この件当初佐藤氏は、韓国がオリンピックを利用して、北朝鮮問題の平和的解決の糸口を両国に見つけさせようとアレンジしたと考えていた。日本政府を始め多くの評論家が解釈を間違ったことは、日本がこの問題を全く理解していないこと、そして、日本政府も秘密裏にことが進むようになれば所詮蚊帳の外であることを証明したことになる。
会談の約束をキャンセルすることが北朝鮮のシナリオ通りだと佐藤氏が考える根拠は、金正恩の妹である金与正氏との会談が失敗した場合、金王朝に対する威厳が傷つけられ、それがやがて金正恩の立場を悪くする可能性が高いからである。(補足1)参照。 最初から米朝和平という向こう岸に渡る為の“瀬踏み”だったというのだ。米国に平和的解決の意志があるという確認が出来たので、北朝鮮は次に米韓軍事演習を韓国側からの拒絶するように要請するだろう。そして、文在寅大統領はそれに合意するだろう。
2)この外交的秘密がワシントン・ポストにより明らかにされた背景を佐藤優氏は、“深読み”と断わりながら語っている。「トランプ政権は、ICBMは許さないが中距離核までの保持を許すかも知れない。そう危惧する人たち(補足2)が、まさに今回そのような交渉をする可能性があったのだと言うために上記の話をリークしたのだろう」と分析した。そして、佐藤氏は「日本側にはそのような米国の姿勢に全く気付いていないし、考慮していない」と続けた。
菅義偉官房長官は21日の記者会見で、米朝会談を北朝鮮側が拒否したことについて、「対話のための対話は全く意味がない。北朝鮮に政策を変えさせるためにはあらゆる手段を通じて圧力を最大限にし、北朝鮮から対話を求めてくる状況を作る必要がある」と述べた。
また、「安倍晋三首相とペンス副大統領は十分な時間をかけて、訪韓する北朝鮮代表団への対応などについて綿密にすりあわせを行い、必要な情報共有はしている」と強調し、事前に米国から情報がもたらされていたことを示唆した。
補足:
1)ペンス副大統領と会談が行われたとしても、おそらく殆ど何の進展も無いように見えるだろう。それが北朝鮮にとって、中距離核兵器まで保持した形の決着への大事な一歩となる会談であっても、これまで国内に行ってきた金正恩の「米国など蹴散らしてやる」レベルのアナウンスを基準にした場合、100%失敗に終わった印象を国内に与え、政権崩壊の一歩になり得る。
Kim Yong Namとの会談として申し込んでいたのなら、会談できただろう。それが出来なかったのは「金正恩でないと会談できない」という米側の返答を恐れたのだろう。
2)何が何でも北朝鮮を非核化したいと思う人たちである。この好戦的な人たちは、強力残虐な高度軍事技術の国際的デモンストレーションをしたいのかもしれない。多数の死者がアジア人に出ても、「自国の防衛の為だろう」と何食わぬ顔で言える人達かもしれない。
3)ワシントン・ポストの記事によると、“It(会議)began to take shape when the CIA gotword that the North Koreans wanted to meet with Pence when he was on the KoreanPeninsula, according to a senior White House official.”ホワイトハウスの高官によると、CIAが北朝鮮側の訪韓中にペンス副大統領と会談したいという言葉を得て話が具体化した。つまり、北朝鮮の意志により会談の設定が為されたのである。10日土曜日の午後早く青瓦台(South Korea's Blue House)で、会談は予定されていたとある。