このモデルは彼らが支配するマスコミやシンクタンクなどにより「陰謀論」として排除されて来たが、徐々に真実に近いと認められつつある。この問題は複雑なので、補足に少しふれるがこれ以上は立ち入らない。(補足1)


参政党の神谷宗幣氏は、これまでの日本と西欧の近代史を再検証することで、激動・混乱の世界の背後に迫ることが出来ると考えた。そして、国民の多くがそのような努力をして情報を集積し議論で確かな知識とした上で、政治を動かすことが大事だと、気付いたのだろう。https://www.youtube.com/watch?v=jVojeOBgyr8

 

 

近代史を学びなおし、日本の伝統を大切にすることで、日本の進むべき道を探すことを結党の精神とし、それを芯に参政党を立ち上げたと理解する。その結党のコンセプトを揺ぎ無く持ち、党内をまとめる統率力を持つ実力者は今でも神谷党首のみかもしれない。

 

勿論、そうでないという人が党員の中には居るだろうが、その思想が国政政党となった今、現実問題との対峙で徐々に薄れる危険性も考えて、当分神谷氏中心に参政党を育てるべきだと思う。

 

日本政治の現状と参政党の参加

 

これまでの日本の実力のある政治家と見なされる人たちの多くは、明治以来の家業を継承する形で政治に携わる人が多い。そのような人たちが牛耳る政界においては、単に現在の国民の不満解消を政治課題と考える人が多い。彼らには、戦後80年間の対米従属の政治を再考するとか、有史以来の激動の世界で日本国をどう維持するか等の問題に対処する能力など期待出来る筈がない。

 

また、有権者の多くも、政治参加は投票だけという人がほとんどだろう。このような情況では日本の政治は良くならないし、良い芽も育たない。日本の政治の成熟は、国民が政治に直接的に且つ積極的に参加することによってのみ可能となる。

 

欧州では、行政に不満があれば直ぐに一般市民は何らかの行動をとる。それは、西欧民主主義国家は市民革命を経ていることと深く関係していると思う。(補足2)つまり、生死を掛けて政治に参加した結果として現在の政治体制を獲得したという歴史の記憶が、現代に生きているのだろう。(補足3)

 

繰り返しになるが、世界政治の大変革の今、日本でもようやく本物の民主主義が訪れようとしている。有史以来初めて、自分たち一般市民が政治に参加していくのだという考えに基づく参政党が誕生し、今回の参議院選で躍進したのである。

 

参政党への参加者たちが集まった切っ掛けは、グローバリストたちによる望ましくない世界の大変革という陰謀に、世界の一般市民は反対するべきであるというSNSを用いた警告によって、その激動の世界の真実を危機感とともにネットで共有したことである。(補足4)

 

参政党のキャッチフレーズ「日本人ファースト」は、主権国家体制護持を明確にする反グローバリスト政党では当たり前の宣言であるが、それに対して、既存マスメディアの論調の受け売りで、参政党は外国人差別をする極右政権だとか、参政党の党首である神谷氏は独裁であると言った批判が多い。

 

今後、出来るだけ短い時間で参政党が政権政党に成長しなければ、日本はこの世界政治の荒波の中で消滅する可能性があると思う。参政党は神谷党首の指揮下で様々な分野から広い視野を持つ専門家を集め、且つそれを理解する優秀な政治家を育てなければならない。

 

尚、参政党は日本人ファーストを旗頭にする本来の保守政党のトップランナーであるが、それを追いかける政党も今後生まれる可能性がある。上の話は同様の保守政党も対象にする一般的な議論として、受け取ってもらいたい。

 

また、参政党の党勢拡大の中で神谷氏以外の発言力が増せば、経済復興などの短期目標に過剰に拘り、日本人の歴史感を補強し、日本の伝統を取り戻すという長期目標が薄れていく危険性がある。

 

大災害をも生き残る大樹になるには、根は広く深く伸ばし、一本だけの幹をまっすぐ上を目指し、太い枝に育った多数の葉から太陽のエネルギーを得ることが大事である。以下、多少くどくなるがそのことについて記す。

 

2)参政党が孕む自壊の芽
 

もし参政党から自分たちが政治参加するのだという“草根精神”(補足5)が消滅して、従来型の貴族支配適合型の政党に戻れば、日本の将来はないだろう。そのようなことが起こり得る可能性がかなり大きくなったのが、皮肉なことに今回の参議院選挙の結果である。

 

神谷氏による「歴史を学びそこから自分たち一般市民が集合しで政党の育成を目指す」参政党の遺伝子が消失する危険性は、今回の参議院選で神谷氏自身の判断でこれまでの経済政策に不満を持つ広範な国民の票を積極財政論を採用して集め大勝利したことにある。

 

