安倍政権の政策のなかで、比較的まともに見えるのが安保法制や憲法改正論議である。しかし、それらも独自政策ではなく米国の要求が動機らしい。何故なら、最近の憲法論議は極めて怪しい方向に進んでいるからだ。つまり、憲法9条1-2項をそのままにして第3項を加えるという訳のわからない議論をしている。すでに書いたが、憲法9条の1-2項を残したまで、自衛隊(自衛軍、self-defense force)を憲法に書き込むことは論理的には不可能である。それを無理やりやれば、日本人は言葉を理解しないイエローモンキーだという証明を自分からやるようなものだ。
高等教育の無償化も、もってのほかである。高等教育については先ず、教育の質の向上を考えるべき。今のままでの大学教育無償化は、単に大多数の若者に対して、就職までにモラトリアム期間を4年あたえるだけの政策だ。それよりも、一所懸命に勉強する優秀な学生にたいして、生活費を含めた奨学金の支給制度を大規模に作るべきである。
技能職に適正のある者には、早い時期から技能を習得する教育を開始すべきである。もし、高等教育に馴染まないと自分で思うのなら、早くから社会に出て、働く期間を長くとって経済力を蓄積すべきである。高等教育を受ける前の段階で、自分の適正を考えて選択の機会を与えるべきだと思う。そのため初中等教育では、自分の人生は自分で設計するのだという自立の精神を教え込むべきである。
研究開発職の場合、現在のほとんどの大学での教育は不十分であり、おそらく卒業後の現場教育に頼っているのだろう。大学教育で現在考えなくてはならないのは、授業料無料化よりも教育の質の向上である。大学の質の向上は、大学を淘汰することで可能となる。大学ランキングなどバカげているとは思うが、それでも一定の目安を与える。世界の大学ランキングにも入らない様な大学の授業料を無償化することは、金の無駄遣いでしかない。
安倍政権の大学等を含む高等教育無償化は、教育への不適切な介入になる。人づくりではなく人材破壊行為である。
加計学園問題を考えれば、安倍総理が高等教育無償化を考えた理由がわかる。獣医学科や医学科は、授業料が高くついて学生が集まりにくい。高等教育無償化は、安倍総理がお友達の身勝手な理屈に説得された結果なのだろう。岡山理科大は4流大学ではないのか?更に4流の獣医大を作ることに国家として協力し、金儲けさせるのは全く愚かだ。獣医学部新設の申請は、加計学園トップが、岡山理大を一流大学にする腕を見せてからにすべきだ。
経済政策も、消費増税と法人減税では何をやっているのか訳がわからない。内需を冷やして、法人に現金保有を増やす政策に未来はない。日本経済の内需依存性は非常に高い。デフレが始まった時期と消費税の導入から5%へ増税した時期とが一致しているというのが、経済評論家の一致した考えである。8%への増税は、民主党が決めたことだからという言い訳は成立しない。政権交代があったことを、それに自分たちが民主党でないことを、その時だけごまかしている。
日銀が保有する国債残高は現在379兆円である。もうすぐ400兆円を超えるレベルに達している。もしインフレが2%以上に突然なれば、金利の上昇と長期国債の値下がりなどが起こる。日銀が破産しそうになった時の対策などの法整備が全くなされていないそうだ。それを考えた方が良いのではないか。