今度の参議院選挙では参政党の躍進が予想されている。そして他党には、それを警戒する人たちの厳しい言論も多くなっている。参政党には成長初期に遭遇する試練である。(以下断定的に書くことを含めすべて筆者の思考結果であり、必ずしも参政党等の公式見解ではない。)

https://www.youtube.com/watch?v=gdIKDM1CQk8

 

 

参政党は、日本を本物の民主的な独立国にしたいという志のある人たちが集まり、一緒になって作り上げる政党だと私には見えている。政党名は、このDIY(自分たちで作り上げる)政党とでも言うべき特徴に由来するのだろう。

 

これまで日本の政治は、一般国民にとってはお上(おかみ)の仕事であり非常に遠い存在だった。(補足1)参政党は、その政治を自分たち一般民の視野の中にしっかりと捉えて、国内的にも国際的にも、あまりにも弱体化した日本の政治力を回復しようというのである。

 

参政党は、神谷宗幣氏が中心になって2020年に結党されたが、政治家としての神谷氏の経歴は2007年の吹田市議に始まる。結党と同時に多くの仲間を募集して活動を始めたが、当初は上記の目標を必ずしも最優先しない人たちも加わり、内部で少しぎくしゃくした。(補足2)しかし、今となっては参政党の特徴を理解する人たちが多くなり、そのような混乱は生じないだろう。

 

この政治をDIYするのだという感覚とそれを実行する強い意思は、民主国家にとって最も大事なことであるものの、これまでの日本には完全に欠けていた。それらを神谷氏から学んだ多くの逸材が集まり、彼らの思考と政治的活動とにより、この政党は年輪を重ねる毎に大きく成長する可能性がある。

 

個人商店的政党から、上場企業や大企業、更にはグローバル企業的な政党に成長してもらいたい。そのプロセスで大事なのは、優れた人材の参加と組織の最適化、そして政治思想のブラッシュアップである。

 

現在、下にも示したが、類似政党などからの妨害や貶しに遭遇しているが、それらの解決は成長の肥しとなり、参政党の政治的財産となっていく筈である。しっかりと対立と議論をしてもらいたい。

 

日本の政治をリードする段階に至るには、「神谷氏が党首の頃の参政党は軟で壊れそうな弱小政党だったね」と参加者(つまり党員等)が語り合う位の成長が必要である。以下、中心的政治課題についての参政党の姿勢などについて、問題点も含めて簡単に所見を述べる。

 

2)参政党の憲法草案

 

最近発表した憲法草案は、今後の参政党を占う資料として重要である。https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/

 

ただ私の意見を述べれば、この草案の目指す部分は分かるが、出来はそれほど良くはない。例えば、第四条(国は、主権を有し、独立して自ら決定する権限を有する)に対し、国民主権を否定するのかという疑問が一般人から出された。その反論には一理ある。もっと専門家を交えて推敲したあと公表すべきだったと思う。

 

参政党に今後多くの人たちが集まり、その中には憲法学者も居るだろう。彼らを加えてこの草案を練り直すべきである。明治時代、大日本帝国憲法が作られたのが明治23年だった。プロイセン憲法を真似た憲法でも、制定までにそれだけの年月を要したことを考えてもらいたい。

 

特に前文から最初の2章の文案作りは、参政党の骨格が出来上がってから着手すべきだと思う。大日本帝国憲法のような国家観で本当に良いのか?(補足3) 参政党が政権に参加すると私が予想する2030年代、日本国は新しい段階に入るだろう。

 

その時以降の日本国も、天皇の赤子(せきし)の集合体と考えて良いのか? 伝統を大切にするとしても、それは将来の為であることを十分に承知してもらいたい。

 

 

3)参政党の安全保障

 

参政党の安全保障に対する考え方は、米国シカゴ大学のミアシャイマー教授の国際政治に対する考え方に学んで立案されていると思われる。その基本は、国家間の関係を野生の関係と捉えることであり、ネオリアリズムと呼ばれる。つまり弱肉強食の国際関係を前提として国家の安全保障を考えるべきだという思想である。

 

その考え方によれば、国際法を金科玉条とする現在の日本の国際関係の理解は全く間違いであり、このままでは多くの国際紛争の真実を見誤ることになる。ウクライナ戦争を単に国際法違反のロシアの侵略と見るだけでは、その背後にあるこの戦争の本質、米国のロシア解体と資源確保の野望(深慮遠謀)を見ることが不可能となる。