今回の勝利により、積極財政論を提唱した者たちの発言権が増加し、彼らが党の結党の遺伝子を忘れ無視して、最終的に従来型の貴族型政党に堕するする可能性が大きくなったことである。単純な積極財政論はフェンタニルのようなもので、短期間は経済的に困窮した層の苦痛を取り除くかもしれないが、根本的問題解決には役立たないばかりか有害である。

 

日本人の多くは戦後から20世紀に成し遂げた豊かな経済は、日本人の能力と勤勉さが築いたのであり、そこからの経済低迷の30年は米国の圧力と自民党の緊縮財政が原因だと考える人が多い。しかしそれは真実ではなく、積極財政論で乗り越えようとすれば、日本経済は途上国タイプに戻る。

 

日本が奇跡の経済発展を遂げたのは、日本人の資質もあるが、グローバル化経済の流れと米国などの市場開放の恩恵を受けたからであることを熟知すべきである。つまり、20年ほど遅れて発展した中国の経済と同じように、これまでの発展は途上国型の発展である。そして低迷の30年を経て、今ようやく必死の努力で優良企業も生まれてきた。
 

ライバルとなった中国には、共産党支配とそれによる政治腐敗などによる弱点を持つが、末端の企業には途上国型から先進国型に発展する能力が存在する。それは人事における能力主義が定着しており、大学など教育機関のレベルも日本よりも高いからだと思う。
 

日本は、既存の機械など製品の信頼性を高くしつつ安価に製造するというモデルだけに頼っていては、今や有史以来持つデメリットである狭い国土と限られた資源という条件の壁を克服できない。従って、先進国型の経済発展モデルを獲得するためには、新規産業創生と既存産業の労働生産性を高める競争においても先進国以上の力を育てる必要がある。

 

現在諸政党が提言している積極財政策では、弱者を救い上げるのには有効であっても、強者をもっと強くすべきであるという国際競争での戦いにはプラスにならない。日本らしく弱者救済は続けるのは良いのだが、強者が国際的に勝利する企業とならなければ日本は低迷から抜け出せない。

 

それには経済活動における諸問題、労働の流動性を高めること、能力本位の人事が当たり前の企業文化の成立、高校の大学予備校化の廃止、大学では学生に実戦力となるレベルの教育をする、大学教員の資質向上、無駄な無償化などは廃止するなど、労働と教育における文化を改める。

 

日本の政治と教育は、未だに中国隋の時代に始まった科挙制度とそれための大学教育のように見える。その結果、日本の大学で必要なのは官僚を輩出する東京大学のみであり、そこに向けて高校までの教育がなされているように見える。脳力をすり減らした秀才のみでは、日本の経済は発展しない。

 

このような改革を行うには、過去の歴史を詳細に再評価し、そこに学ぶ姿勢、それを教育するシステムの改良が不可欠である。そのような日本の姿勢を作り上げる遺伝子は参政党の幹部では、神谷氏以外にはないだろう。
 

 

3)松田プランの愚
 

筆者は参政党員ではなく、単に参政党を党外から応援する一人である。そこで遠慮なく参政党を外から眺めて参政党の弱点を指摘できると思う。参政党を潰す勢力のプロパガンダ的発言の中で有力なのは、神谷党首の独裁であり、みんなで作る政党という看板に偽りがあるのではないかという批判である。それについては、補足に一つの反論を示す(補足6)。

 

私が危惧するのは、このような議論が参政党の内紛に発展することである。最初の内紛は、結党当初の5人のメンバーのうち3人が参政党を離党したときの内紛である。例えば、武田邦彦氏の離党までのケースが分かりやすい。上記のような参政党の精神を理解しない武田氏が、減税日本や日本保守党との共闘に動き、神谷氏と対立してしまったのである。 

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12829991577.html

 

彼らは新しく伸びる参政党に魅力を感じて参加し、そして参政党のためと考えて様々な提案をしたものの、神谷氏だけが持つ参政党の中心概念(その遺伝子)について十分理解していなかったために、深刻な対立に発展したのである。ほとんどの日本人は議論が非常に下手である。議論はすぐに口論に発展するのは、日本人の文化的弱点である。

 

そのような困難が今後も考えられる。例えば、石破氏が首相を退陣し、高市早苗氏が次期首相となったとき、積極財政論の高市氏が元自民党の安藤裕氏や同じく元自民党の松田学氏に協力を求めたとすると、元自民党の二人はその方向で動くかもしれない。その場合、参政党は積極財政を掲げて参議院選を勝利した以上、神谷氏も拒否できない可能性がある。
 

参政党の党内での実権も徐々に松田学氏に移行していく可能性がある。そこで松田氏は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する松田プランを斬新なアイデアであり、低迷する日本経済を救うと彼らの積極財政論を宣伝するだろう。

