米国のブリンケン国務長官が北京を訪問した。一連の情況から、今回の訪問は米国側の要請に始まったようだ。習近平は、米中関係において中国は優位にあるとの姿を、中国国民と台湾の人たちに向けて宣伝することが出来た。以下の写真はその意味で中国側の大きな成果である。
これまでの中国封じ込め政策、台湾有事の時は米国も参戦するとのバイデンの発言などの対中国外交に中国側は機嫌を損ねていた。従って、ブリンケンの訪問を断ることも出来たのだが、そうしないでむしろ好機と見て今回の冷遇を演出したのだろう。つまり、米国民主党政権側に訪中の必要性があった筈である。
ブリンケンを閣僚クラスの要人が誰一人として出迎えず、タラップの下には何時も敷かれる赤い絨毯もない。進行方向途中に何故か赤いラインが引かれており、これを跨いで歩くブリンケンは、後の冷遇を予測しただろう。
ブリンケン訪中の前に、アップルのティム・クック、テスラのイーロン・マスク、そしてマイクロソフトのビル・ゲイツ等が相次いで訪中し、熱烈歓迎を受けた。ビルゲイツと習近平の会談を映した写真は、まるで首脳同士の対等な会談の様に見える。
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230620-00354546
ブリンケンは、コロナ後の対中国ビジネスを活発にしたいという経済界の強い要望もあって、その環境作りのために出かけたのだろう。
次期大統領選挙でバイデンの苦戦が予想されているので、政治資金源の彼らの意向を汲まなければ確実に選挙に敗ける。そうなれば、共和党政権によるバイデン家族や歴代民主党首脳の様々な腐敗の摘発という暗い将来が待っているからである。(補足1)
具体的には、台湾海峡問題が発生すれば世界的な経済大混乱を発生する理由(補足2)を説明し、台湾の一方的な現状変更を許さないとの米国の姿勢を説明したようだ。また、米国等による中国の経済的封じ込め政策は、経済のデカップリングではなく危険性を避けるデリスキングだという言い訳を行ったようである。
また、偶発的な衝突を避けるための国防省トップ間のホットラインをつくるなどの必要性をブリンケンは説いたが、それも検討するというだけであったという。中国に囚われの米国人の返還についても全く交渉進展がなかった。
中国がキューバに施設しているという通信傍受施設についての懸念も表明したが、中国側からは何の対応も得ることができなかったようだ。
更に、米国の若者の死因第一位の中毒の原因薬剤フェンタニルが、中国の製造と米国への輸出によることから、何とか対策を強化できないかという話も全く糠に釘の情況のようだ。フェンタニル中毒での死亡は年間10万人だというから、米国の異常が理解できるだろう。
ブリンケンは中国習近平政権の為に「四不一無意」の表明(補足3)というお土産を持って訪中したのに、そして、まるで宗主国への朝貢のような上下関係を演出する出汁にされながら、ほとんど何の成果もなく帰国したようだ。
昔、中華帝国に対する蛮夷の国の朝貢の際、持っていく土産よりもたくさんの土産を持って帰ったと言われる。これでは宗主国へ朝貢する国、例えば新羅や高句麗、以下の待遇である。勿論、米中がそんな関係にある筈はない。
巨大企業や巨大投資ファンドらからの要求があれば、それらの支持で成り立っている政権は、言うことを聞かざるを得ない。バイデンの副大統領時代からの深い付き合いもあって、中国には相応の配慮が必要である。これらの経緯は、対中国姿勢の幅を非常に狭くしているのだろう。(補足4)
米国も一枚岩でないことを示している。つまり、DSと言われるCIAやネオコン議員たちの政治勢力と現在の実業界との考えは微妙に異なると言うことだと思う。
(18:00 編集あり)
補足:
1)バイデン父子の汚職、ヒラリークリントンの様々な疑惑などが、共和党政権により司法に史料が渡される可能性がある。また、パンデミックの原因となった可能性が高い、民主党政権下で支援された武漢P4研究所におけるコロナウイルスの機能獲得実験等の真相も大きなターゲットだろう。
2)ブリンケンは、記者会見でコンテナ船の50%は台湾海峡経由で物資を輸送し、半導体の70%は台湾で製造されているので、中国が台湾の海上封鎖を実行すれば、経済的大混乱を引き起こし世界的大不況となるだろうと説明したようだ。ただ、習近平はそれらについては100も承知だろう。
3)四不とは、①新冷戦を求めないこと、②中国に体制変更を求めないこと、③米国は中国に対抗する為に同盟国との関係を強化しないこと、④米国は台湾の独立を支持しないこと、である。一無意とは、米国に中国と衝突する意思がないことを意味する。台湾の民進党とその支持者たちはがっかりしているだろう。https://www.youtube.com/watch?v=fXG8cmzEkWk
4)オバマ政権の時、バイデンの次男のハンターバイデンやケリー国務長官の義理の息子だったデバン・アーチャーらは、投資会社をつくりそこへ中国から大金が流れてたという。そんな経緯もあり、この機会に苦言を貰ったということだろう。その辺りについては、3年以上前に記事を書いている。