日本が過去の敗戦から立ち直り、現在の繁栄する独立国となれたのは、サンフランシスコ講和条約の諸条件を受け入れて連合国と講和したからである。その諸条件とは、過去「軍国主義に走りシナ事変等を引き起こしたことは、日本国の間違った政策だった」とする歴史評価(つまり東京裁判の判決)を受け入れることとまとめられる。

 

従って、東京裁判で先の大戦遂行者と決定された大日本帝国の閣僚たちを神として祀る靖国神社に、現職閣僚が参拝することは、その約束違反に当たる。勿論、あの一連の戦争は正しかったという歴史再評価はあるかもしれない。しかしそれは学者の仕事であり、政治家がそれを言えるのは、国際環境がそれにふさわしくなった時に限られる。以下に、2021年の記事を再録します。

 

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自民党所属の高市早苗議員が総裁選立候補の際、自分は首相になっても靖国参拝をすると宣言したことを、923日の本ブログで批判した。それ以前の914日には、「総理大臣は靖国神社に公式参拝すべきでない:メルケルが安倍総理に勧めた戦後の総括」と題する記事で、その理由をすこし詳細に解説した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12697976286.html

 

日本の為に戦死した兵士の霊を祀る神社があるとしたら、そこに参拝するのはその国の国民の義務だろう。その論理は、何処の国でも共通であり、主権国家体制と伴に広く受け入れられている。そして現在、国家のトップが他国を訪問した際に、その国の為に戦死した兵士の墓に参拝するのは普通のことである。ただ、靖国神社にその資格があるかと言えば、「無い」というのが現在の私の考えである。(補足1) すこし補足の意味でここで議論する。

 

同じ様な話をグダグダするようで、恐縮ですが。。。

 

首相が靖国神社を公式参拝することに反対する二つの理由:

 

最初の理由である、サンフランシスコ講和条約に違反することについては、以前の記事を見ていただければ判るように、東條英樹以下の戦争指導者が戦犯でありながら、合祀されていることと関連している。それは、東條英機らを直接批判して言っている訳ではない。

 

彼らを戦犯として受け入れることで講和せざるを得なかったことは、日本の不幸かもしれない。しかし、そのような条件で講和することしか、日本はできなかったこと、そのような破目になる戦争をしたこと、そして、そのような境遇に日本を導いたこと等の責任は時の大日本帝国政府にあり、そのかなりの部分を東條英機以下が負うべきだということである。

 

もう一つの理由は、仮に現代の日本国が、国民の支持により成立しているとしても、その近代日本の建設に、自分の命を犠牲にし貢献したのは靖国に祀られた兵士達だけではない。意図的に拒否された兵士たちが存在することである。以上の二つの理由を明確にするには、明治以降の日本の近代史の総括がなければならない。そこでは明治以降の天皇制が大きく関わる。

 

つまり、戊辰戦争で犠牲になった会津の若者たち、西南戦争で死亡した薩摩武士たちに、近代日本の建設への貢献が無かったのか? 彼らが、近代日本の建設を邪魔したというのだろうか? 急激な西欧的国民国家の建設には、大多数の武士を不平分子としてこれら内戦で一掃する必要があった。

 

そもそも、明治維新とは何だったのか? 英国に定着したユダヤ系資本の利益と結びついた薩長のクーデター政権だったという歴史解釈は正しいだろう。 朝鮮併合と満州進出、その流れを作った日清・日露戦争(補足2)は、薩長の支配階級に徴兵され使役された被支配階級の犠牲によってなされた。その後の大陸から南方への進出は、薩長支配階級により大東亜共栄圏構想として正当化された。

 

この歴史観が恐らく現在の日本国民一般の歴史観に近いはずである。その証拠に、もしそれが日本国民の意志として成立しておれば、日本人の愛国心はもっと明確だろう。(補足3)

 

大東亜共栄圏構想は日本の敗戦により、大陸侵略のために捏造された動機だとされ、東京裁判史観により置き換えられた。そしてその受容が、サンフランシスコ講和条約の条件とされた。その一方、靖国神社の博物館である遊就館の展示は、戦前の大東亜共栄圏構想を正当化しているとされる。https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-11/2014011103_01_1.html

 

その矛盾を抱えたまま、そして、その総括もしないままに、今後も国際社会の中で重要な国として存在出来ると思うのは、右翼の傲慢だろう。そのような1人には、高市氏にはなってほしくない。

 

この種の議論は特に右翼系のyoutuberが盛んに議論している。その一つを引用する。

 

 

その右系の方の意見は上記私の意見とは90度異なる。私は、どちらかというと、上記youtuberが批判している前大阪市長の橋下徹さんの意見に近い。そこで以下のようなコメントを書いた。

 

橋本さんの質問の前提として、過去に総務大臣時代に靖国に参拝したことがあるということです。この問題はアーリントン墓地への参拝とは同一ではありません。そのことを高市氏はわかっていない。何故なら、靖国神社には連合国が平和に対する犯罪人として決めた人たちが合祀されていること、そしてその見解を敗戦国である日本は受け入れるという条件で、講和したからです。つまり、首相の靖国参拝は国家としての意志としてとられ、それは連合国との講和の条件に反することになります。勿論、それは事実ではないと国際的に説得できるなら、話は別です。その近代史の総括を日本はしていません。つまり、日本が国連の敵国条項に触れる唯一の国家であることを、もう少し深刻に考えるべきです。全ての問題は、戦争に負けたことに由来します。

 

 

 

更に、靖国参拝をする人たちの欺瞞的な論理を攻撃した7年前の文章も以下に引用しておきます。

 

 

 

補足:

 

1)その考えが「有る」に変わるには、日本の近代史が総括され、日本国民の為の共同体としての日本国を、国民の大多数が実感しなければならない。そのプロセスの中で、戦死した兵士の墓所としての施設が確認される必要がある。

 

2)ロシアとの戦争は米国資本の支援で可能となり、頃合いを見計らって米国により講和の仲介がなされた。これは米国が満州利権を狙っていたということで理解される。その状況証拠が桂ハリマン協定である。その後、米国との約束に背いて満州利権を独占しようとしたことが、太平洋戦争の原因の一つとなっているという解釈がある。それは、真実なのか?

 

3)この大東亜共栄圏構想が、日本帝国の大陸進出の言い訳であったのは事実である。この部分の徹底した解析は、国際社会において日本が名誉ある地位を確保する上で不可欠である。日本国民はどう考えても、この構想に同意して、徴兵され戦争に赴いたのではないだろう。

因みに、靖国神社と同根(招魂社から生じている)の神社が全国にある護国神社である。そこから、毎年初穂料の納入の要請が自治会に届く。今年は私が世話人であるが、その通知から既に一週間たつが、だれからも寄付の申し出はない。つまり、護国神社も靖国神社も、日本の国のために戦死した兵士の魂を祀る社として、本当に受け入れている人、信じている人は殆ど居ないのである。