 

ロシアによる侵攻直前の本ブログサイトの記事:

 

 

 

国際関係の真実を見誤るようでは、我が国の確かな安全保障など実現できるはずがない。実際、これまでの日本の外交は、完全に米国追従あるいは米国隷属であり、それはバイデン政権までのウクライナと同じである。今日のウクライナの惨状を見れば、その姿勢は致命的な過ちだとわかるだろう。

 

最近、高橋洋一という元財務省職員により、参政党の神谷宗幣氏による安全保障政策に対して幼稚園レベルであるという品も内容も無い悪口がネットで公表され、それを歴史学者の茂木誠氏が批判的に解説している。https://www.youtube.com/watch?v=rsoEPTf7QVs

 

 

 

そのyoutube動画によると、現在の日本の政党による安全保障に対する考え方は3つに分類されるという。一つは国内個人間の善悪判断を国際問題に延長して適用し、日本は悪を為した過去を反省し隣国に謝罪を続け、且つ将来において重武装をしなければ自ずと平和になるという考え方であり、それを茂木氏は①お花畑派と形容している。

 

そして、二番目に高橋洋一氏が応援する日本保守党や自民党の②反共リアリズム派を取り上げ、その政策は日米同盟強化と対中敵視策と要約できるとしている。これは現在までの戦後80年の米国隷属外交を延長すべきと考える人たちの外交姿勢である。

 

そして三番目に➂反グロ・リアリズムと名付けたのが、参政党が採用する「日本ファースト」路線であり、トランプの米国ファーストと類似の路線である。シカゴ大のミアシャイマー教授らのネオ・リアリズム学派的見方で国際関係を分析し、真に独立した主権国家日本の確立を主張する。

 

茂木氏によると、コロンビア大のジェフリー・サックス教授もその学派の中に入るようだ。サックス教授のヨーロッパ議会での講演によれば、直近30年間ほどの米国が平和を守るとして関係した中東における戦争のほとんどはイスラエルと米国が仕組んだ戦争だったという。https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34317 (補足4)

 

自民党が戦後80年間続けてきた米国追従あるいは米国隷属政治は、今後日本国にとって致命的となる可能性が大きい。従って、日本国が例えば中国の属国となる方向に進む前までに、参政党に政権をとってもらいこれまでとは違う安全保障路線をとってもらいたい。

 

ネオ・リアリズム的考察による日本の外交関係の解説はワシントン在住の伊藤貫氏により以前からなされてきた。外交は相手があることなので、政治家が学者の受け売りでは危険であるが、反対の考え方を持つ人も含め大勢で考えることで正解となる外交に近づくだろう。

 

既に神谷氏は外交政策について伊藤氏とも会談を行っているのでその動画を引用しておく。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=IpK8qqA96eo

 

そのように専門家を含め世界から多くの人と意見を広く集めて学び、そして政策を決定する政党になってもらいたい。そしてそのような政治的情報をインターネットで世界に発信してもらいたい。小さくまとまってはならないと思う。

 

補足:

 

1)このお上が、江戸時代の幕府や諸大名であり、戦前の貴族階級、そして戦後の家業として政治家を相続している者たちである。一般国民は、牧羊のようにお上に管理される存在に安住する傾向がある。その原因は、日本文化なのだがここでは書くことを慎む。

 

2)その一つである武田邦彦氏とのケースでは、武田氏は党に相談しないで日本保守党との連携を強く主張したことがあった。武田氏は日本保守党と参政党の違いが分からない人なのである。これらについては二年前にシリーズで書いた。最後の記事を下に引用する・

 

 

3)憲法は国家の骨格と基本構造を現し、それは国民への約束でもある。国家主権は国際社会にあって外交上の主張であり、憲法では主権と言えば国民主権制か立憲君主制かの別を述べるべきである。参政党の憲法草案では立憲君主制のようだが、本当にそれで良いのか、明確に国民主権とすべきではないのか良く考えてもらいたい。

 

4)トランプの対イスラエル姿勢を見ると、米国はこれまでイスラエルロビーの支配下にあり、その制限の下でトランプは必死に米国ファーストを取り戻そうとしているように見えなくもない。ただ、トランプもやはり対イスラエルという点では、これまでの政権と同じであるという見方がやはり正しいのかもしれない。

 

(20:40、24:00、翌早朝、拡張及び編集し最終稿とする)