 

しかし、松田プランの本質は、既存のMMT理論とほとんど変わらず、単にCBDCの発行を同時に行うことを売り物にしているだけである。松田氏の言うとおりに財政拡大策を実行すれば、日本経済は通貨安とインフレでつぶれるだろう。
 

私は金融の素人なので、この考え方は間違っているかどうかをチャットGPTとの議論で確認した。途中にCBDCに関する解説もチャットGPTに依頼したので、その分長くなっているが参照されたい。以下に、その議論が掲載されているアドレスを示す。この件も批判いただきたい。

https://chatgpt.com/share/68829c59-9a28-8010-9591-ee1d961f558e

 

 

補足:

 

1)グローバリストと呼ばれる人たちは、ユダヤ系資本と彼らに育てられた人たち世界の金融エリートであり、米国を中心に世界の政治と経済に深く係わる複数の系統を持つ勢力だろう。これにイスラエルロビーと呼ばれる団体が、米国の政治に強力に干渉する。これらも金融エリートたちと深く関係するので複雑である。ただ、日本と異なり表舞台の政治も民衆の力を背景にして相当の力をもっている。今回のトランプ政権は「ディープステートとの闘い」としてこれらの圧力を跳ねのけると期待されたが、イスラエルに従属してイランを爆撃したり、ウクライナに兵器を送り続け、看板に偽りがある様に見える。

 

2)日本では市民革命の歴史がなく、それゆえ日本の政治は基本的に大日本帝国の延長上にある。ドイツとは違って、第二次大戦後も明治政府の体制下で憲法を改正して現在に至っている。それ故、日本は唯一、国連の敵国条項の対象となっているのである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12652435193.html

 

3)生死を掛けた政治参加の体験又はその継承に由来する、国民の政治における自信と自覚が民主主義政治には必要だと思う。昔のyoutube動画で西部邁氏が「敗戦の時、あと100万人死んでいれば、日本人もしっかりしていただろうに」と発言していたのを思い出す。西部さんもこのような意味で発言されたのだろう。このように知性ある人で思ったことをストレートに発言できる著名人は日本に少ない。それは日本人の殆どがその種の厳しい意見を忌避するからであり、それが日本政治の弱点であると思う。

 

4)米国等の一流のジャーナリストや学者などによるSNSを用いた解説で、グローバリストたちの陰に隠れた企みも徐々に明らかにされつつある。米国の元フォックスニュースのタッカーカールソン氏、コロンビア大教授のジェフリー・サックス教授、シカゴ大のミアシャイマー教授などにより、分析結果が衆知されている。それらの分析が可能となったのは、命を賭して不正行為を暴いた元CIA職員のエドワード・スノーデン氏や、プロジェクト・ベリタスを運営するジェームズ・オキーフ氏らの貢献は大きい。

 

5)草根と似た言葉に草莽(そうもう)があるが、意味が異なる。草莽は民間にあって地位を求めず、国家的危機の際に国家への忠誠心に基づく行動に出る人(草莽之臣)を指す。予め国家の存在を前提として草莽の臣に期待するのではなく、草の根運動で国家を作り上げるという本格的な民主主義を党是にしていると思う。そうでなければグローバリストには勝てないだろう。

 

6)神谷宗幣氏は独裁なのではないかという題で小崎壮平という在米の方のyoutube動画があったので、それを視聴しコメントを残した。https://www.youtube.com/watch?v=FmA_W2ryhvY&lc=UgwGtMv3LAOXl-mXODx4AaABAg この小崎氏の議論を聞いてもらいたい。そしてそこに書いたコメントは以下の通りである。

 

民主主義は、国民が国会議員などを選ぶ投票の段階であり、政党運営まで民主主義という訳にはいかない。政党も組織なので会社と同様トップのリーダーシップが重要。ゴレンジャーと言っても参政党の遺伝子と発芽までは神谷氏のものであり、参政党が成長し次の世代になるまで神谷氏がトップであるべき。その意味で、4名は神谷氏に同調し支援するための存在だった筈。武田氏は自己主張が特別に強く、政治家には向かない。

もう一つコメントします。「科学と政治は矛盾する」とおっしゃっていますが、それは間違いだと思います。政治は自分たち(例えば政治家が国民の代表なら国民一般)のトータルな幸せを目的に立法と行政に関わることですので、優秀な政治家はこの目的を最優先しつつ環境などの他条件を想定したうえでその方法を科学的(つまり論理的)に追及します。ただ人間ですので、自分たちや国民一般よりも自分が一番大事なのは誰も同じですので、客観的な視点で最良を選択できないことも多いと思います。従って、自分の利益や名誉にこだわる人物は、優秀な政治家になれませんし、優秀な科学者にもなり得ません。

(以上)